ねこやまローカボ日誌

美味しいご飯を気にせず食べたい、食べさせたい。だから厳選ローカボレシピを紹介させて。

中学受験ブログ⑥ 講師すらイメージできないアドバイスは、実践するのが一番

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何がどうなっているのか、理屈から考える。

 

即反応できることにだけ、全力で取り組まない。

大抵の問題は、反射だけでは対応できないから。

 

その発想は勉強だけではなく、あらゆる行動で必要な発想。

それを子供の頃に理解させ、習慣化させる。

 

物を考えるという、出来ているようで出来ていないこと。

それを生徒に教えることが、私のお仕事だった。

 

 

このお話は、前回からの続きである。

お時間のある際にでも、お読みいただければ幸いだ。

 

~ 過去のバックナンバー ~



 

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講師がイメージできない思考の教育

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岸本先生は、何を言っているのだ。

 

全くイメージが湧かない指導法に、私は愕然とした。

てっきり私は、より効率的な学習方法などを教わると思っていた。

 

月曜に何を解かせ、火曜日に何を解説するのか。

その過程で宿題をどのくらい出し、復習はどのタイミングで行うのか。

 

岸本先生が長年の講師経験で身に着けた、出来ない子用の絶妙な学習プラン。

そんな王道・ベーシックな方法を、私は期待していたのだ。

 

 

しかし返ってきた回答は、そうではない。

私の苦手とする、強者の理論にも思える意識面からの指導法だったのだ。

 

一緒に問題を解いて、共に考える?

コウスケが考えるべき要素から意識が飛んだら、そこに戻してあげる?

 

いったいどういう意味なのだ。

これはもしかして、全て何かしらの暗喩なのか?

 

なんかこう、そういう感じのやり方が有名なのか?

聞いたこともない脳科学者が提案するような、超絶メソッドなのか?

 

 

これはまいった。

まさか岸本先生までも、そっちの世界の住民だったとは。

 

出来る生徒ばかり持つと、どうしても強者の理論を振りかざす。

そして岸本先生もまた、その理論を振りかざすタイプの人間なのだろうか。

  

入社したての若造の私は、そんな悟ったような偏見を持っていた。

23.24の新米塾講師は、そういった発想を持つものなのかもしれない。

 

 

いやまてよ?

 

もしかして先生は、私に教えるのがめんどくさかったのか?

詳細なプランをいちいち説明する、そんな義理はないと言うのか?

 

何かそれっぽい事を言って、適当にやらせる作戦なのか?

私が失敗すれば、彼自身の合格実績がより際立つと考えているのか?

 

 

いや、そんはなずはない。

 

岸本先生の他講師に対する思いやりは、塾内でもとびぬけている。

必要とあらば、無給でも時間をいくらでも割いてくれる先生だ。

 

駐車場にいる野良猫のために、わざわざおにぎりを持参する先生だ。

そんなブッタ的な先生が、そんな利己的な発想をもっているわけがないだろう。

 

私はなんて陰湿な発想をもっているのだ。

ある意味、自分で自分を褒めたくなってきた。

 

 

岸本先生がおっしゃったことには、何かしらの意味がある。

今私にできることは、その言葉を咀嚼することだ。

 

そしてその指導内容を実践し、自分自身でも理解する。

 

その指導方針が、何を意味しているのか。

コウスケに足りないものは、一体何なのか。

 

何をもって、学習とするのか。

物を理解させると言う事は、いったいどういう状態のことなのか。

 

 

考えるたびに、段々と見えてきた。

講師として自分がやるべき、うっすらとした成功イメージが。

 

私は岸本先生に教わった内容を、紙に書きだした。

そしてその指導法の目的を理解するために、何度も反芻した。

 

自分が何をするべきか、何を目的に行動するべきか。

コウスケに何を教えるべきか。

 

 

数日間眺めていると、段々と薄いイメージが下りてきた。

教えるのではなく、気づかせる指導だと。

 

