中国旅行記15 中国一美しいと言われる念願の鳳凰古城
中国一美しいと呼ばれる、鳳凰古城。
想像を越えるその光景は、即座に脳裏に焼き付いた。そして同時に、この街で二泊できる喜びに震えあがる。
このバックパッカーで最も訪れたかった、湖南省・鳳凰古城。ひたすらに美しさに包まれる時間は、至福と呼ぶに相応しい。
鳳凰古城に耐えるための経済補給
残高210元。(約3.570円)
まずい。中国旅行前半を終え、お財布が完全に干からびている。銀行に残高はあるものの、意外な出費に旅の興奮を振り返る。
もちろん平均的な街なら、210元もあれば一日くらい余裕。ボーリングでも行っちゃう?と軽口を叩くほど、楽勝の経済状況だ。
しかし本日、私たちが向かうのは古城鳳凰。この旅一番の超観光地であり、この残高じゃ圧倒的な兵力不足である。
ピッ…ピッ…。
近くのATMに向かい、へそくりをコッソリ引き下ろす。もし仮に鳳凰にATMがなかったら、それこそ最悪だ。
お、お金なら、お金なら口座にあるから!とか叫んでも、きっとどうしようもない。ここは鳳凰を耐え切るだけの、現ナマをポケットにねじ込んでおこう。
久しぶりの1000元札にニンマリ微笑み、桂林駅へと急ぎ行く。本日は新幹線での乗り換えも必要な、結構な長旅の予定なんだ。
交通量の多い朝になんとかタクシーを拾い、桂林駅へ向かってもらう。運転手は少し眠たいのか、なんだかちょっとフラフラ運転。
もしここで事故ったら、憧れの鳳凰が潰えてしまう。頑張れぇ!と後部座席からエールを送り、運転手さんを心の中で応援する。
するとドミトリーから駅は意外と近く、直ぐに本日の出発地である桂林駅へ。朝の駅は人々で混雑しており、多くの観光客で溢れている。
歩きながらお弁当を食べる方、バナナを片手に歩く方。ぶつかれば恋愛が始まりそうな、せわしない朝の光景だ。
さらに駅への入場では、いつものように荷物検査が。これが結構お厳しく、君テロリスト?と、多数の警備員に細かくチェックされる。
両手を上に組み、体を満遍なくガサゴソされる。はい回って!とくるりと回され、ポケットの中見も全部チェック。
日本では形骸化してしまっているX線検査も、こちらの国ではガチチェック。この円柱の筒はなんだ!?と、昨日買った奇跡のザーサイまでも逃さない。
それお漬物なんです。確かにX線だと小型爆弾にしか見えないけど…。
さらに検査場所の隣には、具体的なダメグッズの表記が。その種類は非常に細かく、過去に持ち込みがあったのかと少し怖くなる。
中でも手榴弾の表記には、この国の実情を垣間見る。私の愛用ヘアスプレーの没収も、やはり当然の結果だったんだ。
桂林駅のナイスな果物屋
そして駅構内に入ると、人は殆どいなかった。11:25分の出発まで時間があり、ちょっと気合を入れすぎたようだ。
まだ一時間近く時間もあるし、どうしようかな。もちこに相談すると、旅のお供を買おう!という話になる。
確かに確かに!今日はほぼ半日、新幹線の車内で過ごすんだ。
もうお互いの胃腸も完全復活しているし、ここは美味しいお供を買っておこう。できれば見たことがないような、中国の本気を感じる逸品を。
二回目のボディチェックは避けたいため、駅構内で見つかればいいなぁ。そう考えて荷物を背負い、桂林駅内を散策する。
果物屋だ。
探し始めて、約1分。いきなり全条件を満たすお店に遭遇してしまった。
見たことない食べ物で、旅のお供にも最適。中国の本気を感じるような、パッション溢れる果肉たち。
おお…なんというトロピカル感。ここなら見たことのない果物が、きっと沢山いらっしゃる。
まるでここだけが夜市のような、お店に充満する甘酸っぱい香り。私ももちこも果物大好きっ子のため、思わず店内に突撃する。
店内には見慣れぬ果物が密集し、どれを選んでも美味しそうだ。 ただ中には極悪な価格の果物もいらっしゃり、常に警戒は怠れない。
バナナにしようかなぁ…。でもバナナはいつでも買えるしなぁ…。
悩んでいると、もちこが女性特有の即決で果物をパパパと選ぶ。そして受付のおばちゃんに手渡し、お会計を済ませてしまった。
ちょっとドリアンも食べてみたかったなぁ。でもビールとドリアンの組み合わせって、かなり危険って聞いたことがあるな。
そしてこちらが、もちこチョイス。蟻の誕生日にも最適な、驚異的な甘さの果実ばかり。
価格は非常に安く、これ全部でおよそ20元(約340円)。これで一日甘酸っぱい旅が送れるなら、まさに最高だ。
まだ時間もあるし、果物の面接でもはじめようかな。最初の方どうぞ!
