中学受験ブログ19 生徒の心情を狙い撃ちする、褒め言葉の爆発的な効果
生徒と講師の協同感。
子供と大人の隔てのない、目的意識の共有。
同じことを繰り返す授業の中で、必要不可欠な要素である。
一緒に目標に向かって進んでいる、そんな共通意識。
これは数日間では得られない、長い時間が必要な作業。
繰り返し問題を解かせる上で必要な、様々な要素。
ただ見守る時間の中で、講師が出来ることは何だろう。
これは一人の中学受験生と体験した、2年間の受験記録。
お時間のある際にでも、お読みいただければ幸いだ。
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生徒観察と端的な褒め言葉の効果
ひたすら問題を解かせる時間。
その時間をより有効活用し、より効果的に使用する。
ただの放置系の授業ではない、新たな要素を加える。
そのために私は、何をすべきだろうか。
コウスケに共に歩んでいる感を伝えるには、どうすれば良いだろう。
自分だけが解いている時間、先生は何もしてくれない。
もしかして僕は、最後まで一人で勉強するのだろうか。
そんな寂しい気持ちを、コウスケに与えたくない。
あくまでも同じ目的に向かって、共に進めているのだと。
そう感じさせるために、何ができるだろう。
そう熟考していた時、私にスッとアイデアがひらめいた。
褒め山先生。
我が塾最高の権威を誇る、熟年先生陣の一角。
毎年30人を超える早慶上智を排出する、当塾の稼ぎ頭である。
その独特の授業風景は、一度見ると忘れられない。
生徒のモチベを最大化する、神のテクを保有した先生である。
彼の授業の特徴は、もちろんそのあだ名に由来する。
〇山+褒める=褒山先生という、シンプルな公式だ。
彼の持つ、最高の褒めテクニック。
それは決して、ゴマすり係長の様なものではない。
いいですね部長!だとか、やりますなぁ専務!であるとか。
その様な類の褒め言葉ではない、独特の褒めフレーズ。
その特徴は、単刀直入。
わずか一瞬の褒め言葉で、生徒の心を鷲掴みにする。
生徒が不意に選択した、一瞬の良い行動を決して見逃さず。
その部分を極めて端的に、指摘する。
ここで褒め言葉にもかかわらず、指摘という表現を使わせていただいた。
それは彼の褒め言葉には、良い要素と悪い要素が混在しているから。
改善点を指摘しつつ、良い行動を評価する。
そのバランスは極めて繊細で、そして端的なフレーズで表現される。
今の選択肢の消し方は、順番が良い。
それは昨日教えた内容を、しっかり覚えているからだね。
でも私ならば、まず(3)を消す。
それはキミがまだ、不定詞と動名詞の違いを明確にしていないからだ。
良かったら、もう一度そこから教えたいのだが。
そうすればキミの選択肢を選ぶ力は、もっと向上するだろう。
この様に、生徒の思考をすべて監視する。
そしてその行動を、具体的に評価する。
具体的な改善策と、効率的な思考の評価。
これを安心感のある、低音ボイスでお届けする。
じんわりと響く、熟練先生独特の圧迫感。
その圧迫感は、生徒を激しく勇気づける。
こんなにもしっかり、僕を見てくれているのか。
僕が解いている間、先生はいつも考えてくれているのだ。
この先生の教えるように、進めて行けば間違いない。
先生が100問解けと言うなら、その時間は一緒に歩む時間なのだ。
そんな思考が、生徒を包み込む。
決して一人ではない安心感が、彼らの作業を進ませる。
生徒はひたすら思考をして。
講師はそれを最大化する。
この工程をひたすら進め、今まで以上に効果を出す。
この褒め山先生の褒めテクこそ、今の私に足りない部分である。
よしパクろう。
思う存分模倣をして、私の技術に吸収しよう。
そして単刀直入にコウスケを褒め。
共に進めている感を、全身で表そう。
そしてその技術が完成した時。
彼の思考をサポートする、最大の武器になるだろう。
段々と忙しくなる、監視系授業
早速、次の日。
私は夕方から始まるコウスケの授業に、そそくさと向かった。
この週末で考えた、あらゆる方策を試すべく。
既に私は、コウスケの授業が一番楽しみになっていた。
可愛いJKの授業も捨てがたいが、この授業には成長がある。
コウスケの素直な性格と、あっけらかんとした性格も悪くない。
あとは彼を成功させ、共に合格体験を分かち合うだけである。
そんな想いとは裏腹に、コウスケはまたしても遅刻をした。
盛大な遅刻ではないが、20分の遅延は大打撃である。
ただはっきりと覚えているのは、その遅刻の理由。
晩御飯の用意がなかったので、ペヤングを食べてきたらしい。
青のりだらけの口元を見せつけながら、少し汗をかいている。
遅れそうだったため、きちんと走ってきたのだろう。
共働きのご両親にも、そんなミスはあるのだろう。
確かにお腹が空いては授業も出来ない、許してあげよう。
そんなこんなで、大量のプリントを渡す。
そして本日からは、ここからがいつもと違う。
まず最初に、5分の時間を掛けて。
この繰り返し演習の意味合いを伝える。
このプリントを説き続けたら、一体どうなるのか。
そして最終的には、何ができるようになるのか。
40分間ひたすら解かせる間、先生は何をしているのか。
決してボーっとしているわけではなく、コウスケを監視していること。
これらの内容を伝え、いざコウスケに解かせていく。
そして同時に、探り続ける。
それはコウスケが解いている時に発見する、褒めるポイント。
彼が私にしっかり見られている事を実感する、超共感ポイントだ。
やることを与えられた私は、意外にも忙しかった。
ただひたすら問題を解かせるだけでも、私のお仕事は爆増していく。
~ 次回20回に続く ~