中国旅行記16 手あたり次第に満喫する初めての鳳凰古城
念願の湖南省・鳳凰古城。
夜更けに到着して荷物を置くと、直ぐに夜景を見に走った。すると目の前には、衝撃的な夜景が飛び込んできた。
波のない川面に反射する、眩い鳳凰の夜景。その光景は、長旅の疲れを瞬時に癒してくれた。
湖南省・鳳凰古城の美しさを満喫する
ふつくすぃ…。
自分の語彙力の少なさに驚きながら、茫然と立ち尽くす。それだけで十分に心地良く、ただ鳳凰の夜景は美しかった。
例えようのない感動に包まれ、その光景に酔いしれる。過去に感じたことのない、数分単位で時間が惜しい感覚だ。
そして周囲にも、同じく呆然としている観光客が。分かります…。と握手をさせていただこうかと思うほど、皆同じ気持ちらしい。
洞庭湖に流れ入る湘西沱江に、添うように並ぶ木造家屋。川面にせり出した家々は、その全てがライトアップされている。
観光客向けのBARも多く、聴こえてくる賑やかなクラブミュージック。どうやらこの鳳凰の街も、平遥古城と同じく近代化が進んでいるのだろう。
しかしそれでも歴史を損なわぬ、圧巻の中国建築。そのデザインセンスに充てられたら、5時間は放心状態になれそうだ。
さらに建物に近づくと見せつけられる、歴史的な建築様式。どの建物を拝見しても、細かな造形に驚かされてしまう。
門構えの小さなインテリアから、家屋の壁デザインまで。独自の中国芸術が散りばめられ、全部写真に撮らなきゃ!という義務感がすごい。
お゛お゛ぅ…。なんという破壊力…。
変な擬音を発しながら、ものすごい勢いで写真を撮る。他の観光客様も同じ気持ちらしく、周囲にシャッター音がこだまする。
パシャパシャ、パシャパシャ。いくら撮っても、採り切れない。
そして同時に、あることに気が付いてしまう。200枚ほど写真を納めた時、ふと確信に変わる重要な事実…。
それは歩けないこと。
もう写真に収めるものが多すぎて、全く前に進まない。事実かれこれ30分かけて、私たちが進んだ距離は10m程度である。
この塔を始めとして、あらゆるものが美しい。初体験の芸術センスが多すぎて、全てが超被写体なのだ。
どの光景を撮影してもインスタ映えし、いいねも沢山貰えるかもしれない。そう考えると、なんだか全部の光景が見逃せなくなってしまう。
しかし、夜も10時過ぎ。早くしないとご飯屋さんも閉まってしまう。にもかかわらず写真撮らなきゃ!的な義務感に襲われ、全く前に進まない。
あぁ、挟まれてる。こんな幸せなお悩み、一体どこに相談したらいいんだ。
そう思いながらも、思わずパシャリ。どうやらこの鳳凰の夜景に、完全に心を鷲掴みされたらしい。
ただそう考えながらも、本日の晩御飯を捜索する。この夜景を見ながらの食事は、いったいどれほど最高なんだ。
すると川沿いの通りからは、芳しい鍋の香りが広がってくる。そして同時に、何やら聞超える、耳慣れない慣れない鳴き声。
ゴッゴッゴッゴ…。
なんだこの声…。アヒルのようなニワトリのような、不思議な鳴き声だ。
蛇と蛙と川魚。
蛇と目が合い、ぎゃあああ!!ともちこが逃げ出す。これはなかなか中国らしい、結構生々しい光景だ。
中には川の鴨もおり、お店の食材として使われているらしい。先ほど鶏のように鳴いていたのは、このダックちゃんだったのか。
おおう…。この芳しい香りは、もしかして…。
少し残酷な気持ちになるが、ただこれも一つの事実。思わず忘れてしまうのだが、食とは本来こういうものだった。
今宵も彼らの命に感謝して、美味しいご飯を頂戴しよう。きっと雰囲気的に、鴨は食べられそうにないけど。
鳳凰の美味しい激辛火鍋
そして川沿いのお店に入店し、窓際の席に案内していただく。すると店内には中国伝統の音楽が流れ、川沿いということもあり最高に心地良い。
さらに店員さんがメニューを運んでくれ、飲み物やお薦めご飯を教えてくれる。どうやらこのお店は、先ほど薫ってきたお鍋系がお勧めのようだ。
夜も遅いため他にはお客はおらず、ほぼ貸し切り状態で選ばせてもらう。さらに日本人だと気がづいたのか、壁には料理写真もあるからね!と教えてくれるのだ。
そして空腹感を抑えられず、メニューをパラリ。すると最も危惧していた事実が、私たちの目の前に飛び込んでくる。
観光地プライスだ…。
多くの一品料理が20元の大台を超え、平均30元(約510円)の価格帯。どこを探しても一桁台の価格が見当たらず、中には三桁のお料理すら存在する。
やはり世界一美しいと言われる、鳳凰古城。10元程度で買えるような、チープな夜のわけがない。