フリーザの隣にいそうな、この真っ赤な果物。恐らくこのままじゃなく、殻を剥がして食べる感じかな。
その棘はチクチク痛く、その新鮮さが伝わってくる。なんだか雰囲気的に、凄くコリコリな食感なんだろうか。
では早速、このトゲトゲを剥がして…いてっ。
お前か。
皮を剥くとやぁと顔を出す、お馴染みの果物。このトゲトゲ果物の正体は、どうやらライチみたいだ。
生のライチって、こんなに刺々しいビジュアルなんだ。いや確か、あなたは革ジャンの様な殻を着てたはずだけど…。
そしてぱくりと食べると、これがすごく濃い。喉がイガイガするほど甘く、果汁も抜群に凝縮されている。
流石は果物王国、これは過去のライチ歴史でもトップの美味しさだ。では次の方どうぞ!
お次は小さな黄色果実を、ペリリと剥がす。こちらもやぁ!と、ライチの兄弟のような果肉が現れる。
お前もか!と叫びそうになるこのライチ兄弟、どうやら龍眼(ロンガン)という名前らしい。味はライチに似ているが、口全体に伸びるような独特の甘みが最高だ。
この龍眼も喉が痛くなるほど甘く、思わずパクパク食べてしまう。個人的にはライチより美味しく、お酒に沈めたら最高にイケそうだ。
もちこも会話が止まるほど剥き始め、しばらく龍眼タイムに突入する。駅構内で龍眼を無心で剥き続けている日本人を、中国人はどんな目で見てるんだろ。
そして果物に夢中になっていると、思わず殆ど食べてしまう。半日分のお供だったはずなのに、梨以外が15分で全滅してしまった。
まるで映画の本編が始まる前に、ポテチ全部食べちゃうみたいだな。ちょっと凹んでいると、もちこが追加で買ってくるね!と果物屋に走って行く。
全部ロンガン。
え!?ぜ、ぜんぶこれ!?他の果物は!?
