ねこやまローカボ日誌

美味しいご飯を気にせず食べたい、食べさせたい。だから厳選ローカボレシピを紹介させて。

中国旅行記1 相方の胃腸破壊と元気なタクシー運転手(成田~北京)

 

すごいテンションだった。

 

中国横断旅行を画策し、はや半年。チケットを眺め、リュックを選び、本当に楽しい時間だった。

 

毎晩地図を広げ、どの街のどんなご飯を食べようか妄想する。そう考えるだけで、気分は一人ウルルン滞在記。

 

そして昨日、待ち望んでいた夏休みが遂に始まった。もう小学生のXmasの朝と同じ、決して抗えないテンションである。

 

いまだ足を踏み入れたことのない魅惑の国、中国。大の異国好きを自称する上で、決して外せない国の一つ。

 

そしてその憧れの国に、あと数時間後に到着する。普通の観光客ではなく、偽バックパッカーとして。

 

これは最高に楽しかった、初めての中国横断旅行。憧れのバックパッカー達を模倣する、初心者パッカーの旅の日誌。

 

複数回に分けてお贈りする、皆様への強引な楽しさお裾分け。この日誌が皆様のお口に合えば、最高に幸せです。

 

猫山 旬

 

 

 

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トラウマに後押しされた5時間前の成田到着

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10月12日。

 

6月から指折り数えていた、出発当日。私は千葉の成田空港で暇を持て余していた。

 

過去に三度も羽田空港のふりをして私を遅刻させようとした、この空港。そして実際に遅刻し、旅の相方に肩パンされた黒歴史も懐かしい。

 

しかし今回ばかりは、チケットの空港名を繰り返し見直す。ポケットに入れる際、リュックに詰める際、あらゆる動作で確認する。

 

なぜなら、今回の日程は絶対に乗り遅れられないから。これはギリギリの日程で組まれた、弾丸旅行だから。

 

もしこれが普通のツアー旅行なら、ある程度のサポートも期待できる。少しくらいの遅延なら、旅の日程修正も可能ではないだろうか。

 

ただ今回の旅は、バックパッカーに憧れたオリジナルツアー。数カ月も前からニヤニヤ組み立てた、ぎっちぎち旅行だから。

 

計8回の新幹線と夜行列車を乗り継ぎ、可能な限り中国を横断する。そしてその内の一つでも乗り遅れれば、THE・END。

 

一気に全ての予定が瓦解し、現地に置き去りにされる。圧倒的に不足した語彙力と一緒に、未知の国に取り残されてしまう。

 

ただし。

 

今回の旅行では、最初の成田発の飛行機さえ乗り遅れなければ問題ない。何故なら今回の旅は、頼もしい仲間が同行するから。

 

それは私の夏休みを待ちきれず、二週間も先に日本を飛び出した旅の相方。彼女にさえ再会できれば、全てが何とかなるはずだ。

 

中国語が話せる彼女なら、現地の人と会話できる。そのため彼女に会うまでが、最初で最大のミッションになる。

 

しかしそのミッションも、よく考えれば非常に簡単。ANA先生にお任せすれば、すいーっと快適に空をまたいでくれるはずだ。

 

遅刻さえしなければいい。

 

そんな想いで、私は約5時間前に成田空港に到着する。二年前にバリへの飛行機を乗り過ごした、地獄の記憶を噛みしめながら。

 

あの当時の記憶は、今も尚鮮明に覚えている。約40万の追加料金を請求されそうになった、若き日のトラウマである。

 

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ただ今回は出発5時間前、まさに準備万全。この状況で遅刻するのは、きっとのび太でも難しい。

 

時間もたっぷりあるのだから、まず最初に日本土産を捜索しよう。こちらは旅の最終日にお世話になる、あるホテルへのお土産である。

 

ここは生粋の江戸っ子として、手土産の一つも持参しないわけにはいかない。そんな気持ちで、成田空港のお土産店を何か所も散策する。

 

出来るだけ派手で、日本っぽいのがいいだろう。きっと日本から来ましたぁ!的な、分かりやすいデザインが好まれるはずだ。

 

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そんな気持ちから、少し派手な和菓子セットをチョイスする。値段は大変お安いが、見た目のジャパニーズ感は最高だ。

 

きっとOH!FUJIYAMA!と、中国の方々も喜んでくれるに違いない。ちなみに富士山は描かれていないが、雰囲気で伝わるはず。

 

