中国旅行記13 驚き溢れる七星公園鍾乳洞と不思議アトラクション
直接脳に届く、極彩色。
七星公園鍾乳洞に溢れる中国の個性は、何度も驚かせてくれる。そして桂林の夜もまた、私達の心と胃袋を包み込んでくれた。
残りの滞在日数を数えると、寂しさが押し寄せる旅の後半。ただこの国は、そんなカウントをする暇さえ与えてくれない。
色彩がこだまする七星鍾乳洞
なぜこんなにダルそうなんだ…。
商売っ気のない売店を凝視していると、再度ライトが消灯する。そして周囲の鍾乳洞もライトアップされ、極彩色ツアー後半戦の始まりだ。
ただその色合いは相変わらず個性的で、クーピーのような艶やかさ。幼稚園児が描こうものなら、将来有望だとべた褒めされそうな美しさだ。
そんな天井を眺めていると、再度案内人がマイクを握る。そしてこちらをご覧くださぁい!のアナウンスと共に、一つの岸壁を指さしてくれる。
これは…なんでしょ( ゚Д゚)?
日本ならきっと、これはただの鍾乳石。数ある多くの岩々の一つが、ただライトアップされているだけ。
ただこの七星公園の場合は、ちょっと違う。案内人がどや顔をしている以上、これも何かに見えるはずなのだ。
ドラゴンか偉人か、はたまた待ち望んでいた神をモチーフにした鍾乳石か。首をフクロウの様に曲げて見ても、答えが全然わからない。
するとやはり案内人が、これなんでしょねクイズを投げかけてくる。はい、そこのあなた!的に、周囲の観光客に質問をしてくる。
しかし横から見ても下から見ても、何かに見えそうで何にも見えない。この石、本当に何かの動物に見えるんだろか…。
そして発表される、みんな大好き鍾乳石クイズの答え。その答えは、逆さまの豚である。
サカサマノブタ…( ゚Д゚)
ただでさえ難しいのに、さらに見る方向まで逆にしてくるとは…。素直に直立不動で見てた、私が間違ってたんだ。
でも答えを貰った今、確かにそう言われれば逆さまの豚だね。あぁもう、逆さまの豚以外に見えなくなってきた。
一回そう見え始めると、もう元の目線には戻れないんだ…。最初マシュマロかな?とか思ってたけど、刷り込みってすごいな。
そう言われると、なんだか全ての鍾乳洞が何かの動物に見えてきた。これは滅茶苦茶に楽しい。
こっちは、水道に直接口をつけて飲もうとしてる亀で…。あっちは、改札を無理やり通ろうとしてるフラミンゴで…。
この楽しさは、20分じゃ全然足りない。お子様と一緒に来れば、きっと何かの才能が開花するひらめきタイムじゃないか。
鍾乳洞によるひらめき教育、うん新しい。ユーキャンとかで、やるといいかもしれない。
そんな悠長な事を考えていると、本気のやつが飛び出してくる。お遊びはここまでだと言わんばかりの、中国4000年の歴史の集合体が。
超絶石壁。
賢者が崖を登っているような、キリストが丘で懺悔をしているような。自然物とは到底思えない、背筋の凍るような巨大一枚岩。
なんだこれは…。一瞬真面目に、人工的な芸術作品かと思ってしまった。
これが天井から穿つ水滴だけで作られたのか…。高校くらいなら地区で金賞を取れそうな、この至極のデザインが?
サイズも巨大で、校歌が書かれた体育館の板ぐらいでかい。その巨大な一枚岩に、神話のような光景が描かれている。
入り口の木製の龍といい、この鍾乳洞の絵画といい。この国が生み出す自然造形の美しさはやんごとない。
もし桂林にお越しになる機会があれば、米麺とこの鍾乳洞をお勧めしたい。なんなら鍾乳洞を見ながら、米麺食べたい。
そしてさらに進むと、水から伸びる円錐の鍾乳石が。こちらも鮮やかなライトで彩られ、中央には噴水も設置されている。
おお、ココもすごいな。なんだかチョコレート工場みたいだ。
と、というか…。ちょっと色がえげつないな…。
色がうるさい。
相方のもちこをパシャリと撮ると、まずすごい逆光に邪魔される。宮崎あおいと旅行したと言い張っても、絶対分からないレベルだ。
そして同時にその極彩色に、違和感を感じる。ちょっとこれ、うるさすぎないかな…。
綺麗だとか煌びやかだとかを通り越し、もうクリスマスにしか見えない。実は途中から感じていたが、明らかに色彩の暴力だ。
すると背後からふと、中国語で呼びかける声が聞こえる。そして振り返ると、そこには中国人のご夫婦が。
あぁ、もしかして撮影の順番待ってた? 時間かけちゃってごめんね?