そう尋ねると、どうやら龍眼が相当気に入ったとのこと。まさか大量の龍眼を買ってくるとはつゆ知らず、思わず龍眼を吹き出してしまう。業者か。
ただこれほど大量でも、恐らくすぐ食べてしまうね。それほどこの龍眼とは、私たちの生活に無くてはならないものだから。(本日初)
桂林から長沙南への新幹線
そして構内でしばらく待つと、11:25分の出発時間に。私たちもホームに降り、チケットの乗車番号を確認する。
ただ旅の初日から持参している、中国へのお土産がやけに重い。正直、郵送したい気分になりながら、何とか根性で輸送する。
(持っているのはもちこ)
新幹線の車内は非常に綺麗で、久しぶりの乗り心地に興奮する。フカフカの座り心地は、やはりいつ味わっても最高だ。
そしてまず本日最初の行き先は、桂林→長沙南。14時25分到着まで、約3時間の電車旅だ。
少し時間にも余裕があるため、のんびり車内でくつろごう。龍眼も山盛り持っているから、胃袋もきっと退屈しないだろう。
そして車内でのんびりしていると、大きないびきが聞こえてくる。ふと周囲を見渡すと、変わった姿勢の男性が視界に入る。
zzz…。
頭に全体重をかけながら眠る、隣のおじさん。その姿勢、めっちゃ楽なのだろうか。
ちなみに二時間以上この格好で眠り、起きた時にはおでこに(ー)のマークがついていた。恐らく食事の時に下ろす棚の、回す部分の跡である。
しかしなぜその姿勢で…。
そして新幹線はあっという間に、最初の目的地長沙南へ。ここも桂林並みの大きな都市で、多数の観光客で大賑わいだ。
ちなみに次の出発は、17時06分。約2時間半ほど時間もあるため、楽しいご飯タイムに興じよう。
駅構内はまるで東京駅のような広さで、多数の人々が急ぎ去っている。ここでもちことはぐれたら、確実に迷子になる広大さだ。
こんな時こそ、中国語が話せない無念感を強く感じる。迷子になっても人に道を尋ねられるくらい、事前に勉強しておくべきだった。
もし今仮にケンカをして、もちこが走って逃げだしたら…。それこそ実質共に孤独である。
そう考えたらこの旅で一番怒らせてはいけないのは、もちこかもしれない。…お財布だけはもっとこ。
そして駅の中を見渡すと、湖南式の食堂が多数並んでいる。どうやらこの駅でも、美味しいご飯に出会えそうだ。
昨日のバーガーキングで再燃した、中華料理への熱い願望。さっそく荷物を握りしめ、美味しそうなお店を散策しよう。
駅のエスカレーターを登ると、芳しい香りが鼻腔をくすぐる。子供の頃から変わらず、初めてのご飯屋とはなんとワクワクするのだろう。
今日は麺の気分かなぁ?と思いながら、昨日も麺三昧だったことを思い出す。どうやら桂林の米粉は、まだ胃袋を掴んでいるらしい。
そして一つのお店を発見し、迷わず突撃する。どうやら鉄板中華系のお店らしく、安心感のある香りが漂ってくる。
そして店内に入るや否や、直ぐにご飯を注文する。まずはいつもの胡瓜の叩き、そして相棒的な青島ビールも。
胡瓜&ビール、最高だなぁ!コリコリ食べながら、主役の到着を今か今かと待ち望む。
さらに魅力的な商品をレジ横に発見し、思わず追加で注文。こちらは主食系が完成するまでの、なんとも美味しい場繋ぎだ。
味わいはからあげクンそっくり、噛めば柔らかしっとり肉質。ただ一口食べると、唇はびっくりするほどテッカテカになる。
そして待ち望んだ、この旅二回目の魯肉飯。実はこのお店でも品切れが連続し、これなら作れるよ!と誘導されてしまう。
まさかこれほど大きな駅構内のお店にも関わらず、魯肉飯を薦められるとは…。ちなみに入店したのは、餃子屋である。
しかし旨い。
テロテロに蕩けた脂が、干し椎茸や唐辛子に絡みつく。この中国の魯肉飯、何回食べても飽きが来ない。
やはり中国に来たなら、絶対食べておきたいガッツリご飯だ。満足感溢れるセットで25元(約425円)と、なかなかお買い得感じゃないか。
ちなみに果物を食べ過ぎたもちこは、胡瓜をツンツンつまんでいる。確かに子熊くらい食べてたからね。
さらに付属のスープは、ガッツリのパクチーが。ちなみに私ももちこもパクチー苦手っ子のため、その除去作業に奮闘する。
こらあっち行きなさい…。あっ、こんなところにも…!