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そしてさらに、パリパリ系のお菓子も追加しておこう。お子様がいらっしゃる場合、パリパリお菓子の人気はきっと世界共通だろう。

 

こちらも東京と印字されており、両者共に日本感は抜群。いきなり順調すぎて怖いが、何かのフラグではないだろうか。

 

きっとこのお菓子も、YEAH!PARIPARI!とご好評いただいちゃうな。しかしなぜ先ほどから、脳内の中国人は英語圏なんだろう。

 

ただこれで、素敵なお土産も用意できた。出発前のお仕事も終わり、大変すがすがしい気分である。

 

これから憧れのバックパッカーとして、憧れの中国におじゃまするのだから。必要最低限の礼節を持参しなければ、きっと何かしら罰が当たるだろう。

 

テレビで幾度も拝見した、世にもイケてるバックパッカー達。自由な風貌と大きな野心を瞳に込めた、力強い旅の先輩方。

 

今回の旅ではそんな彼らに憧れて、大きなリュックも用意した。そしてバックパッカーらしく格安ドミトリーも、事前に予約した。

 

格安ドミトリーに泊まり、大きなリュックで移動する。これぞ私のイメージする、とりあえずのバックパッカー像。

 

しかし私は、バックパッカーと言い張って良いのだろうか。何だか少し、いや、とても不安になってきた。

 

何故なら出発の飛行機も、格安航空ではなくまさかのANA。到着後も新幹線にガンガン乗車し、さらにご飯も自由に食べるつもりだ。

 

さらに全ての宿泊先が格安ドミトリーではなく、時々ホテルも予約している。そしてきっと疲れたら、おそらくタクシーとか使っちゃうだろう。

 

……。大丈夫かな。

 

これでバックパッカーだよ!などと申し上げれば、投石されたりしないだろうか。 

 

さらに世界バックパッカー連合会などから、権利永久剥奪とかされちゃわないだろうか。本当にあるかは、存じ上げないけど。

 

……。まぁいいか。

 

とりあえず今回の旅の目的は、バックパッカー気分に浸ること。それっぽい雰囲気で旅をして、大変楽しい思い出をかき集めて帰ろう。

 

じゃあここで、記念写真も撮っておきたい。ここは一つ、イケてるバックパッカー感を演出しておきたいんだ。

 

どでかいリュックに、ラフなTシャツなんか最高じゃないか。そうすれば、何かワイルドな感じをオプション追加できるに違いない。

 

そう考えた私は、そそくさと空港の着替え室に飛び込む。5時間前に到着した私には、時間は腐るほどあったから。

 

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できるだけ良い感じに、いざパシャリ。死ぬほど腕に力を入れ、細マッチョ感を偽装する。

 

おお、なかなかな旅感だ。やんちゃしまっせ!的な雰囲気が、いい感じに表現されている気がする。

 

ちなみにこの写真を撮るために、着替え室で15分近く苦戦した。なかなかイケてる感じが出せず、大変苦労したのを覚えている。

 

何ともそれっぽい、この人工的なバックパッカー感。ただ実際には、バックパッカーでもなんでもない。

 

ただ、カバンがめっちゃ大きいだけ。偽バックパッカーであることは、明白な事実である。

 

そしてそこから約5時間、ロビーでAmazonプライムビデオを楽しむ。それはSUITSという、NYを舞台に有能弁護士が活躍する海外ドラマである。

 

続きが気になりながらも、飛行機の出発の時間が近づいている。しかしどうしてもあと2話見たい私は、どうしたら良いんだろう。

 

なぜならAMAZONプライムは、中国での視聴が制限されてしまう。つまり現地ではWI-FIを使っても、このドラマは見れなくなってしまう。

 

いや待てよ…。たしかAMAZONなら、ダウンロードしてオフラインで視聴できる。この空港でダウンロードしておけば、現地に行っても見れr…。

 

いやバカバカ。私のバカ。

 

何を考えているのだ。海外ドラマなど、いつでも見れるじゃない。

 

これから行くのは、待ちに待った中国旅行。海外ドラマが入り込む隙間など、1パンダもないはずだ。

 

ここはとことん、現地中国を楽しもう。日本ではできない貴重な体験を、沢山心に刻み込もう。

 

そう思い返し、そそくさとチェックインを終わらせる。それは荷物預け入れ時間の、ギリギリ10分前だった。

 

