ねこやまローカボ日誌

美味しいご飯を気にせず食べたい、食べさせたい。だから厳選ローカボレシピを紹介させて。

中学受験ブログ① 難関校を希望する父親と、未知の可能性を秘めた生徒の入塾

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幼少期に身に着ける、物事の習得法。

 

沢山のことを見て、沢山のことを吸収する幼少期。

その大切な時期を、同じ視線で誘導してあげたい。

 

私は7年間、進学予備校の講師をしていた。

何かを教えることが好き、そんな単純な就職理由だった。

 

教える生徒は、年間約40人。

集団だけでなく、個別指導も行うタイプの少数制の進学塾だった。

 

 

今振り返ると、あの7年間は最高に面白かった。

国家資格の取得を目的に退職したが、非常に貴重な時間だった。

 

効率的な学習方法や、子供たちの自我を形成する考え方。

大人が考える学習法を、いかに子供たちに落とし込むのか。

 

小学1年生から、23歳の浪人生まで。

年齢を問わず、あらゆるジャンルの学問を教える塾だった。

 

 決して強豪の進学塾ではなかったが、沢山の優秀な同僚と過ごすことが出来た。

そして彼らは今も尚、コンサル業界などでバリバリ働いてる。

  

 

そんな経験の中で、私はある大切な教育方法を経験させていただいた。

 

これは、子供のモチベーションを鍛え上げる方法だ。

同時に、根本的な原動力を育て上げるメソッドでもある。

 

これは子供の勉強する力を養う、極めて有効な方法。

シンプルだがルールを徹底して守れば、予想以上の効果が期待できるだろう。

 

 

小学5年生の、ある男子生徒。

 

志望校との偏差値が16も乖離した、彼に教えつづけたこのメソッド。

彼を教えた2年間の経験は、今も尚記憶に新しい。 

 

今日はそんな彼と学んだ、進学塾での思い出を語らせていただきたい。

 

 

良かったら、ご覧いただけるだろうか。

  

尚、書きたいことが沢山あるため、数部構成にさせて欲しい。

毎週水曜日にでも、公開させていただければ幸いだ。

 

どんな子供でも、きっと前進する。

彼らが経験した貴重な経験は、きっと大人になっても大きく役立つだろう。

 

 

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怖い父親と、もっと怖い上司

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繰り返しを誘導する方法

 

全てが初めての小学生に、その繰り返し方を教える。

これは全ての勉強の基本となる、継続学習のスタートラインに立つ学習法だ。

 

では早速、当時を振り返ってみよう。

懐かしい思い出だからこそ、今も尚鮮明に覚えている。

 

 

その生徒は、受験生だった。

皆と同じように中学受験を狙う、都内の小学5年生だ。

 

まず生徒が入塾する時、私たちは必ず面談を行う。

その時、その生徒の父親がやたら高圧的だったのを覚えている。

 

 

「絶対合格させてくれるんですよね?」

 

開口一番、彼は私にそう質問してくれた。

なかなか返答に困る、講師たちが毛嫌いするセリフだ。

 

しかし良くあるセリフだが、決して批判は出来ない。

勿論彼らは、それを目的に入塾してくるのだ。

 

子供の将来を心配しているのだろう。

言葉こそ高圧的だったが、父親として当然の心配である。

 

 

だだ、その返答に困ったのも事実である。

 

それを「絶対なんて言えません」ということが、正しいのか。

「絶対合格させます」とプライドにかけて言うのが正しいのか。

 

今も尚、どちらが正しいのかはわかっていない。

回答が出来ないまま、なぁなぁで面談は進んでいった。

 

どうやら、その父親も正しい回答が欲しいわけではなかったようだ。

何食わぬ顔で、面談は淡々と進んでいった。

 

 

入塾テストの結果、学校の成績。

担任の先生からの評価、学校で最近不安なこと。

 

お話を伺うと、どうやら結構なやんちゃボーイ様だ。

学校の先生にも呼び出しをくらい、テストの成績も中の下。

 

さらに、彼の通っているのは公立の小学校。

公立小学校のテストで中の下ということは、中学入試では結構なハードルだ。

 

 

しかし、彼の父親が提示した志望校は偏差値62

入塾試験の結果を見ても、明らかに現実感のない数字だった。

 

当時、私はまだ20代前半。

思わずその父親に向かって、普通は無理ですと言ってしまった。

 

今ならば、なんて無責任なセリフなんだと反省する。

それを考えること自体が、何かを教えるスタートラインに違いないだろう。

 

 

しかし思いもかけず、その父親は冷静だった。

そして激昂もせず、こう言ってくれたのだ。

 

「それはなんとなく分かっています。」

「でも、兄と同じ可能性があるはずなんです」

 

話を聞くと、そのお父様は結構なお偉い方。

そして生徒の兄は、既に上位校に進学していたのだ。

 

そのセリフを聴き、何かしら背筋が伸びたような気がした。

自分にできることを、全力でぶつけるべきだと考えた。

 

 

そのとき同席していた上司は、隣で既にカリキュラムを作成していた。

そして同時に、カルテの担任名に私の名前を記載した。

 

そして鉄の笑顔で、こう言い放ったのだ。

 

今日から、このねこやまが教えます。

絶対に合格させますからね。

 

 

やってくれたな。

 

この上司は、いつも私に難題をふっかけてくる。

単純に期待してくれているならまだしも、時折それすら疑わしくなってしまう。

 

進学塾における担当生徒は、合格率に直結する非常に大切な要素なのだ。

にも関わらず、ウオーリーを探せ並の難問を押し付けてくるのだ。

 

これは、いつものパターンだ。

私はこの上司のペースが、最高に苦手だった。

 

