中国旅行記14 桂林の絶品米麺の再来と荷物を圧迫する奇跡のザーサイ
二度目の夜を迎える、桂林の街。
日本と変わらぬ広大な街は、人々の活気で溢れていた。そしてその活気は、次の鳳凰への助走に最適だった。
お土産を探し始める、横断旅行の中盤。私たちはこの眩しい夜に、中毒性の塊と呼べる奇跡の逸品を発見する。
桂林旨いもの通りと恍惚の夜市
七星公園を後にし、暗くなりかけた市内を自転車で散策する。ネットで少し検索すると、どうやら市内には夜市的な場所があるらしい。
夜市かぁ!そういえば硬ったい小豆バーから、何も食べてないな。昼間の米麺も絶品だったし、まだまだ絶品な逸品は隠れてるはず。
そう考えながらペダルを漕ぐが、人数以上のバイクの数に何度もヒヤリとする。インベーダーゲームの様に襲い来る、一瞬も気が抜けない瞬間だ。
さらに途中どこに向かっているのか分からなくなり、とりあえず前の自転車に付いていく。みんな恐らく腹ペコなのだから、行く先はきっと夜市だよね。
すると作戦は成功らしく、それらしい中心街に到着する。周囲も格段に明るくなり、香しいご飯の香りが漂ってくる。
あぁ、きっとここが桂林夜市かな?思ったより綺麗な場所だけど、ハイレベルな煮込み臭豆腐とかあるかな。
香ばしい香りに引き込まれ、自転車のチェーンを入り口に巻き付ける。すると早速、笑顔を見せる屋台のおばちゃんに手招きされる。
果物飴串。
お祭りでお子様にねだられる率、3年連続No1(ねこやま調べ)。全面果物で構成された、こちらのスイートな逸品。
お子様なら両手を回しながら近寄る、この凄まじい吸引力…。この国の果物は生でも美味しいのに、さらに飴でコーティングしてくるとは…。
幼少期にお祭りで魅了された、憧れのアレがこんなにたくさん。一本どう?と気さくなおばちゃんに、思わず10元(約170円)を手渡す。
どれがいいかなぁ?と迷っていると、もちこが相談なしで一本抜き取る。これ一択でしょ!と言いながら、写真を撮る前に齧りそうなテンションだ。
マスカット飴串ですね。いやぁ、センスが宜しい。
あぁ、確かにこれ一択だ。高価で普段は手が出ないマスカットが、こんなにもぎっしり…。(恍惚)
歯が痛くなるほどの甘みの中に、じゅわりと潜む葡萄の甘み。自転車でこぎ疲れた体に、最高に染み渡る美味しさだ。
そしてお決まりの様に、二粒地面に落とす。するとディズニーの熟練清掃員の様に、近くのわんこが持ち去っていく。
さらに晩御飯を散策していると、その種類の豊富さに驚かされる。日本式拉麺屋を始めとし、様々なお店が。
しかしラーメン屋の店内に人はおらず、ちょっと閑古鳥が鳴いている。ただ久しぶりの和食に、思わず胃袋が反応したのも事実だ。
…あとラーメンって、よく考えたら和食じゃないかな。中華かな?