なぜなら荷物を早く預けすぎると、荷物の搬出で最後に出てくるから。5時間前に預けてしまうと、確実にラストに回されてしまう。

 

すると、これから向かう北京空港での手続きも最後尾に回される。結果として空港ロビーで待つ旅の相方を、待たせてしまうことになる。

 

それは良くない。これから中国を共に横断する相方を、しょっぱなから憤慨させるわけにはいかない。

 

そう考えて時間ギリギリに荷物を係の方に預け、私は飛行機にワクワク乗り込む。さぁここから成田→北京間の、約4時間の快適フライトの始まりである。

 

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そして楽しみにしていた、機内食との再会。久しぶりだね…と懐かしい旧友に会ったような、そんな気分。

 

この機内食が運ばれてくる瞬間、これが堪らない。そして受け取ろうと手を伸ばした時、実は隣の人の機内食だった時の気まずさ、これも最高。

 

そして選んだのは、本日のおすすめ的な海鮮ちらし寿司。これを飛行機の機内で、一人でモリモリ頂戴する。

 

正直ビックリするほど美味しくはなかったが、空腹の私には大変に嬉しい。機内食が与えてくれる満腹感もまた、重要な旅の要素だ。

 

そしておもむろにキリンビールをお願いし、普段のダイエットと完全離婚。この旅では何も気にせず、なんでもモリモリ頂戴する所存である。

 

高度8000メートルで胃袋に沁みこむ、黄金のアルコール。この時点で最高の旅だったと、日記に書いてしまいそうだ。

 

そして二本目を美人スッチ―さんにおねだりし、タブレットのスイッチを入れる。考え直してダウンロードしたSUITS3の14話は、最高に面白かった。

 

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へべれけで到着した北京空港

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夜21時。

 

ひと眠りしていると、飛行機はあっという間に最初の目的地北京空港に到着する。日本との時差は約1時間、体感的には夜10時。

 

空港は大変混雑しており、入管も凄まじい人だかり。もちろん日本語も通じず、列ではバンバン前に割り込まれてしまう。

 

それはまるで、年に一度のお客様感謝祭。のちに聞いた話によると、どうやらこの日は中国の大型連休直後※だったらしい。(※国慶節)

 

さらに空港のWi-Fiも全く繋がらず、私のIPHONEはただの箱。旅の相方に到着報告もできず、人の流れにひょいひょい付いていく。

 

そして濁流のような流れに身を任せ、同時に感動に打ち震える。ここが夢にまで見た、あの中国なのかと。

 

らんま1/2に強烈に憧れた、小学低学年。ここが国民の9割がカンフー使いと言われる、あの修羅の国なのかと。※事実無根

 

日本語を封殺されてもなお、肌で感じる人々の躍動感。隣のおじいちゃんも後ろのおばあちゃんも、皆が最高に元気な印象だ。

 

そしてそれに呼応するように、私のテンションも最高潮。そして税関ではそのテンションのせいか、2回のボディチェックで入国を歓迎される。

 

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やっとの思いで、空港の外まで脱出する。呆然と煌びやかな道路の風景を眺め、思わず意味もなくシャッターを連射する。

 

そしてここで、この旅の相方と再会する。待ちくたびれたその相方は、日本とは違って完全な防寒体勢だ。

 

彼女の名前はもちこ

 

もちろん本名ではなく、私がつけたあだ名の一つである。

 

その不思議なあだ名の由来は、とあるLINEスタンプ。まるでお餅のようにプリプリ歩み寄る、その姿をなぞらえたものである。

 

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本人もまんざらではないようなので、この旅ではもちこと呼称させていただきたい。少しでも愛着をお感じいただければ、これ幸いである。

 

そして再会直後、もちこは大変申し訳なさそうに口を開く。それはまるで、犬をかくまった幼稚園児のような表情である。

 

何かあった?と心配する私に、彼女はこう伝えてくれた。そしてそれは、あまり予想していなかった内容だった。

 

ごめんね、ねこやま。なんだか胃腸がぶっ壊れたみたいなんだ。

 

( ゚Д゚)?

