ねこやまローカボ日誌

美味しいご飯を気にせず食べたい、食べさせたい。だから厳選ローカボレシピを紹介させて。

中学受験ブログ⑫ 絶対に失敗できない夏期合宿と、重要なクラス分けテスト

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自分のレベルより、少しだけ上の問題。

 

そんな少しの努力で超えられる、小さなハードルがあれば。

繰り返しの効果は最大化される。

 

受験における、繰り返し演習。

その演習の基礎となる、子供自体の思考方法を確立する。

 

これはそんな分かりにくい目標に向かった、受験のお話。

お時間のある際にでも、お読みいただければ幸いだ。

 

~ 過去のバックナンバー ~

 

 

 

自習室に設置されたコウスケコーナー

設置されたコウスケコーナーとその影響

 

Vol.2に入ったのち、学習はすごく順調だった。

期待していた数もこなせ、問題の読み取りも快調である。

 

解答済みの用紙は高さを増し、自習室にはコウスケコーナーが設置された。

他の受験生へのアピールとして、事務室長が配慮してくれたのだ。

 

それを見た他の受験生たちは、一様に発奮する。

そして各担当の先生に、宿題はプリントでくれとねだり始めるのだ。

 

勿論そんなやる気を見せられたら、各々の先生は大変嬉しい。

結果としてコピー機の前には、一時的に長蛇の列が完成した。

 

 

しかし、この変化に対して一人激おこな方がいた。

他でもない、事務の鳥井さんである。

 

大量のコピー用紙の喪失により、莫大な事務費がかかる。

そしてそれを、本部に請求する理由を考える人物である。

 

「貴殿のおかげです。」

そんな表情で、彼女は私の方を睨みつけていた。

 

 

ただし、そんな変化も一過性である。

約1週間もすれば、大抵の生徒の熱は冷める。

 

不変なのは、コウスケコーナーの増加速度だけ。

そこには周囲に動じない、のっとりとしたコウスケが鎮座していた。

 

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地獄の夏合宿と生徒のクラス分け

地獄の夏合宿とコウスケのクラス分

 

そんな折、私は一つのミーティングに参加した。

それは夏休み前に実施される、受験生合宿のミーティングである。

 

毎年開催される、この鬼合宿

我が校全体で行われる、非常に恐るべきイベントである。

 

合宿の目的は、もちろん夏の猛特訓

伊豆の貸し切り旅館に約1週間軟禁され、計90時間程度の学習を行う。

 

起床は、朝の5時半。

生徒の就寝時間は、夜の11時。

 

講師はさらに予習と記録を行い、本部にデータを送信する。

生徒の見回り体調管理生徒間の殴り合いの仲裁もお仕事の一部である。

 

参加するのは、小学生4年生から高校3年生。

時にはバリバリのヤンキーも参加する、なんともバトルロワイヤルな環境なのだ。

 

結果的に、講師の睡眠時間はほぼ皆無。

約一週間、大量のエナジードリンクと共に乗り切る風習を持つ。

 

娯楽は食事を除き、一切なし。

朝の体操以外は全ての時間を学習に費やす、何ともクレイジーな合宿だ。

 

 

しかし私は、この合宿が大好きだった。

講師の睡眠時間は皆無だが、約300人の生徒と貴重な時間を共有できる。

 

そして同時に、圧倒的な給料も魅力の一つである。

約一週間で、同年代の平均月収くらいは軽く稼げるのだ。

 

 

そんな夏の合宿の打ち合わせが、毎年6月の下旬に開催される。

本部に都内全校から講師が集まり、夏合宿の下準備を行うのだ。

 

その中で定める内容は、以下の通り。

この内容が全部決まるまで、私たちは決して解放されることはない。 

 

夏期合宿の準備
  1. 参加講師の代表を、進学実績とオーラで決める
  2. 使用テキストの作成分担を、話し合いとオーラで決める
  3. クラス分けテストの作成分担を、雰囲気とオーラで決める
  4. バスやホテルの手配、各種役割分担を年功序列で決める
  5. その他もろもろを、オーラで決める

 

この様に打ち合わせにおける決着は、ほぼオーラで決まる。

全校の自意識マキシマム講師たちが、けん制しながら決定するのだ。

 

勿論、私も例外ではない。

舐められないようにスーツを正し、念入りにシュミレーションをしていく。

 

各校の挨拶を考え、約3分間でその存在をアピールする。

雑用やる立場じゃねえぞ」と、睨みを効かせるのだ。

 

 

しかし。

 

今回問題となったのは、教材作成や代表の決定ではなかった。

睨みを利かせれば解決できる、そんな要素ではなかったのだ。

 

それはクラス分け

その年から参加予定者が大量に増え、その分クラスが多数用意されたのだ。

 

その弊害は、下位クラスの圧倒的な増加

今回の合宿では、今までの約2倍の下位クラスが用意されるのだ。 

 

そしてそれを担当するのは、入りたての新人

何の経験もないひよこ講師たちが、その下位クラスに配属されていた。

 

 

これはまずい。

 

私の夏の計画は、大きく狂ってしまった。

その計画とは、コウスケの夏期合宿計画である。

 

私の計画では、コウスケは二分される下のクラスに入るはずだった。

そして毎年、その下のクラスには最高に優秀な先生が配属される。

 

その先生は教え方だけでなく、放置の仕方も素晴らしい。

生徒達の心を掴むのも卓越しており、毎回大きな成功を収めている。

 

各生徒への声掛けも優しく、途中棄権者も毎年ゼロ。

まさにコウスケを担当して頂くのに、相応しい先生である。

 

もちろん私は、コウスケを彼の担当クラスに入れようとしていた。

この夏合宿をブースターに使い、秋口の勉強を加速する計画だったのだ。

 

 

しかし、そうは本部が卸さない。

クラスは細分化され、超勉強できない層のクラスが設けられたのだ。

 

そしてそのクラスを担当するのは、ほやほやの新人講師

その能力を疑うわけではないが、恐らく自分のことで精いっぱいだろう。

 

そして、周囲は悪ガキと呼ばれるお子様たち。

一週間の貴重な時間は、阿鼻叫喚の地獄絵図に変わる恐れが極めて高い。

 

 

そしてその最下層のクラス名は、Eクラス

私が入れたい先生の担当は、Cクラスに決定された。

 

 

おそらく、今のコウスケはEクラスの実力である。

出来るようになったと言えど、受験生としてはがんもどき位の実力である。

 

Cクラスに配属されるか、Eクラスに配属されるか。

この分岐点で、彼の将来が変わると言っても言い過ぎてはいない。

 

そしてEクラスに配属されるためには。

現段階で非公開の、クラス分けテストで優秀な点を収めるしかない。

 

 

クラス分けテストの実施は、合宿の約3週間前

つまり残り一か月半で、テストを解く実力を養わなければならないのだ。

 

私は即座に自分の校舎に戻り、コウスケを進学相談室に呼び寄せた。

右手の甲を真っ黒にしたコウスケは、私の話をきょとんと聴いていた。

 

夏合宿のことや、クラス分けテストの話。

私はできるだけ分かりやすく説明した。

 

しかし、コウスケは良く理解していなかった。

仕方なく私は、できるだけ分かりやいように言葉を変えた。

 

 

一か月半後にテストがある。

しょぼい点だったら、めちゃ怖い子のクラスになるぞ。

 

 

コウスケは小さく、「おおこわっ」と呟いていた。

やっと自分の置かれている状況が、理解できた様だった。

 

~ 次回13回に続く ~