しかし彼の言う事は絶対だ。

ここからなんとしても、彼を合格させなければならない。

 

合格率重視の、進学塾業界。

実績を上げられない講師など、つまようじより役に立たないのだ。

 

ニコニコで帰宅する、生徒の父親と母親。

その会話の節々には、絶対合格するって!みたいな雰囲気が溢れていた。

 

 

どうするべきか。

私は結構な本気度で悩み倒した。

 

もし合格させなければ、私は確実に減給されるだろう。

それはその上司から、同僚が実際に食らったペナルティだったのだ。

 

減給だけは困る。

 

当時、衝動的に購入したMacが私の家計を最高に圧迫していた。

これで減給などされようものなら、ヤフオクでも手を出さなければならないのだ。

 

絶対に合格させるしかない。

そんな自分勝手な理由だけが、当時の私を突き動かした。

 

入試まで、あと2年。

私はまだ見ぬ生徒と共に、成功を治めなければならない。

 

そして合格させ、この職場での地位を守らなければならない。

超利己的な23歳の講師が生き延びるには、ここで頭をひねるしかないのだ。

 

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難航する講師探しとベテラン講師

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入試まであと二年。

あの偏差値の乖離では、決して余裕はない。

 

その日から早速、私は動き始めた。

 

 

まず最初にしなければならないこと。

それはチーム作りだ。

 

中学受験生を教える際、科目は4科目必要になる。

 

国語・算数・理科・社会。

 

受験科目に応じて、最適な先生を探す必要があるのだ。

私の専門は算数と国語だったため、最悪あと2人でOKだ。

 

入塾は4月だったため試験もひと段落し、今なら先生は選び放題だ。

どんな優秀な先生でも、お願いすれば引き受けてくれるだろう。

 

 

色々な先生と仲良くしておいて良かった。

この4月は、それを最も強く実感するシーズンなのだ。

 

普段からスタ丼を奢っておいてよかった。

最後に物を言うのは、やはり胃袋だ。

 

そう考えながら、私は10人近くの先生のところに挨拶に行った。

そして担当生徒のカルテを見せながら、協力をお願いしてみた。

 

 

しかし、思ったよりも作業は難航した。

スッと決まるはずの先生が、全く首を縦に振らないのだ。

 

ねこちゃん、その生徒きつくね?

いや、それ自信ないわー。

 

一応に皆、口を揃えてそういうのだ。

入社二年目の私には、なぜそれほどまで断られるのかがわからなかった。

 

 

なぜだ。

なぜこの生徒に関しては、誰も入りたがらないのか。

 

いつもだったら、二つ返事で参加してくれるじゃないか。

何故今日に限って、みな参加を渋るのだ。

 

先週新しく入ってきた、可愛い女子高生の時とは、反応が全く違う。

あの時は参加させてくれと、むしろ私に焼肉をご馳走してくれたじゃないか。

 

 

ぐぬぬ…。

なんという、素直な講師たちなのだ。

 

偏差値16足りない生徒の担当と、可愛いJKの担当。

こんなにも需要と供給バランスが崩壊しているのか。

 

このままでは、私が全て担当しなくてはならない。

それでもし不合格になろうものなら、私は択捉あたりに飛ばされるかもしれない。

 

そう考えながら、私は根気よく先生を探し続けた。

夜の授業から来る先生もいるし、まだまだチャンスは残っているのだ。

 

 

いや、まてよ?

そこで私は、脳をフル回転させた。

 

むしろ女性の先生にすればいい。

母性本能を持ち合わせた女性講師なら、生徒を選りすぐったりしないだろう。

 

そうすれば私もハッピーだし、すべて上手く収まるではないか!

やふー!!

 

そう考えて、私は速攻女性陣の先生のところに向かった。

そしてカルテを出し、参加を丁寧にお願いしたのだ。マカロン持参で。

 

 

丁寧な口調でカルテを見せ、そして参加をお願いする。

 

主導権は私が持つから、カリキュラムなどは作らなくても良い。

宿題などの指示は私が出すし、なんならデートもしよう。

 

そんな破格の条件を提示し、私は参加をお願いした。

 

 

するとどうだろう。

またしても断られたのだ。

 

なぜだ。

 

なぜこの生徒は、こうも参加者が集まらないのだ。

何かしら宗教的な問題や、政治的な力が働いているのか。

 

それとも、さりげなく提案したデートの話がまずかったのか?

いや、実際にはビビッて言わなかったから大丈夫のはずだ。

 

 

理由の分からない私は、思い切って聞いてみた。

なぜ参加をしてくれないのかと。

 

するとその先生は、言いづらそうに教えてくれたのだ。

カルテの社会の先生の項目を指さしながら。

 

 

この先生がいると、やりづらいんです。

 

そこには既に、ある講師の名前が記載されていた。

上司が既に一人の先生を決めていたことを、私は完全に見落としていたのだ。

 

 

O山先生。

 

その道15年の、ベテランの社会化の先生。

非常に高圧的で、独自の受験スタイル以外を一切排除する先生だ。

 

お名前は伏せ字にさせて頂くが、その塾内でも相当の頑固者だ。

ベテランが故に意見の通らない、昔ながらの堅物先生と言って良いだろう。

 

 

しまった。

 

これは完全にまずいことになった。

他の先生同様、私もまたこの先生を大の苦手としていた。

 

その理由は、対極ともいえる指導方針の違いだった。

全てを教えなければ気が済まないO山先生と、生徒自身の学習能力を伸ばしたい私。

 

さらに新人2年目と、15年目のベテランコンビ。

衝突しないわけがないと、覚悟を決めた一日目だった。

 

その②に続く