 

胃腸がぶっ壊れた?なにそのロボみたいな症状。

 

唖然とする私に、もちこはこれまでの経緯を話してくれる。私より早く前乗りしたこの二週間に、一体何があったのかを。

 

それは彼女が、ウイグル方面にバックパッカーした時の話。どうやらそこで、もちこの最初の旅の相方が謎の胃腸風邪に襲われたらしい。

 

そしてその胃腸風邪は丸3日継続し、その方は一切食事ができない状態に。それどころか強烈な下痢に見舞われ、下の蛇口は開きっぱなし。

 

さらに胃腸機能は完全に停止し、消化機能も剥奪されたらしい。同時に倦怠感だけが数日継続し、見ていて可哀そうだったとのこと。

 

しかし熱・体のだるさ・腹痛は一切なく、軽度の吐き気と下痢だけが継続する。しかもその吐き気も、食べ物を消化できないことが原因らしかった。

 

なんだその奇病は。

 

つまり体はすこぶる健康で、下痢と軽い吐き気だけが継続する。そして最大に問題なのが、食事が一切食べられないということか。

 

怖い。ちょっとカタカナの病名でも名付ければ、とんでもない難病に思える症状じゃないか。

 

ただ最終的にその方は数日で完全復活されたらしいが、問題はそこではない。問題は今、もちこがその症状に悩まされているということである。

 

体はすこぶる健康だが、栄養が一切吸収できない。先ほどから少しヨロヨロしているのは、ガソリン切れの症状だったのか。

 

これから中国でモグモグする気満々なのに、この病気はまっこと危険。これは早急に体調を回復し、もちこに美味しい食事を食べさせなければならない。

 

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ちなみにこちらの写真が、フラフラで空港の外を歩くもちこ。そこにはプリプリ前進してくる、LINEスタンプの面影は全くない。

 

あぁ、そうだと知っていたら、宿泊先で待ってもらえばよかった。私の熟練のボディーランゲージで、タクシーでもなんでも確保するべきだった。

 

ただ、ここで後悔しても仕方がない。ここは早急にタクシーを取り、本日のドミトリーに直行しよう。 

 

きっと空港からタクシーも出ているだろうし、それに乗ればきっとあっという間。ちなみに右に左に揺れ動く彼女は、珍しい赤べこみたいだ。

 

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めちゃ並んでいる。

なにこの長さ。ジャッキーチェンでもいらっしゃるのかな。

 

タクシー乗り場には、約100メートルの長蛇の列。さらに電光掲示板には、約三分待ちますよ的な文字が浮かんでいるが、本当に三分で到着するのだろうか。

 

先ほどからフラフラなもちこに、神様ちょっと意地悪だ。これは日本なら30分は待つだろう、結構な長蛇っぷりである。

 

これはまずい。

 

この寒々しい気温では、もちこの完治も延期されてしまう。できるだけ早くタクシーを捕まえ、せめて座らせてあげなければ。

 

しかし私はここで、まず最初の中国の凄さを実感する。それは日本では考えられない、人々の処理速度だ。

 

つまり早いのだ。何から何まで、無茶苦茶早いのだ。

 

タクシーが到着し、人が乗り込み、荷物をトランクに入れる。何やら喧嘩にも思える大きな声で、ビシバシ物事が処理される。

 

日本ならばきっと間に挟まれる、お待たせしました!の言葉など無粋。全ての不純物が取り除かれた、速度に特化した対応で処理される。

 

おじいちゃんもおばあちゃんも、皆が一様に早い。まるで不要な処理を省略した、清潔感のあるアルゴリズムみたいだ。

 

そして長蛇の列は即座に短くなり、本当に3分で先頭に着く。決して丁寧な処理ではないが、心地良い誘導速度である。

 

早い。自分から口の中に飛び込む回転寿司みたいだ。

 

大量の荷物をトランクに乗せ、後部座席によいしょと乗り込む。さらに運転手に行き先を告げると、運転手は無言で運転を始めた。

 

空港から宿泊先まで、高速で約40分。ちょっと肩の力が抜けたが、ここからは快適なドライブの始まりだ…。

 

…と、思っていた。

 

しかしやはり、そうはパンダが許さない。何やら中心部に近づくにつれ、運転手が大声で話しかけてくる。

 

マシンガンの様な質問をする運転手に、はてなマークが溢れ出る。仕方がなくフラフラのもちこを起こし、何を言っているか訳してもらう。

 

この運転手は、何を怒鳴ってるの?何か怒ってるの?そう尋ねると、もちこが教えてくれる。

 

いや声が大きいだけで、全然怒ってないよ。大抵の中国人は、そうなんだ。

 

ああそうなのか、疑ってごめんね。 しかし、何を質問しているのだろう。もしや日本人?観光かい?的な質問かな?