そう思い場所を開けると、彼らは私達を噴水の前に押し戻す。私が ( ゚Д゚)? という顔をすると、どうやら一緒に撮ってあげるよ!と仰っているようだ。
え!?一緒に撮ってくれるの!?
あなた方が撮りたいんじゃなくて!?
なんとお優しい。どうやら交互に噴水の前で撮影をする私達を見て、撮ってあげたら?と奥様がお気遣い下さったようだ。
そして彼は微笑むと、巨大なカメラをスマートに構える。それは恐らく二十万円はするだろう、NIKONのカメラ。どうやらガチ勢の方だ。
そして笑顔でニッコリ、一枚パシャリ。すると立て続けに、10枚近く連射する。
さらにもう一枚!もう一枚!と何度も、最高の一枚を狙ってくれる。後ろでは奥さんもいまいちね…みたいに腕組みとかしちゃってる。
きっとこの逆光が、彼のカメラ魂に火をつけたんだ…。孫の運動会を激写する、カメラ好きの祖父みたいだ。
最後は満足な写真が撮れたらしく、彼は親指を立ててにっこり微笑む。見知らぬ外国人にここまでしてくれるなんて、本当に有難う。
ありがとう!と中国語でお礼を伝え、みんなで先頭集団に合流する。ちょっと時間をかけすぎたからか、結構置いてかれちゃってる。
そして先頭集団に追いつくと、そこではまたもこれ何でしょねクイズが。まるで溶岩のように真っ赤にライトアップされた鍾乳石が、今回の問題らしい。
鮮やかな朱色に、それを包む蒼色のデザイン。真っ暗な洞窟で拝見すると、海底のような美しさだ。
これはなんだろ…。全然わかんないな…。
もう、溶岩にしか見えないけど…。そう思っていると、答えは溶岩です!と目が点になる解答が発表される。
そのままなんだ…。
そしてふと、ここで大人的な疑問が沸き起こる。それは真っ赤に照らせば、全部溶岩に見えるのでは?という嫌らしい疑問である。
もちろん鍾乳石の構造自体も、とっても美しい。しかしこの極彩色に包めば、なんにでも見えちゃう可能性は…。
もしこのライトを消しても、本当に溶岩に見えるのか…。溶岩の様に見えるのも、全部ライトのおかげ…。(ごにょごにょ)
いやいや、バカバカ。
私のバカ。
何を大人の嫌な部分を出しているのか。そんな風に何でも疑っちゃう感じ、マジで良くないぞ。
まぁー!わほー!!と感動する、素直な周囲の中国人観光客たちを見なさい。彼らの純粋さを、今すぐ見習いなさい。
そんな無粋な疑い、誰一人持ってないよ。溶岩!溶岩!と写真を撮るお婆ちゃん、最高に楽しそうじゃないか。
そんな猛省をしながら、どんどん奥へと向かっていく。もう変なかんぐりはしないよう、自分自身を律しながら。
すると行く手には、再度極彩色に包まれた巨大岩が現れる。こちらも何か動物を表しているらしいのだが、残念ながら聞き逃してしまった。
ふむふむ。恐らくこれは、巨大なカバかな?
いや、生徒を見守る蛙の先生かも…。 上の崩れた部分、二つの目に見えなくない?
そんな会話を相方もちこと交わしつつ、純粋な観察に徹する。もしライトを消したら…。そんなこと、絶対に考えてはいけない。
そしてさらに奥に行くと、清涼感のある水の音が。どうやら鍾乳洞ツアーも終盤、地上近くに近づいているんだ。
さらにその水流のおかげで、鍾乳石のサイズも一層巨大に。土系のモンスターのような、生命すら感じる巨大咳が現れる。
その表面は非常に艶めかしく、水の研磨精度を思い知る。数千年の年月は、これほど心奪う自然物を作り上げるのか…。
さらには天に上る女性をイメージする、紫色の鍾乳石。まるで紅白の小林幸子を連想させる、極彩の天女だ。
でもこれも、もしかして…紫色にライトアップしているから…。そう見えるだけで…。ごにょごにょ…。
あ、あかん。我慢できない。
次第にツッコみたいゲージが蓄積し、思わず声が出そうだ。我慢も限界を迎え、あと一押しでツッコんでしまう。
そしてその堰を破壊する、一つの鍾乳石。もはやそのデザインは、我慢の限界突破に最適だった。
孔雀の鍾乳石。
これ孔雀に見えませんか?