ただ実際には、まったくの想定内。超観光地プライスという程でもなく、きっと妥当なお値段なのだろう。
お金もいい感じに下ろしてきたし、今日は初めましての鳳凰だ。今夜は全く気にせず、この夜の鳳凰に乾杯しよう。
早速店員さんにお勧めされるまま、128元(約2.176円)の火鍋を注文する。ただ注文直後に一番高い料理だと気付き、店員さんの話術に感服する。
まず最初は、見慣れぬおつまみと雪花純正啤酒。これは台湾でも良く見かける、透明感の強いお気に入りビールである。
ただこちらは10元(約170円)と、やはり格安。お酒で利益を上げる日本とは、こういうとこが違うんだろうか。
そんなことを考えていると運ばれてくる、巨大な肉火鍋。具材と唐辛子がぎゅっぎゅーに詰め込まれ、最高に辛そうだ。
山賊のおやびんが食べるような、ガテン系のビジュアル。男気溢れる料理とは、まさにこういう見た目じゃないだろうか。
そして肉はどうやら牛肉のようで、ちょっとホッとする。注文直後に鴨の叫び声が聞こえたら、もうどうしようかと思ってたんだ。
おそらく結構メンタルに来る。鴨の笑顔がチラついて、結構食べづらいよね。
そして同時に運ばれてくる、バケツサイズの白米。小学校の給食のような、みんなで分けるタイプの容器だ。
で、でかい。一体何人家族なんだろ…。
きっと白米を頼んだお客には、この大きな器で取り分けるのだろう。いくらでも食べてね!とゴリ押ししてくれ、なんともありがたい限りだ。
そして白米を器に取り分けると、店員さんが白米ボールを回収する。そしてそれを、隣で食事中の従業員が、嬉しそうに取り分けている。
なるほど、なんて合理的。お客さんが食べ残しても、逆に従業員が食べ残してもOKなんだ。
これで一人2元なんて、白米好きへの優しさ半端ないな…。でも不思議と、オニギリって見かけてないなぁ。
従業員との白米を分け合う、ちょっとした仲間感覚。もしその白米残ったら、焼きオニギリ作ってあげようかな。
間違いなく辛い。
再度火鍋と対峙すると、それだけで額から汗が飛び出す。これは以前中野で頂いた、激辛サムギョプサルと同じ現象だ。
お鍋には容赦なく唐辛子が敷き詰められ、どれだけ辛いか余裕で分かる。きっと食べた瞬間マスカラが取れるような、本場の辛さなんだな…。マスカラつけてないけど。
そして一口頬張ると、猛烈な辛みと不思議な香味が。それが筋っぽいお肉に沁み込み、なかなかの美味しさだ。
ただ、ちょっと硬い。奈良の鹿に齧りついてるような、結構な野生感。(ガジガジ)
そして具沢山なモルモン部分をモリッと持ち上げ、汁に絡めて一気に食す。ワイルドな一面がちらりと顔を覗かせる、野性味ある旨さだ。
ちょっと硬いけど、醤油風味で白米との相性も疑いようがない。乾燥した中国独特の白米と、汁気のある旨味がとても仲良しだ。
美味しい。食べるほどに顎が疲れるけど、すごく美味しい。
しかし、なんという多幸感なんだろう。今私達は、鳳凰でご飯を食べているのか。
鳳凰に来た!という感動と、これが鳳凰!?と手探な感覚。その中間で心が躍り、手のつけようのないテンションに包まれる。
こんなに魅惑的なお鍋を食べつつも、心は完全に窓の外。校庭を眺める高校時代の山崎まさよしの気分だ。
汗を拭きながら火鍋を食べつつ、目では鳳凰の夜景を追う。誤って唐辛子をダイレクトに齧り、慌ててビールで洗い流す。
少し急いでご飯を食べ、もう一度鳳凰の夜を散策することに。外には燦燦と輝くBARの明かりも見え、今夜は少し散財しちゃうだろう。
ごちそうさま!と告げ、お会計のためレジに向かう。明日も来てね!と笑顔で送り出していただき、やる気も満々だ。
鳳凰の街を流れる、静かな夜の沱江。さらにその中央付近に位置する、巨大な木造曲線橋。
こちらも例外なくライトアップされ、その下には屋台船が行き来する。ただそのサイズはとても小さく、大きなパドルでゆっくり進んでいる。
あぁ、船から夜景を楽しむのも、最高に楽しそうだ。もし三桁以上の価格じゃなければ、是非お邪魔させていただこう。
ただその前に、私達にはどんちゃん騒ぎが必要だ。この猛烈なテンションは、沈めず暴発させてしまった方が良さそうだ。
綺麗ねぇ…。そうだねぇ…。
そんなシックな会話を楽しむ大人の過ごし方は、私達にはまだ早い。酔って道路標識を持ち上げるような、大学生的なテンションが似合っている。
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