 

いや違う。どこに行くんだ?って聞いてる。

 

( ゚Д゚)?

 

どこに行くんだ?それは最初に確認しなきゃいけない、一番大切な情報なんじゃ?

 

とりあえず勘で、北京の中心部に向かっている感じ?そんな感じなの?

 

もちこに訳して貰うと、どうやらそんな感じらしい。とりあえず中心部に出てから、そこからもう一度行き先を確認するスタイルらしい。

 

なるほど、なるほど。とりあえず中心に出てから、そこから細かな行き先を探すスタイルなのか。

 

確かにそれでも、ちゃんと目的地に着けば全然OK。私の日本人としての細かすぎる部分は、まさに無粋だな。

 

ここは速度の国なのだ。小さいことは言いっこなしだよね。

 

しかし。ここからが長い。

 

彼に住所を見せ、ホテル名を見せ、さらに詳細な地図も見せる。にもかかわらず運転手は、全然ピンと来ていない。

 

最終的には、知らない場所に行けるか!と荒ぶり始める。知っている場所じゃないと運転できないよ!と、結構なお声である。

 

あぁ、確かに正論。場所を知っていないと、行けるわけないよね。

 

確かに行く当てもなく、この広い北京を彷徨えないよね。でも貴方はなぜ、最初に私たちを乗せてくれたのだ。

 

乗車時に行き先を告げたら、あんなに自信たっぷりだったじゃない。あの頃のあなたは、どこに行ってしまったんだ。

 

そして討論の末、結局はドミトリーに電話することになる。受付の方にでも細かな住所を尋ねれば、きっと行き先も分かるだろうと。

 

早速もちこがドミトリーの名刺を取り出し、宿泊先に電話をかける。そして宿泊先までの行き先を聞いてくれと、スマホを運転手さんに手渡した。

 

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ちなみに写真のおもちゃの様な黄色のケースは、もちこお気に入りのスマホケース。あまりに見た目がファニーなため、運転手も若干困惑している。

 

なんだこのおもちゃは?と戸惑う運転手。しぶしぶ電話を受け取り話をする姿は、とても愛らしい。

 

しかしその内容は、結構なケンカ腰。お前のホテルはどこだっ!と、可愛い携帯に怒鳴り散らす。

 

そして約5分の攻防の末、ついに宿泊先の近くまで辿り着く。すると既に周囲は真っ暗で、北京市内とは思えない雰囲気である。

 

タクシーが止まったのは、街灯も何もない完全な暗闇。ただ乾燥した冷たい空気が、疲れた肺に心地良く沁みる。

 

このまま初の中国を満喫したいが、これから旅は2週間もある。本日は大人しく、宿で爆睡しよう。

 

ただ、肝心のホテルが全く見つからない。ここでグーグル先生の叡智が無ければ、きっと野宿になっただろう。

 

そしてやっとの思いで看板を発見した時は、既に夜23時。真っ暗な闇の中に、ドミトリーの名前が赤くふわりと浮かび上がった。

 

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受付が優しい北京城市庭院客桟

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北京城市庭院客桟。

 

やっとの思いで宿に辿り着き、ホッと胸を撫でおろす。1泊1人約180元(約3.000円)と格安ではないが、大変口コミも良いドミトリーだ。

 

ああ、見つけた。ここが先ほど運転手さんと、一時間も捜索した場所なのか。

 

約50元(約850円)のタクシー代も、労力と比較すれば大変お安い。ここまで連れてきてくれて、本当にありがとう。

 

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そしてドミトリーに入るための、重厚な赤い扉。まるでラスボスの部屋の様な重苦しい扉を押し、そっと中を覗く。

 

すると受付には、一人の女性が。先ほど運転手と討論を繰り広げたと思われる、受付兼店長さんだ。

 

ニコッと笑いかけてくれる彼女に、背中の荷物も軽く感じる。ただもし予約が取れていなかったら、野宿が確定する緊張の瞬間だ。

バクバクしながら名前を告げると、にこりと笑顔をくれる。どうやら半年前の予約は、しっかり記録されていたようだ。

 

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ドミトリーは深夜にもかかわらず、何とも美味しそうな香り。きっと夜食を食べていたのだろう、受付女性は少しモグモグしている。

 

ごめんね、せっかくお食事を食べていたのに。ちなみにそのお餅みたいなの、すごく美味しそうだね。

 

