ねこやまローカボ日誌

美味しいご飯を気にせず食べたい、食べさせたい。だから厳選ローカボレシピを紹介させて。

中学受験ブログ⑨ ベテラン先生の教えが理解できる瞬間と、大胆な授業放置

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講師が教えない、そんな勇気。

 

時間の経過が亀のように感じ、存在意義すら疑ってしまう。

しかしそれに耐えた時、生徒を観察する本当の目が養われる。

 

私たちが思った以上に。

大人になっても、思考レベルは何も変わらない。

 

想像・実感できないものには、手は出せない。

そんな危機的な状況に遭遇した時、どうすれば良いだろう。

 

 

このお話は、前回からの続きである。

お時間のある際にでも、お読みいただければ幸いだ。

 

~ 過去のバックナンバー ~



 

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仏が笑ってくれる最後のアドバイス

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授業終了後。

 

私はもう一度、岸本先生の所に行った。

そして再度、これからの指導方針を相談した。

 

 

間に合わない授業計画を、どう修正するべきなのか。

授業を増やし、単純に指導時間を増加させるべきなのか。

 

どうやれば、自宅でも私の指導内容を反映して復習できるのか。

授業で習った思考方法を、自習時でも生かす方法はないのか。

 

 

彼から指摘された、私の指導上の問題点

これを全て解決する策を、お伺いできないかとお願いした。

 

私の指導方針が持つ問題点を、全て解決しようと思った。

そしてそのバグフィックスした指導方針で、再度合格に近づこうと考えた。

 

 

しかし。

またも私はズレていた。

(ふぁー)

 

 

岸本先生は私に、びっくりするほど丁寧に教えてくれた。

まるで大人が赤子を諭すかのように、驚くほどゆっくりと。

 

 

「ねこやま先生。教えてはいけません

「講師はあくまで、転ばぬ杖です」

 

「理解できるまで、コウスケに付き合ってください」

「それだけで彼の思考力は鍛えられ、全部うまくいきます」

 

 

…('Д')?

 

 

私は完全にパニックだった。

杖ってなんなのだ。メダパニか何かか。

 

彼の教えてくれた方法は、先ほどの丁寧な授業とはまさに真逆

理解できるまで付き合うというのは、どういう意味なのだ。

 

教えてはいけないと言うのは、何となく分かる。

しかしそれは多くの講師が口にする、暗喩的なものではないのか。

 

教えないと言っても、完全に教えないわけにもいかない。

そうでなければ、高いお金を払ってもらう意味はないだろう。

 

 

私は、そう岸本先生に伝えた。

もちろん、私の持ちえる最高峰に丁寧な言葉づかいで。

 

すると先生は、別の表現でもう一度説明してくれた。

クレイジーなほど理解力の低い、この新人講師に。

 

岸本先生のアドバイス(仏が笑ってくれるギリギリの3度目)
  • 同じ内容を繰り返す
  • 講師から教えない。質問だけをさせる
  • 解けるまで解かせる。解けても解かせる
  • 最後の仕上げに、微妙に数値を変えた問題を与える
  • 宿題は全く同じものを出す

 

アドバイスをくれると、先生はそそくさとご退勤された。

どうやら引き抜かれた先でも、大変お忙しいご様子だった。

 

そして私は、またも一人残された。

岸本先生からのメモを片手に、地蔵の様に立ち尽くした。

 

 

具体的とも思えぬ、これらの指導方針。

その多くは通常の行使とはかけ離れた、職務放棄とも思える内容だった。

 

ただこの助言の主は、あの岸本先生である。

私が最も信頼を置く、心優しきアラサーティーチャーなのだ。

 

私は、彼の言葉を繰り返し反芻した。

まるで乳牛の様に、何度も何度も口元に戻して熟考した。

 

 

岸本先生がくれた、計3回のアドバイス

そしてその中でハッキリ分かった、一つの事実。 

 

それは、今の私にはわからないということだった。

アドバイス通りにやることだけが、今の私に必要だということ。

 

恐らく、本当に私は分からないのだろう。

それは単純に、その効果を実感していないから。

 

人は実感や想像できないものは、手が出ないものである。

そしてそれを理由に、多くのチャンスを逃しているのだ。

 

きっと岸本先生にとって、私とコウスケは変わらない。

先生の考える思考するという段階に、私たちは辿り着いていない。

 

ならば、やってみるしかない。

私に残された方法は、ただ従順にその指導方針を試してみることである。

 

 

教えない。

繰り返させる。

説明させる。

 

この地獄の三連星で、私とコウスケは中学受験の基盤を作る。

そして岸本先生の想像する、考えるというレベルにたどり着いてみせる。

 

 

コウスケの授業は、明日の夕刻。

指導方針が何度もぶれるねこやま先生を、彼は許してくれるだろうか。

 

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何もしない授業と進まぬ時間

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90分という時間。

それがこんなにも長い時間なのだと、初めて知った。

 

 

コウスケに問題を解かせること、90分。

岸本先生の教え通り、私はひたすら彼に問題を解かせた。

 

当然ながら、圧倒的に遅い回答速度。

その時間を持て余した 私は、その苦痛に耐えていた。

 

時折こちらをチラ見する、悩ましげなコウスケ。

その眼には、なぜ教えてくれないのだと一抹の怒りすら感じられる。

 

しかしコウスケ、分かってくれ。

私は決して、二日酔いで教える気力がないわけではない。

 

これはキミの思考力を育てる、大切な時間なのだ。

だからお願い。お母様には、誤解を招かぬよう伝えて欲しい。

 

 

教えないということは、これほどまでにキツイのか。

思わず口を出しそうになる私は、健全な講師ではないのか。

 

 

10分、20分…。

その時間の経過具合は、まさに地獄。

 

まるで足をねん挫した陸上選手の様に。

私はじっと、コウスケが解く姿を眺めていた。

 

 

僕のこと、嫌いになったのか。

 

彼がもしそう考えていたならば、最高に悲しい。

しかし今はただ、彼が解く姿を観察するのが私のお仕事だ。

 

コウスケは、どんな目線で問題を追っているのか。

そして彼が問題を諦めるタイミングには、どんなアクションをするのか。

 

そしてそんな授業を、私は約1カ月続けた。

コウスケに嫌われるのではないかと、内心怯えながら。

 

~ その⑩に続く ~