そう尋ねてくる案内人に、私はなんて答えればいいんだ。
原型なくなっちゃったよ!( ゚Д゚)
もうダメだ。こんなの我慢できるわけない。大変申し訳ないが、完全にこじつけとしか思えない。
元の鍾乳石すら、全く目視できない。このライトアップをつけたら、冷蔵庫だって孔雀に見える。
もはや、照明の暴力。ライトアップの担当者は、鍾乳石の気持ち考えたことあるのか。
よじれそうな腹痛と戦いながら、案内人の説明を聞き続ける。しかし中国観光客は、孔雀だわぁ!と、純粋無垢に喜ばれている。
すると私の本心に気が付いたのか、ライトが突如原色に戻る。それは考古学博物館の様に、鍾乳洞の美しさを純粋に映し出してくれた。
マンモスのような、巨大な鍾乳石。そのデザインは極めて精巧に、生物の皮膚や骨格を映し出す。
水滴が掘りあげた、筋肉の躍動・生命の動き。最小限のライトアップで、その美しさもより一層際立っている。
素晴らしい…。こっちも素晴らしく素晴らしい!
語彙力が一気に稚拙になり、ただただ記憶に叩き込む。岩々の濃淡がはっきり見え、陰影が長い歴史を表現しているみたいだ。
さらには龍の尾と顎を表現した、切り立つ鍾乳石。本当に化石の一部が露出したような、驚異のリアル質感。
まるで巨大な龍が、ここで絶命したみたい。天井から穿つ水滴の石灰分が、この尾びれを作り上げたのか。
もはや生命にしか見えない造形に、自然の努力を垣間見る。何千年も有給なしで、ここまで本当にお疲れ様です…。
そしてさらに広い場所に抜け、案内人がアナウンスを始める。どうやらここから、何かの写真会が始まるようだ。
アツマッテクダサーイ!(こんな感じ)
なんだなんだ?一体、何を撮影するんだろ。撮影する方は近くに来てね!と言われ、私たちも思わず覗き込む。
するとそこには、一枚の大きな看板が。そして同時に、一枚の写真が視界に入る。
記念撮影だ…。
どうやらここで、この格好で写真を撮ろう!というお誘いらしい。折角だから!と、案内人も、めちゃめちゃ笑顔で衣装を抱えている。
いやいやいやいや。そんな鋼のメンタル、持ってない。この格好でこのポーズ。30人近く見てる中で、ハートが強すぎる。
しかもなぜ、孫悟空の格好なんだ。孫悟空の実家は鍾乳洞とか、そんなお話も聞いたことないし…。
そして撮影は、この場所。確かに鍾乳洞のレベルは高く、不覚にも一枚撮りたいと思ってしまう。
でも写真は、鍾乳洞だけでいい。もし自分の孫悟空姿がSNSで拡散されたら、絶対登校拒否になる。
もちろん写真は無料ではなく、それなりのお金が必要になる。この素晴らしい鍾乳洞への寄付金だと思えれば、全然良いのだけど…。
しかし中国人たちは、やはりノリノリで参加する。お爺ちゃんもお婆ちゃんも、同じポーズで一点を見つめているのだ。(※服装はそのままだった)
マジか…。これが人生を謳歌する、中国人のアイアンハートか…。
この国の方々は、本当に素直で純粋だなぁ。一瞬で列最後尾に隠れた私は、反省を越えた猛省が必要だ。
そして写真撮影の終了と共に、ツアーにも終わりが。遠くには入り口の明かりが見え、みんなでその方向に進んで行く。
岩肌に密集する、命を感じる緑の小葉。地下から地上に上がる途中で、自然の色合いを思い出す。
何千年も地上と隔離された、鍾乳洞の静かな美しさ。この苔のおかげで、地下と地上の差が際立って見えるなぁ。
鍾乳洞のお土産と芸術品
そして光に吸い寄せられ地上に戻ると、そこには売店が。鍾乳洞内の売店と違い、商魂逞しい店員ばかりだ。
らっしゃいらっしゃい!買ってけ買ってけ!
恐らく鍾乳洞の石なのだろう、真っ黒な石。それぞれに何やら特別な効能が書かれ、ずらりと並んでいる。
もう凄い効果あるから!もうなんか凄いから!