受付中に貼られた、中国らしい写真の数々。日本では感じたことのない、重みのある石の壁。

馴染みのないデザインに、未体験の感動が溢れ出る。あぁ、本当に中国なのだなぁ。ねこやま

 

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そしてもちこが中国語で受付をすます間、近くの冷蔵庫からビールとお水をレジに運ぶ。まだ相場も分からないが、ここは1000円でも買ってしまおう。

 

覚えたての中国語でピージョくださいと伝え、お財布を出す。するとくださいは日本語にも関わらず、女性は笑顔で売ってくれる。

 

・ビール  :6元(約102円)

・水    :3元(約51円)

 

乾燥した北京の空気から、喉を癒してくれる冷たいビール。これが約100円で買えるとは、何て最高なのだろう。

 

喉を鳴らしながら、受付女性にパスポートを提示する。口コミに相違ない、何とも丁寧で心地良い対応である。

 

Rìben’リーベン(日本人?)と聞かれ、笑顔でYESと答える。ウェルカムだよ!的なことを言われた気がしたので、3倍の笑顔をお返しする。

 

しかしなぜ私は、英語で返答したのだろう。YES / NOの中国語くらい、マナーとして事前に覚えておくべきだった。

 

そして女性から鉄の鍵を預かり、ドミトリーの中庭に案内される。するとそこは強烈にライトアップされ、まるでラ〇ホのような色彩に迎えられる。

 

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思わず手ぶれする、強烈なビビットピンク。もし私が厳格なPTAの偉い方だったら、なんだねこの色は!とか言っちゃいそうな色合いだ。

 

さらにソファーには、複数の白人達が。私たちに気が付くと、気さくに挨拶してくれる。

 

そして彼らは、恐らく本場のバックパッカー。慣れた手つきでボロボロのトランプをシャッフルし、髭や髪も伸びっぱなしだ。

 

着ているシャツも年季を感じ、靴も大きなジャングルブーツ。きっと彼らの服装は、全て合理的にカスタマイズされているのだろう。

 

なんとカッコ良いんだ。本日パッカーデビューした私には、まさに憧れの大先輩である。

初日からタクシーを使った私達は、きっと彼らから合格点をいただけないだろう。でも言わなきゃ分かんないよね。(そゆとこ)

 

そんなことを考えながら、渾身の発音でSEE YOU!と挨拶する。早くこの眠そうなもちこを連れ、私たちの部屋を発見しなくては。

 

すると見つけた部屋は、中庭から15cmほどの距離。挨拶した直後に部屋に入る、何とも気まずい瞬間だ。

 

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そして扉を閉めても、外と同じボリュームの声が部屋に届く。さらに擦りガラスからは、容赦なく妖艶な光が差し込んでくる。

 

薄い扉の向こうには、楽しそうな旅行者たち。6人の旅行者たちが、この中国の夜を満喫しているのだ。

 

恐らくトランプをしているのだろう、時折上がる彼らの歓声。その度に感じる、圧倒的な異国旅の感覚。

 

あぁ、何て満足なのだろう。これぞ私が求めていた、バックパッカー感だ。

 

正直この旅では、心地良い対応や愛想は全く求めていない。普段は出来ない体験を、中国一年生として楽しみたいだけ。

 

時にはぼったくりタクシーや、グロテスクな食事も大歓迎。笑い話になるならば、野良犬にカプられても平気なんだ。

 

100点満点の快適な旅を追及すると、きっとこの旅は失敗する。日本で味わう快適さは必要なく、現地の人に触れ、沢山の経験をしたい。

 

そんな意識高い系バックパッカーのようなセリフを、私はもちこに語り掛ける。きっと共感してくれるだろうと、強い期待を抱きつつ。

 

しかし、返答は一切なし。音速でユニクロのパジャマに着替えた彼女は、既に夢の中だ。

 

そうだった。

 

彼女の胃腸は、未だぶっ壊れたままである。私の急務は、彼女の胃腸を数日で完全回復させることである。

 

しかし私の元気な胃袋は、機内食から何も食べていないと訴える。何か食わせろと言わんばかりに、盛大に鳴り響く。

 

仕方なく静かにリュックを漁り、食べ物をゴソゴソ探す。するとリュックの底には、日本から持ってきた三枚の煎餅が横たわっていた。

 

人生初の中国のご飯は、お煎餅。何とも楽しい思い出が、また一つ増えてしまった。

 

 

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