さらにはオシャレな焼き鳥屋にも遭遇し、綺麗なOL風の女性がご購入されている。なんだかここは、今までの夜市とは少し雰囲気が違う。
なんというか、オシャレすぎるのだ。私が存じ上げている夜市は、もっとおもちゃ箱のような騒がしさなんだ。
少し調べると、やはりここは夜市ではないらしい。どうやら桂林中心部にあるなんでもあるよ的な、ご飯ストリートに流れ着いたようだ。
あぁ、それでも全然いいや。なんだかこの街も、最高にグッとくる雰囲気じゃないか。
周囲を見渡すと、まるで丸の内のような喧騒が。デート中のカップルや仕事帰りのサラリーマンなど、日本とさほど変わらない。
ご飯処もなんだかお洒落で、カフェやステーキなどの横文字ばかり。更にはオシャレの権化と名高い、マカロンまで売られている。
でも…。何かが違うな…。
もちろんマカロン等もすごく嬉しいのだが、何か違和感がある。中国旅行も残り一週間を切り、横文字ご飯への抵抗が生まれてきたのだ。
もっともっと中国らしいご飯を食べたい。そしてこの体の血液を、全て中国の食材で作再構築したい。
帰国後に友人に、ジャッキーチェンみたいだね?と言われるような。顔つきが変わるほど、この国に溺れたいんだ。
そう考えて周囲を見渡し、中国っぽいお店を探す。食べている最中に野良犬が近づいてきて、猛烈におねだりしそうなご飯処を。
崇喜米粉急店。
ここだ。まさにこの雰囲気である。
溢れる喧騒とジモティの笑顔が交錯する、道端に併設された米麺(ビーフン)店。これぞ脳内でイメージしていた、今の気分に最適なお店じゃないか。
まさかの二連続で米麺を食べる、新手の荒行。店名には喜と急の文字もあり、大急ぎで喜べそうな雰囲気だ。
お昼も米粉を頂いたが、まだまだ余裕で食べられる胃袋具合。では早速、本日二回目のズルズルをぶちかまそう。
そして看板を見ると、あらゆるご飯がやはり爆安。包と書かれた肉まん系などは1.5元(約26円)と、具材に不安すら感じてしまう。
すぐにもちことポケットの小銭を出し合い、残りの残金を確認する。そして満場一致で採決が下り、お店の中に突撃する。
いただきまー…!
違った、お邪魔しまーす!(ガラガラ)
すると店内は思いのほか綺麗で、地元の人でパンパン。席に着くまでに数人と肩がぶつかり、お互いにごめんねと言いながらすれ違う。
さらに厨房はまさに戦場、耳慣れない中国語のオーダーが飛び交っている。ただそんな状況でも、足を伸ばしスマホゲームに興じる店長。ハート強いな。
目の前に並ぶ、豊富な種類の米麺たち。セットや単品・オプションなど、組み合わせがあり過ぎて選べない。
こういう時、私の優柔不断が暴れ出してしまう。どれを頼んでも後悔するわけないのに、100点満点を探してしまうのだ。
誰かこれにしましょボタン開発してくれないかな…。押したらランダムに注文が決定されるような…。
さらにここの注文は、指さし作戦じゃ厳しそうだ。鬼の形相でお客をさばくレジのおばちゃん、コレってどれ!?とか怒っちゃうタイプな気がする。
ここの注文はもちこに任せ、私は席を確保しよう。こういう時は役割分担が大切だね。
そう考えて席を確保し、のんびりとご飯の到着を待ち望む。
窓の外には煌びやかな街並みが映り、そのギャップに嬉しくなる。まさかマカロン店の向かいに、こんなにグッとくるお店があるなんて。
そして隣の子供に変顔を見せること、わずか3分。急の文字通り、食事はあっという間に運ばれてくる。
旨い。
事前に確信してしまうような、シンプルで隙の無い米粉。具材ぶっかけタイプに、職人の自信が伺える芸術品だ。
さらにもちこ大好物の胡瓜の叩きも追加され、これでわずか12元(約204円)。これが給食なら、圧倒的な登校率を誇るだろう。