今のコウスケの回答は、まさに反射。

そしてそれは、先日の30秒で終了した小テストに現れていた。

 

自分が知らない=答えられない

このロジックが完成してしまっている。

 

つまり、丸暗記出来ているならなら回答できる。

数字・文字の変化・計算式や感情等が入り込むと、一気にシャットアウトする思考だ。

 

これは算数では、致命的な弱点である。

 

何故なら算数は、丸暗記では対応しきれない科目だからだ。 

全ての問題で、一度解いた問題と数字が完璧に一致することはあり得ない。

 

もちろん、式などを暗記する事は出来るだろう。

しかしその式のもつ意味合いを理解し、実際に組み合わせなければ意味がない。

 

そもそも、算数すら国語の問題である。

何を問われているのか、根本となる国語力が必要なのだ。

 

 

ぐぬぬ。

 

授業を成功させるイメージが、全く湧かない。

室伏広治に、腕相撲で勝てと言われている気分である。

 

いや、悩んでいても仕方がない。

これでは私が嫌う、机上の空論マンじゃないか。

 

 

と、いうことで。

とりあえずは、コウスケと授業をしてみることにした。

 

やってみなければ、何事も分からない。

実際は考えるのがめんどくさかったのは、ここだけの秘密だ。

 

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周囲に笑われたコウスケとの授業風景

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忘れもしない、4月の第三週の火曜日18時からの授業。 

90分の授業に対して、コウスケは30分程度の遅刻で登場した。

 

残り60分もある!と考えている段階で、私は毒されていたのだろう。

残り時間の多さに、ホッとした記憶がある。

 

今日の目的は、コウスケを観察すること。

難しいことはなし、ただどう取り組んでいるのかを観察するだけである。

 

小学5年生のコウスケに対し、用意した数種類の問題。

小学4年生の問題から、念のために幼稚園児の問題まで。

 

どの段階で、コウスケは考え始めるのか。

反射で答えようとするボーダーは、一体どこなのか。

 

 

もし彼が、幼稚園児の問題ですら解こうとしないなら。

それは恐らく知識レベルではなく、別の意識問題である。

 

それは、塾に無理やり行かされることに対する反抗心かもしれない。

そうなれば、私の仕事はその感情をなだめることから始まる。

 

 

お願い神さま。

これ以上、私に難題をぶつけないでくれ。

 

そんな祈りを込めつつ、私は問題をコウスケに渡していった。

小学4年生の問題から、段々とレベルを下げて。

 

 

小4の問題:0点(回答時間約30秒)

 

おおう…。

一度見た光景とはいえ、結構来るものがある。

 

 

小3の問題:0点(回答時間約60秒)

 

これは結構、やばめな状況かもしれない。

心なしかコウスケが、問題を拒否っている気すらしてきた。

 

 

小2の問題:50点(回答時間約3分)

 

…。

神はいた。

 

コウスケには、塾に対する嫌悪感も反抗心もない。

ただ単に、本当に問題が解けない素直な子供だったのだ。

 

周囲のブースからは、見学に来ていた他の講師が群がっていた。

またねこやま先生が、意味の分からないことをしているぞと。

 

小学5年生に、小学2年生の問題を解かせているぞと。

ある意味苛めじゃない?とすら言われたのだ。

 

 

ばかやろう。

貴方たちは、何をいっているのだ。

 

こちとらいたって本気なのだ。

択捉に飛ばされるかもしれない状況で、ふざけていられるか。

 

 

しかしその回答を見て、私はほっと胸をなでおろした。

 

50点。

 

これは適当に問いて得られる点数ではない。

コウスケも嬉しそうに、解答用紙に書かれる赤丸を眺めていた。

 

 

よし、私がやるべき事は分かった。

ここからは徹底して、小学2年生の難問を一緒に問いていけばいい。

 

漠然としたイメージだが、私には確信があった。

ブースの後ろで見ていた岸本先生も、大きく頷いてくれた。

 

~ その⑦に続く ~