猛烈に購入を薦めてくる店員に、思わず近づいてしまう。すると鴨がきたぁ!と、周囲の店員も慌てて駆け寄ってくる。
欲しい。
無茶苦茶に欲しい。
実は幼少期から、こういった石系への欲望耐性が極端に低い。何か凄そうという理由で、お小遣いをガンガン使ってしまうタイプである。
そしてここには、『金運』『恋愛運』『仕事運』とあらゆる効能の石が。一体どうやってその違いを判断したか問い詰めたいが、とにかく凄そうだ。
ここは記念に、2つくらい買っておこうかな…。
そんな雰囲気で相方もちこを見ると、( ˙-˙ ) な顔をされてしまう。マジであかんでと、私の購買意欲を視殺してくる。
確かにこれから残り一週間、どれだけ散財するのか極めて不明。にもかかわらず、荷物にもなる重い石を購入するおバカさんがいるだろうか。
そう言いたげな表情を察し、その場をそそくさと後にする。マジで効くから!と言い続ける、お店の方の呼びかけを振り切りながら。
そして七星公園の中心に戻る道でも、売店はたくさん。どうやらこの公園には、様々な芸術が展示されているらしい。
筆絵から彫刻、そして版画や水彩画。全てが見入るほどに美しく、観光客の足をピタッと止める。
まだ時間にも余裕があるため、ゆっくり拝見する。中には手が出せない価格もあるが、それでも自由に見てねと言ってくれる。
さらに公園内の遊歩道には、アスレチック的な遊戯公園が。サイズはサスケ並みに広大で、複雑に組み込まれている。
その難易度は非常に高く、ロープのみで上空3mを進む遊具も。私が小学生なら確実に上空で取り残され、ギャン泣きする高さだ。
しかし周囲には人はおらず、まるで過疎化した村のよう。さらには入り口にビニールテープも貼られており、立ち入り禁止感が半端ない。
……。
恐怖の危険度で、子供が一人もおらず、立ち入り禁止のビニールテープ…。3つの点が結ばれ、思わず公園に向かい合掌しておく。ナムナム…。
入り口には冒険村と書かれ、やはり運動公園らしい。ただその周囲にも人はおらず、少し怖い印象である。
何なんだこの場所は…。なぜこんなにワクワクする場所なのに、子供が一人も…。
さらに周囲の木の柵には、お馴染みキャラが大集結。その種類は非常に豊富で、ドラ〇もんからピ〇チュウまで、圧巻の品揃えだ。
ああ、そういうことか。つまり人気キャラの版権で沢山お金を使っちゃったんだな。ミ〇キー先生もいるのだから、それは赤字になるよね。
過疎っている理由が分かり、ほっと胸を撫でる。この場所で、何かよからぬ事故でもあったのかと思ってしまった。
ジャパニーズ!
( ゚Д゚)?
そんな話をしていると、ふと背後から大声が届く。振り返ると、先ほどの彼らが手を振っている。
優しさすんごい中国人の方々
鍾乳洞で、私達を撮ってくれた中国人ご夫婦。なんともお優しいことに、私達を追いかけてくれたとのことらしい。
さっき撮った写真、いるでしょ?と。現像したら送るから、WECHAT教えて!※と。
※中国・台湾圏で人気のLINE的連絡手段
なんと…。まさかそれだけのために、ここまで追いかけてくれたのか。この広大な七星公園、探すのもきっと大変だっただろうに…。
私たちも駆け寄り、もちこがIDをお伝えする。すると現像するまで待っててね!と、大変にこやかな笑顔を見せてくれる。
そしてIDをお伝えすると、彼らがもちこに尋ねてる。君は『西島』って名前なんだ?と。
( ゚Д゚)?
西島?