まず叉焼をぱくりと食べ、旨い!と唸る。程良い塩気と脂身が、高校時代の食欲を蘇らえさせる。
麺は腰が少なめ、もちもちタイプ。伊勢うどんをより細く仕上げたような、そんな美味しい食感。
味はしっかり・薬味もぴりり、ザーサイの濃いめの漬物味も申し分なし。本日二度目の米粉にも関わらず、その感動は最高だ。
美味しい。すごく嬉しい。
さらに僅か5元(約85円)の、胡瓜の叩き。コリコリに辛みと甘みが混在し、まさに無敵の付け合わせじゃないか。
こんなにも美味しいお漬物が、100円以内で食べられるなんて。それだけでこのお店にお邪魔した意味がある。
実はこの胡瓜の叩きは、中国・台湾でとても多い。いずれもお店のこだわりが表現され、お店によって味も全然違う。
全てに特徴的な美味しさがあり、いつも必ず頼んでしまう。そして極稀に、悶絶☆美味胡瓜に当たることがある。
悶絶☆美味胡瓜。それはその名の通り、悶絶するほど美味な胡瓜。
ちなみにその悶絶胡瓜に出会ったことは、過去に二回。一回目は台湾の路地裏にある個人経営の小籠包店と、二回目は日本の新宿にある西安というお店の叩き胡瓜である。
そして今回の胡瓜も、なかなかイケていらっしゃる。日本で何度試してみても、なぜかこの味を表現できないんだ。
しかし米麺も美味しかったけれど、コリコリの漬物って最高だ。きっと日持ちもするし、帰国時のお土産は漬物にしようかな。
お会計を済ませて外に出ると、周囲は雰囲気ある真っ暗闇。巨大な広場には人も少なく、どうやらみんな食事に夢中のようだ。
そして時刻はまだまだ、宵の口。さらに明日の鳳凰行き新幹線は、昼の11時25分発。
チケットも事前に交換しているため、今宵は余裕の夜更かしゴーちゃん※。記憶に残るあのリズムに乗り、夜の桂林をどんどん散策しよう。
※テレビ朝日のクマのキャラ
巨大モニターのある公園を通りながら、今宵のプランを練り直す。まだ時間も夜20時、そんじょそこらのテンションではない。
朝に話したバーガーキングを思い出し、追加で何かを食べることに。まだ本日は米粉二発しか食べておらず、きっと夜中に腹ペコで目を覚ますだろう。
じゃあとりあえず酔っても帰れる、ドミトリーの近くまで戻っておこうかな。途中で大きなモールも通るし、さらにバーキンも見つかれば最高だ。
すると桂林の街には、魅力的なライトアップが。一瞬パリかと見間違える、白と暖色の惹き付ける色彩だ。パリ行ったことないけど。
さらに沢山のカメラ愛好家たちも集まり、様々なアングルから撮影会も開かれる。どうやらこの場所は、桂林の中でも一二を争う写真スポットなのだろう。
夜景を描く方、光の反射する運河を眺めるカップル、父親に肩車をされる男の子。皆が自由に、冬の香り漂う夜風に吹かれる。
あぁ、気持ちいい。寝袋があれば、余裕で野宿できる。
さらに運河の向こうには、夫婦の様にそびえる二つの塔。何閣寺かは分からないが、以前写真で見たことがある気がするなぁ。
街路樹も綺麗にライトで彩られ、街全体が眩しさに包まれる。あぁ、桂林って毎日がクリスマス日和なんだ。
もしこの街でシェアハウスを借りたら、きっとテラスハウスの主役気分だな。川沿いのライトアップは、それほど自分を過大評価させてくれる美しさだ。
久しぶりの汉堡王
何度もライトアップの写真を撮りながら、自転車でドミトリーを目指す。すると途中でもちこが止まり、悪者のような顔になる。
なにやらルンルンで自転車を停め始め、私も慌ててブレーキを掛ける。私の自転車はちょっと効きが悪く、ぎぃぃ゛い゛い゛!!!とママチャリ風に停止する。
汉堡王だ!(バーガーキング)
中華三昧の旅で絶対食べたくなると確信していた、魅惑のファストフード。この巨大都市桂林なら、きっとあると信じていた。
