中国旅行記4 魅惑の平遥古城と制御不能のレンタルバイク
少し煙たい、平遥古城の朝。
初日と同じように、外から響く話し声で目が覚める。その声は大きく、まるで目覚まし時計の様だ。
どうやら昨晩の中庭に、沢山の宿泊客が集まっているらしい。ただ1泊1500円のコスパなら、この朝の騒々しさも納得である。
これは遅めの夏休みを使った、2週間の中国旅行記。少しでもお楽しみいただければ、最高に幸せです!
パジャマのまま外に出ると、昨晩の中庭が眩しく広がっている。まるで映画ベストキッドに出てくる、風情爆発の石張り空間だ。
二階のベランダでは、お爺さんがゆっくり両手を差し出す。寝ボケているのではなく、きっと本場の太極拳なのだろう。
部屋から鳴り響くBIGBANGのアラームも止まり、相方もゴソゴソ目を覚ます。どうやら彼女の胃腸も7割ほど回復したようだ。
そして15分しか使えないシャワーを、5分と10分で仲良く分割する。絶対無理だと思った5分も、慣れれば全然余裕じゃないか。
さらに昨日と同じ服を着て、街に繰り出す準備を終える。中国3日目にして、初めて観光らしい観光ができる一日だ。
さぁ、いこう!
ポケモントレーナー並に元気の良い、3日目の出発である。
古城の街は全体的に少し煙たく、暖炉の様な香りが充満している。昨晩からずっと気になっていたが、この煙たさは何なのだろう。
日本から持参したるるぶ的な本を広げ、古城中心への道を探す。右手に地図を握ると、観光の雰囲気がどんどん湧き出てくる。
すると本には、歩くとめっちゃ迷うよ!的な記載が。どうやら中心部に行くなら、乗り物を利用するのがお利口さんらしい。
しかし周囲を見渡しても、タクシーどころかバスもない。他の観光客様は、一体どうやって移動するんだろ。
目の前の乳牛に乗るわけにもいかない。ここは颯爽と通り過ぎるスクーターでも、ヒッチハイクするべきだろうか。
すると私たちの目の前に、見慣れぬおじさんが颯爽と現れる。そしてお困りかい?的な表情で、彼の愛車へ乗車を促してくる。
電子カートだ。
通気性抜群の彼の愛車に乗り込み、ガタゴト出発する。どうやらこの電子カートこそ、城内に繋がる数少ない移動手段らしい。
さらにおじさんはどんどん観光客を勧誘し、速度はずっしり遅くなる。それでも約3分で、観光名所的な中心部に到着するらしい。
終戦後のリンタクに似た、なんとも独特の乗り心地。リンタク乗ったことないけど。整備された石畳を曲がる度、お尻が真っ二つになりそうだ。
周囲を見渡すと、同じように縦揺れしている観光客。きっとこれは一般道でも走行できる、大変合理的な乗り物なのだ。
・リンタクっぽい乗り物 2人20元(約340円)
すれ違う同業者に挨拶を交わし、おじさんは猛進する。きっと何千回と往復した道なのだ、その表情はまさに余裕である。
そして電子カートは、薄暗い小道の手前で停車する。どうやらここが、おじさんとの楽しい旅の終着地点らしい。
ここから城内だよ!
そう言いながら、カートおじさんは笑顔をくれる。しかしその目線は既に、次の観光客に釘付けだ。
即座に近くの観光客を乗せ、愛車と共に颯爽と出発する。この生きる力は、きっと進〇ゼミでは教えてくれない。
去り行くおじさんに手を振り、私たちも暗い小道を進む。そして次第に城内が見え始めると、テンションは爆発しそうだった。
最高に素晴らしい平遥古城・城内の街並み
世界遺産、平遥古城内。
何百年も変わらぬ、風情無限の街並み。これぞ夢にまで見た、この旅のメインディッシュの一つ。
何百と軒を連ねる建物に、今も人々が暮らす古風な住宅地。旅の定番台詞である見たこともない光景が、視界一杯に広がっている。
何から触れるべきか、全然分からない。どのお店から突撃するか、答えがでない。
あぁ、すごい…。
ここが繰り返し妄想した、世界遺産平遥古城か。
圧倒的な歴史景観に包まれ、呆然と立ち尽くす二人の日本人。初めてディズニーランドに訪れた小学生は、きっとこんな気持ちなんだろう。
写真に撮り尽くせない、古き良き建物。そのいずれも圧倒的な中国感に満ち溢れ、観光客の足をギュッと止める。
何度もこれ中国っぽくない!?と、お互いに写真を見せあう。間違いない、だって中国だもん。
中国っぽくて、最高だね!きっと訪れた観光客全員が、このセリフを口にするだろう。
それほど写真スポットが多すぎて、あらゆる建物を撮影したくなる。しかし意外に早く、全部撮ると観光できない事実に気が付いてしまう。
本当に欲しい写真だけ撮って、あとは共有しよう!
きっと忘れる約束をもちこと交わし、本格的な観光を開始する。たぶん10分後には、お互い夢中で写真を撮ってると思うけど。
城内で手招きする、魅惑のお土産店達
するともちこが、突如目の前のお店に飛び込む。これ買う!と、なにやら購買意欲をお持ちのようだ。
私も慌てて店内に続き、そのお店を散策する。ただ何のお店か見当が付かず、しばらくボーっと立ち尽くす。
無数の瓶に書かれた、〇酒の文字。もしや朝からお酒を飲みながら観光する、ぐうたら計画を練っているんだろうか。
どこから見てもお酒にしか見えず、ちょっとニヤニヤしてしまう。ただ中国語が読める相方は、何のお店かご存じなのだろう。
すると笑顔の可愛い店員さんが、ゆっくり近づいてくる。さらに試飲を勧めてくれ、やはりここは飲み物屋さんなのだと確認する。
しかしこんな朝から、フワフワ気分になって良いのかな。ちょい悪おやじを気取る年でもないし、これ麦ジュースだねぇ♪とか言っちゃうタイプでもないし。
ただとりあえず、一口頂戴しよう。折角勧めてくださっているのに、断る理由なんてパンダに怒られる。
そして一口に含むと、時差なく香ばしい酸味が広がってくる。あぁこれは、飲む黒酢だ。
CH〇YAの黒酢を超える、柔らかで棘のない酸味。冷えた炭酸水で割ると、きっとこれは至極の飲み物になるね。
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