ちなみにもちこの名前は、西島ではない。一体どこから、その名前が出てきたんだろ。
不思議がっていると、もちこが笑う。どうやらAAAのNISSYへの愛が蓄積し、名前を西島にしていたらしい。
おいこら。
確かに初対面の人にとって、もちこは西島以外の何者でもない。なぜなら待ち受けには、西島という名前と彼の写真が貼られているから。
そして私たちが結婚しているとお考えの彼らは、私が西島だと思われている。しかし待ち受け写真との顔面偏差値に大きな乖離があり、大変困惑されている。
私も思わず笑いながら、その真実を説明する。実はそれはアイドルで、私はただの日本人だと。
すると彼らは君もイケてるね!と言ってくれる。この中国にも、社交辞令の存在を確認した瞬間である。
優しい。
自然と動物の溢れる七星公園
そんな彼らと別れを告げ、さらに公園を散策することに。他にも展示物は多数あり、流石は世界遺産の街だ。
まるでラクダの形をした、大きな駱駝岩。顔の後ろに二つ並ぶコブは、なんとも座り心地が良さそうだ。
昼から酒を酌みかわす、偉人の石像。思わず乾杯してしまうそのオーラから、きっと位の高い人なんだろうな。
さらには岸壁に取り付けられた、石の取っ手。この公園には、まさかのクライミングまで用意されているのだ。
ただそのワイルドな仕様に、思わず恐怖を感じる。目を離したスキにお子様が登ったら、根性でキャッチするしかないだろう。
さらに途中で気が付けば良いものの、最後までお子様が頑張っちゃったらどうするんだろう。その場合う、上で待ってろぉ!と、お父上も根性で迎えに行かなきゃいけなくなる。
いやぁ、凄まじい。この中国の文化とは、何て面白いのだろう。
文化が違うだけで、これほど興味を惹かれるとは思わなかった。幼稚園児並みに好奇心が溢れ出し、テンションも俄然上がっちゃうな。
そしてさらに進むと、何やら物騒な看板が。それは野猿注意!的な内容の、かなり痛々しいデザインだ。
どうやらこの七星公園、多数のヤンキー野猿が出没するらしい。そして時折、彼らに食べ物をカツアゲされてしまう危険があるというのだ。
このお顔である。
おにぎり口に放り込め!と言わんばかりの、恐怖の表情。もしこんな顔をされたら、お財布すら渡してしまいそうだ。
確かに周囲を見渡すと、先ほどからお猿がチョコチョコついてくる。これはもしかして、私たちもカツアゲされちゃう感じだろうか。
周囲に存分に警戒しながら、少し足早に野猿ゾーンを突破する。どうやらご飯の香りのしない私たちは興味がないらしく、余裕で関所を通してもらう。
ただ中には、猛烈にご飯をねだられている観光客もいらっしゃる。確かに彼らは右手にお菓子を持っており、全猿の目線が注がれている。
そしてパパラッチ並みに陣形の整った猿達は、非常に機敏。決して諦めず、食に対する執着心が凄まじい。
やはり自然が売りの公園だからこそ、注意も必要なんだなぁ。リュックの紐をしっかりと締め、七星公園の出口に小走りだす。
ただ、こんなのんきな子もいる。どんぐりちょうだいなと言いたげな、ビーバー系のかわいこちゃんだ。
この公園の木の幹に描かれた、様々な動物達。その全てが非常に可愛く、描き手のセンスが爆発している。
それだけを見ていても、大変に楽しい夕飯時。そんな動物たちに見送られながら、せっせと出口に向かっていく。
出口に辿り着くと、周囲は既に暗くなり始めている。これは少し急いだほうが良いかもしれない。
何故なら本日の私たちは、自転車移動。早くしないと、夕方の帰宅ラッシュに巻き込まれる。
ただでさえ恐怖の交通量なのに、さらに大量のバイクがなだれ込むんだ。帰ってご飯作らなきゃ!とお急ぎになる、猛スピードの主婦戦士たちが。
やばいやばい。遠くに停めた自転車まで、速攻でタクシーで戻らないと。
タクシーはすぐにつかまり、運転手さんに行き先を伝える。近場だから断られるかな?と思っていたが、陽気な笑顔に安心する。
車内には中国のラジオが流れ、夕飯どきの雰囲気だ。このほっこりする夕暮れ感、日本も中国も同じだなぁ。
そして愛車の元に舞い戻り、タクシー運転手と別れを告げる。降りると風は冷たく、鞄から二人分のウルトラダウンを取り出す。
この中国にも、寒い冬が来るんだなぁ。そんなことを思いながら、丁度良い時期に訪中できたことに感謝する。
街は涼しげな空気に包まれ、人々が家路を急ぐ。周囲も暖色のライトに変化し、夜の訪れを確認する。
さぁこれから、美味しい晩御飯にしよう。そして明日は、ついに最高の街に向かう日だ。
世界一美しい古城と呼ばれる、鳳凰古城。記憶に沁みるその美しさは、人生観を変える力を持っている。
この旅で最も訪れたかった、決して忘れられぬ魅惑の街。遂に明日、その街を訪れることができるんだ。
そうと決まったら、本日はお祝いだ。今宵は美味しいご飯を食べ、幸せな気分で下準備しよう。
そう考え、車高の高い自転車にまたがる。きっとこれ、長身白人バックパッカーが高さ変えたな…、そう思いながら。
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