是非ともこちらを、今宵のパーティの主役にお招きしたい。そして周囲にビールを並べて、ドミトリーで見せびらかしたいんだ。
へへへ…。めっちゃ性格出ちゃうな…。ただ先ほど中国的な物だけ食べたいと言ってたのは、どこのどいつだ。
店内は沢山のお客で溢れており、日本とさほど変わらない。席では学生が勉強し、JKたちが楽しそうに写真を見せあっている。
どうやら価格は日本より僅かに安く、20元~40元(340円~680円)程度。これなら旅の予算を使い、余裕で腹パンパンになれる気がする。
仁王立ちすること、約5分。
あまりの魅惑に相当悩んだが、やっとの思いで商品を決める。結局最もベーシックな商品を注文し、ホカホカの紙袋を受け取る。
ようし、これで今晩の主役は逮捕した。あとはドミトリーに戻り、バックパッカー達の集うバーに行こう。
ウキウキで自転車に乗り込み、ドミトリーに向かって再出発する。するとその帰り道で、なにやら大きな人混みが現れる。
突如現れる、桂林夜市。
先ほど探しても見つからなかった夜市は、どうやらドミトリーの近くだったようだ。あまりに嬉しい出会いに、自転車を近くのポールに即施錠する。
通りには芳しい食べ物が溢れ、同時に大きな後悔が。なんでバーキン買っちゃったんだ…。
なんて美味しそうなお店…。
もはや後悔先立たず、右手のバーキンの袋がフルフル震える。先ほどの40元があれば、きっと2時間は騒げただろう。
既に多数の地元民がお酒を飲み、飲めや歌えや騒いでいる。皆が猛烈に楽しそうに歌い、曲にして持ち歩きたい歌声だ。
毎晩がこんなに賑やかなら、人生楽しくないわけがない。こっそり参加しても、誰も気づかないほどの爆笑っぷりだ。
さらに店頭では綺麗な女性が、お店の料理を説明する。さらにその奥では、新鮮な蟹がハサミをチョキチョキ動かす。
他にも大きな魚が生け簀を泳ぎ、自身の新鮮さをアピール中。もしお子様と遊びに来れば、爆裂テンション間違いなしだ。
石畳の道を歩いていると、左右の屋台から呼び込こまれる。これ安いよ!これ食べて見なよ!と、休む暇のなおお誘いが。
さらに2個で10元だよ!と言われるが、何を買うのかすら聞いていない。そんなせっかちさんがいる屋台街、それが桂林夜市なんだ。
そしてせっかくなので、本日のおつまみを追加することに。ただでさえ珍味系の多い国だから、この夜市にきっとあるはずだ。
そしてもし究極おつまみに出会えたなら、日本へのお土産にも買っておこう。そうすれば、冷蔵庫を開ければいつでもこの街を思い出せるだろう。
桂林夜市の奇跡の搾菜
目を泳がせながら歩いていると、ふと一つの屋台が飛び込んでくる。 店主の女性と目が合うと、やはり猛烈な手招きで呼びこまれる。
なになに?この綺麗な瓶、何が入ってるの?
ザーサイだ。
ずらりと並ぶ、おばちゃんお手製の手作り搾菜。後ろでは調理が行われており、まさに作り立てほやほやの漬物たちだ。
何種類あるか一目で把握できない、数え切れない未知の素材たち。全てが未経験の漬物で、無茶苦茶に美味しそうだ。
そして色めき立ったのは、相方もちこ。三度の飯より漬物LOVEの、ハイレベルな漬物狂。
時に白米と漬物の比率が1:1になるもちこにとって、ここはまさにディズ〇ーランド。雨の日の柴犬以上にピクリとも動かない、完全停止状態である。
ほれほれ!食べんさい!
そんな様子を察したのか、セールスチャンスだと判断したのか。お店のおばちゃんは、バンバン試食を薦めてくる。
これも食べ!あれも食べ!そう言いながら、手にビシバシ漬物を乗せてくれる。まさに孫を太らせることを生きがいとする、祖母の笑顔だ。
早速薦められるままに、一口パクリ。すると複数の味覚を刺激する、奇跡のザーサイが口内で暴れだす。
( ゚Д゚)!!