しかしスープの底にもびっしりパクチーが沈み、作業は思った以上に難航する。最終的に思い切って飲んでみると、意外とすんごい美味しかった。
そんなスープをちびちび飲みながら、今宵の鳳凰について話し合う。お互い最高に楽しみにしていたこともあり、会話も全く衰えない。
今日は夜に到着するから、速攻夜景が見れるなぁ。もし晩御飯に間に合うなら、川沿いのお見せて食べたいのう。
そんな話をしていると、何だか珈琲が飲みたくなる。こういった雑談をするなら、是非とも美味しい珈琲も飲みたいものだ。
そう考えて、駅構内を散策する。すると見慣れたMのマークと、ポテトの焼きあがるお馴染みサウンドが聞こえてくる。
マクドだ。
一瞬似てるお店かな?とか思ったが、正真正銘ド〇ルドのお店。あの独特のポテトサウンドは、全世界共通なのだろうか。
ちょっと調べると場所によりポテト音は違うらしいが、今は結構どうでも良い。さっそく席を確保して、ゆっくりコーヒータイムに興じよう。
すると店内は沢山の若者がおり、何やらパソコンを囲んでいる。どうやらIT系のお仕事をしているらしく、高額なお金の話が飛び交っている。
流石は中国、若くても仕事ができる方は沢山いるのだな。そう思いながら彼らを眺めていると、もちこがご馳走を抱えて戻ってくる。
珈琲とMポテト。
なんともテンションの上がる、教科書通りの素晴らしい組み合わせ。たまに無性に食べたくなる、子供の頃からのお気に入りだ。(幼少期はファンタアップル一択)
ひょいひょいポテトを摘み、再度鳳凰への想いを雑談する。するともちこがふと、クイズを出してくる。
この珈琲、いくらだと思う?
でたでた、これは結構好きなヤツだ。恐らくびっくりするような低価格だったに違いない。
流石は中国、マクドの価格もびっくりプライスなのかな。だって桂林の米粉は、一杯四元(約85円)だったもの。
しかしこれは、質問者が心地良くなるタイプのクイズだ。ここは敢えて15元(約255円)くらいの、ちょい高めを答えておこう。
24元。(約408円)
スペシャルプライスだ…。まさか日本でも150円で買えるマクド珈琲が、二倍以上の価格だとは。
確かに日本なら、適正価格を少し超えるくらい。ただ先ほどの魯肉飯セットとほぼ同価格とは、まさかの事態だ。
もしこの長沙南で、この珈琲価格が適正値ならば。もしかして超観光地の鳳凰では、どえらい価格になるのでは…。
珈琲一杯24元…。昨日食べた米麺は、4元だぞ…。
少し恐怖を感じ、思わず珈琲をちょびちょび飲む。何だかこの中国の適正価格が、次第に分からなくなってきた。
長沙南から懐化南への新幹線
そしてポテトを摘まみながらロビーで待つこと、約1時間。遂に乗車時間が訪れる。
既に時間も夕刻で、この時間からの新幹線は初めてだ。目的地懐化南への到着は、夜も始まったばかりの18:49頃だろう。
あぁ、何だか緊張してきた…。遂にあの憧れの鳳凰に…。
車内に人は少なく、懐化南という街にもちょっと興味が湧いてくる。鳳凰への中継路として向かうが、どうやら観光地ではないらしい。
大きなリュックを抱えた人はおらず、皆がサラリーマンや地元の方々。この時間から、鳳凰に行く方は少ないのかもしれない。
いつものタブレットの爆音も聴こえず、ちょっと寂しい。やはりあの車内の喧騒も、中国の魅力だったんだ。
そして夜の観光に備え、もちこも仮眠に入ってしまった。話し相手もいなくなったし、雑誌でも読んでみようかな…。
全然読めない。
当然ながら解読不能で、何やらお偉い先生がキリリとこちらを見つめている。皆様ご存知ですか?的な雰囲気を出しているが、一体何の人なのだろう。
しかしこれほど高校時代の英語講師に似ている人が、世の中にいるとは…。どう見ても山田先生だ。(誰やねん)