な、何という旨さ…。こ、こんな美味しい漬物があるなんて…。
おでん出汁のようなコク深さに、複雑に絡む旨味のエキス。ギリギリ楽しめる辛みに、絶妙な塩気と甘みが混在する。
飲み込みたくない中毒性を感じる、この余韻…。今まで食べたザーサイの中で、頭一つ抜け出している美味しさだ。
思わず感想文を書いてしまいそうな、本当に幸福になる味わい。ハオツーハオツー!!と連呼するたび、おばちゃん店長も超ご機嫌である。
これ何使ってるの?いつまで持つの?
これから一週間帰らないんだけど、大丈夫?
買う気満々の質問を投げかけると、おばちゃんは素早く答えてくれる。どうやら常温でも三か月は平気らしく、帰国時の審査も余裕でOKらしい。
さらにもし気に入ったら送るよ!と名刺をくれ、更なるビジネスチャンスも見逃さない。さすがに東京に送って!とは言えないが、やはり見事な商魂である。
さらに価格を尋ねると、おばちゃんはニコリと微笑む。そして搾菜を瓶にぎゅっぎゅと詰めながら、驚きの価格を教えてくれる。
一瓶8元。(約136円)
ハチゲン…( ゚Д゚)
まさか先ほどのバーガーキングで、この奇跡のザーサイが五瓶も買えるとは…。白米とこれさえあれば、二年くらい平気な気がする。
これっきゃない!と財布を緩め、手あたり次第に購入する。これとあれとそれと!と指を注すと、その度におばちゃんは嬉しそうに縦に頷く。
よっしゃ!と瓶を握り、ぎゅっぎゅーにザーサイを詰め込んでくれるおばちゃん。その詰め方は、冗談抜きで瓶が割れるほどの詰めっぷりだ。
しかも買うよ!と伝えているのに、またも同じ試食を薦めてくる。 どうやらこの方、とことん試食させたがりな親切な方らしい。
そしてリュックにザーサイを詰め込み、その重さにニッコリする。これで帰国後の食卓でも、当分中国の香りに恍惚するだろう。
おばちゃんに別れを告げ、そそくさとドミトリーに舞い戻る。もう一刻も早く、このザーサイで白米をぶちかましたいのだ。
ドミトリーにはまだ人はおらず、いつもの定位置に腰を下ろす。そして帰りに買ったビールと白米を取り出し、机の上にずらりと並べる。
そんな幸福タイムを企んでいると、足元にはネコが群がってくる。無茶苦茶すり寄ってくるけど、ザーサイはあげらんないからね。
食べたら、体悪くしちゃうよ。塩気と美味しさで。
そしてまずは、ビール&バーガーキングから。ちょっとスリムなビジュアルで、もしかして中国仕様なのかもしれない。
ぱくりと食べると口に広がる、久しぶりの美味しいパン。絶叫するほどの幸福に包まれ、もう文句のつけようがない。
旨い。やはりバーキンは世界最強だ。
そしておもむろに取り出す、奇跡のザーサイ。
何度見ても8元とは思えないサイズ感に、ぎっしり詰まった幸福の果実たち。さらに下部には電話番号も記載され、いつでも再購入できるらしい。
帰国したらダメもとで、日本へ送ってくれるか聞いてみよかな。船便でも三か月以内には届くよね。
詰まりすぎて取り出しにくい搾菜を、いざパクリ。あぁ、僅か15分前に試食したにもかかわらず、相変わらずの極楽っぷりだ。
コリコリ感と甘みと辛みが混在し、これぞ本当に箸が止まらない。もしクックパッドに掲載するなら『彼氏のお箸も止まらない♪』とか書いちゃいそうだ。
そして白米との相性も悪魔的、子犬なら動けなくなるまで食べる旨さ。世界に届け、おばちゃんの奇跡のザーサイ。
そして次第に人々が集まり始め、ドミトリーの夜も賑やかに。そんな喧噪もまた心地良く、飛び交う様々な言語に耳を傾ける。
もし他の言語も話せたら、もっと旅は楽しくなるよね。大学時代のドイツ語、もっと真面目に授業聞いておけば良かったな。
そんなことを考えながら、桂林3日目の夜は沈んでゆく。そして明日は遂に、念願の街に訪れる日。
その街の名は、鳳凰。
世界一美しいと言われる、川辺に佇む美しい古城。この旅で最も訪れたい、夢の如き異世界だ。
インターネットの情報とは、絶対に違う。そう確信する、一面鏡の様な幻想の街。
その街への想いを語り合い、お互いの予備知識を話し合う。そんな時間を過ごしていたら、時刻はあっという間に深夜一時。
ちょっと残ったチャミソルも飲み干して、そろそろ桂林の夜もお開きにしよう。明日の11時25分の新幹線も、下手したら余裕で寝過ごせそうだ。
世界一美しい鳳凰古城への出発
10月20日朝7時。
前回と同じく、川辺の琴の音で目が覚める。死んでしまったのかと錯覚するほど、天国的な心地良い朝だ。
ただ本日は鳳凰への出発の日、実際かなり興奮している。いつもより元気良く飛び起き、移動に向けてパッキングを開始する。
すると部屋のパンフレットには、昨日訪れた象山の絵が。どうやらその光景は、満月の夜にもっと美しくなるらしい。
ほほー…なるほど。確かにあの鼻の部分に月がすっぽり入ったら、すごく綺麗に映りそうだ。
拙い英語力でも何とか読め、こういった配慮にも感服する。繰り返しで申し訳ないが、ここはなんて素晴らしいドミトリーなんだろう。
用意を済ませてロビーに降りると、さすがに人は誰もいない。昨晩あんなにも賑やかだったのに、こんなにも静かになっちゃって。
なんだか転校するような気分になり、寂しさが溢れてくる。次に私たちが桂林に訪れるのは、一体何歳になるんだろう。
窓の外には桂林の街並みが広がり、人々の暮らしを切り取っている。朝独特の静かな雰囲気に包まれ、もう三泊くらいしたい気持ちになる。
そしてドミトリーの壁に掲げられた、THE・WORLDと題された絵画。その有名な能力で、時間を止めてくれちゃったりしないだろうか。
しかし寂しい時にも、空腹は当然やってくる。受付で朝ご飯を二つ注文し、いつものソファーに荷物を下ろす。
シンプルなパンと目玉焼き、そしてソーセージ付きのこちらのセット。一人28元(約478円)と少し高価だが、喜んでオーダーさせていただこう。
受付で完成を見守っていると、ドミトリーのネコが歩いてくる。本当に人懐っこい性格で、すりすりその体を擦りつけてくる。
白黒の君は、何度もすり寄ってくれたオセロだね。(勝手に名付けた)次回来るときは、きっとマタタビ持ってくるからね。
ただもちこは残念ながら猫アレルギーのため、一人で独占。こんなにも愛らしい動物が、この世にいるだろうか。
そして初めて見かける、新人にゃんこも。この方も大変可愛らしく、ぬあぁおうぅと謎の挨拶をしてくれる。
君の名前は、一体何だろう。美味しそうなマーブル模様だから、きっとパピコかな。
そしてしばらく待つと、女性の方が食事を運んでくれる。朝からコーヒーとパン、何いて至福の時間なんだろ。
バターをたっぷり塗り、ソーセージにカプリとかぶりつく。まさに最高の朝ごはんと呼べる、安心できる美味しさだ。
そして満腹になると、本日の旅の始まりだ。新幹線のチケットを確認し、本日の旅程を再チェックする。
本日のコースは、長沙南経由・懐化南行き。そこから予約した個人車に乗り込み、鳳凰に向かう予定である。
そして恐らく、到着は夜遅く。つまりいきなり、夜の鳳凰を目の当たりにできる。
あぁ、なんて興奮するんだ。人々が口を揃えて最高だという鳳凰、一体どんな街なんだろ。
残りのパンを口に入れながら、もちこと想いを巡らせる。二人旅の楽しさは、こういった興奮の共有かもしれない。
しかしふとポケットを探ると、残金もあと僅か。ここは銀行に向かい、とっておきのへそくりをおろしておこう。
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