ただ全て漢字で書かれているため、何となくの暇つぶしには最適だ。途中で健康という文字が読み取れ、なんだか得した気分で読みふける。
そして夜もしっかり暗くなった、18時49分。新幹線は予定時間ぴったりに最後の中継地、懐化南に到着する。
周りに観光客はあまりおらず、いつもは混雑する下車口もガラガラだ。荷物を何度も確認し、新幹線が止まるのをじっと待つ。
ホームには明かりはなく、ほぼ手探りで出口を探す。もうもちこと周囲のお客との区別もつかず、結構危険な暗さだ。
途中で他の男性観光客に誤って声をかけ、少し恥ずかしい気持ちになる。それでも気持ちと荷物を持ち直し、ずんずん明かりに向かっていく。
ずんずん…。意外と広いな…。
すると突如周囲が明るくなり、ようこそ懐化南!的な雰囲気に。やはり鳳凰への中継地ということもあり、この駅も非常に大きいらしい。
そしてここで探すのが、運転手だ。事前にお願いしていた男性を見つけ、その方の車に乗り込まなければならないのだ。
どうやら彼は、もちこ(※仮名)と書かれたプラカードを持っているとのこと。周囲を必死に探すが、なかなかそれらしい方が見つからない。
そして他の送迎バスの呼び込みも盛んで、鳳凰の文字が眩しく輝く。ついにここまで来たか!と、テンションも最高潮だ。
そして中には、日本語でホウオウ!ホウオウ!と叫ぶ女性も。どうやら時に日本人観光客も、この街を訪れるようだ。
MOCHIKO?
周囲を見渡していると、一人の男性が名前を呼びながら近づいてくる。どうやら彼こそ、事前にお願いした運転手さんに間違いない。
大きな荷物を背負い、彼の所に足早に向かう。完全防備の男性は、よく来たねぇ!と私たちを迎えてくれた。
鳳凰に伸びる密室高速道路
彼の車に荷物を預け、暖房の効いた後部座席に乗り込む。外は非常に寒く、山奥にある鳳凰もきっと寒いに違いない。
すると男性はカギをつけたまま、車から降りてしまう。そしてもう一組いるから!と言い残し、そのまま駅に消えていってしまった。
あぁ平遥古城と同じく、どうやら今回も相乗りだ。確かに山奥の鳳凰に折角向かうのに、私達だけ乗せるのはもったいないよね。
車内に流れる謎の中国民謡に耳を傾け、彼の帰りを待ち望む。早く鳳凰に行きたぁい!と叫びたい気持ちを、グッと抑えながら。
全然来ない。
車内で待つこと20分、全然まったく音沙汰がない。鳳凰に着いたら何する?話も、そろそろ限界だ。
しかも車内の音楽もCDらしく、同じ曲がループで流れる。きつめの暖房に、なんだか催眠にかかりそうだ。
すると25分待ったところで、運転手さんが二人の男性を連れてくる。そしてまったく悪ぶる様子もなく、じゃあ行こうか!とアクセル全開で出発する。
ブーン…。
明かりの少ない高速道路を、安定の爆速でバンバン飛ばす。3回目の長距離ドライブとは言え、やっぱり速度はマジでガクブルだ。
パッシングも鳴り響き、トラックの幅寄せもガシガシ食らう。しかし運転手さんは平気な顔で、助手席の男性と談話を交わす。
だ、だから速いんだって…!!怖いんですって…!!
そう日本語で呟きながら震えていると、もちこも必死にシートベルトを握っている。この車内で震えているのは、私達日本人だけだ。
ザーサイじゃない…。日本に持ち帰るべきお土産は、きっとこの鋼メンタルだ…。
何事にも動じないこの精神力は、お金では買えない稀有な素質。この爆速ドライブに耐えれば、もしかしたら私のハートもカッチカチに…。
そんな爆速運転に耐えること、約70分。遂に外のイルミネーションに、鳳凰の文字が現れる。
車内の観光客四人はおお~!と歓声を上げ、運転手さんもよりノリノリに。どうやら念願の鳳凰まで、本当にあと少しのようだ。
なんだあれは…。
前方に現れる、無数の明かり。宇宙母船のような煌びやかな光が、闇夜全体に散りばめられている。
ま、まさか…。あれは全て、街の明かりなのか…?
ざわつく車内の雰囲気を察し、運転手さんは最高にご機嫌。明かりが次第に大きくなり、それが川に沿った建物なんだと分かり始める。
ついに来た。間違いなく、鳳凰の明かりだ。
猛烈に立地条件の良い、ドミトリー家興楼
そして周囲が真っ暗になった、夜21時。遂に念願の鳳凰に到着する。
途中幾度も明かりに迎えられながらも、凝視することをためらった。何故なら最初に見る光景こそ、ずっと記憶に残るものだから。
運転手は煌びやかな街並みを抜け、まずはドミトリーに向かう。そしてそこでは、笑顔満タンの女性店主がお出迎えしてくれた。
よく来たねぇ!
店長さんに挨拶されるものの、周囲が暗すぎて良く分からない。にもかかわらずどこから来たの?まぁ日本から!と、女性店主は滅茶苦茶に気さくだ。
これから二泊するため、この明るさは最高にありがたい。彼女に導かれるまで、まずは本日のドミトリーへと先に向かおう。
そして案内されたドミトリーの雰囲気は、THE・中国。ロビーにはお店の子供たちが走り回り、笑顔で挨拶をしてくれる。
どうやらご家族様で経営をされているらしく、隣ではお婆ちゃんがお食事を片付けている。きっとキムチを食べていたのだろう、すごく美味しそうな香りだ。
早速ロビーで受付を済ませ、大きな荷物を部屋に置きに。ただもう心は完全に鳳凰の夜景に向いており、一刻も早く飛び出したい気分である。
部屋も非常に綺麗で、これで1人1泊約120元(約2.000円)。ベットもふかふか、ゴールデンレトリバーが寝ていも違和感無し。
めちゃめちゃに良いじゃない!鳳凰の夜で酔いつぶれても、このお部屋なら快適な朝になりそうだ。
さらに最低限のアメニティも整い、快適な三日間が過ごせそう。まさに鳳凰を満喫するために特化した、最高の宿泊場所である。
ドミトリー 家興楼
そして荷物を置いて受付に戻ると、なにやら店主が手招きしている。するとちょっと見て!と言いながら、一枚の大きな紙を見せてくれるのだ
鳳凰の地図だ!
何やら街の見取り図が描かれた、一枚の古風な地図。じっくり覗き込むと、どうやら手書き風の鳳凰の街の構図が乗っている。
今、あなた達はここにいるのね…。そしてここをね、こう進むとね…。
店主は優しく丁寧に指で道順を教えてくれ、私たちもふんふんと頷く。どうやら鳳凰は意外にも小さな街らしく、お勧めの場所に〇をしてくれる。
さらにこのドミトリーから歩いて約1分ほどで、鳳凰のメイン場所に抜けられるらしい。鉛筆で道順を教えてくれると、本当に目と鼻の先だった。
まさかこの場所が、そんなナイススポットだとは。飲んでも食べ歩きをしても速攻帰れる、まさに超便利ドミトリーじゃないか。
もう我慢できない。
心と胃袋は、もうケロッグコンボ状態だ。
鳳凰の地図を貰い、感謝の一礼と共に外に飛び出す。店主は気を付けてね!と手を振り、笑顔で送り出してくれる。
はぁはぁ…。(走ってる)
ドミトリーの門を飛び出し、言われた方向に突き進む。もう少し先に光が見え、ソワソワ感も止まらない。
まるで気分は、初めて海に来た小学生。念願の鳳凰の夜景が、あと数十秒で展開されるのだ。
そして広がる、眩い世界。遂に辿り着いた、念願の光景。
こんばんは鳳凰。
日本から来た、ねこやまと申します。これから三日間、どうぞ宜しくお願い致します。
思わず挨拶をしてしまう、眩いほどの美しさ。あらゆる夜景が水面に反射し、まるで磨かれた鏡の城のようだ。
何という光景なのだろう。言葉がないと分かりながら、言葉を探してしまう衝撃の光景。
暫くの間立ち尽くし、ただ茫然と光の余韻に酔いしれる。早く晩御飯を決めないと、お店が閉まってしまうと思いながら。
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