中国旅行記8 風光明媚な桂林川下りと恐怖の個人ボート
全力で挑む、世界遺産 桂林。
始まりは留守番だったけれど、気分は最高。何故ならここ桂林の川下りは、きっと忘れられない記憶になるから。
強制的に休息を取らされた、川下りの前日。私の胃腸は、確実に以前の力強さを取り戻している。
- 全てが揃う桂林の素敵なお土産
- 世界対応されたドミトリーの素敵な食事
- 値段の異なる、二種類の桂林川下りツアー
- 人数に圧倒される川下り集合場所
- 最高にハイテンションな川下りクイズ
- 風光明媚な絶景に震える、桂林川下り
- 個人ボートの衝撃の川下り風景
- 旅の終わりと楽しさに溢れる陽朔
全てが揃う桂林の素敵なお土産
( ゚Д゚)(パチッ)
…すごく良く寝た。風邪特有の悪夢ではないが、夢の内容を思い出せないほど深く寝た。
真っ暗な部屋の天井に、窓の外から光が差し込んでいる。どうやら外の渓谷に、夕方のライトアップが点灯したようだ。
ふかふかな布団から手を伸ばし、近くにあるスマホを摘み上げる。時刻はもう、夜の19時だ。
どうやら2時間近く、一人で熟睡していたらしい。寝れない寝れない!と駄々をこねていても、意外と人はコロッと眠れるんだな。
さらにコンタクトを付けたまま寝ていたため、目はカピカピ。出来るだけ早急に、コンタクトの保存液を入手しなくちゃ。
しかしここまでの旅の中で、一度も出会えなかったコンタクトの保存液。この不快な目覚めは、一体いつまで続くのだろう。
そんなことを考えていると、部屋の扉がコンコンなる。どうやらもちこがカードキーを忘れたらしく、開けてくれ!と叫んでいるようだ。
耳慣れた日本語にホッとして、中からカチャリと扉を開ける。すると芳しい戦利品を携えたもちこが、ニヤリと笑顔で立っている。
どうやら約束の時間を目一杯に活用し、大変有意義な買い物が出来たらしい。すると彼女は自分のご飯と一緒に、沢山のお土産をプレゼントしてくれる。
まずは久しぶりに出会う、ポカリスエット。まさに寝起きの今、私と私の胃腸が最も欲しかった飲み物だ。
いやぁ、なんて気が利くんだろう。雪山で遭難した人にウイスキーをくれる、セントバーナードみたいだ。
どうやらこの桂林には、大きなドラッグショップがあるらしい。それはwatsonと言われる、中国や台湾で人気のマツキヨ的な店舗だ。
ん?ドラッグストア?
…と言うことは?
ふと何かに気が付くと、もちこはさらなるドヤ顔に。そしてめっちゃ探したよねと言いながら、念願のアレを袋から出してくれた。
コンタクトの保存液。
あぁ、やっと会えた。一体どれほど待ち焦がれたか。これであの30秒は目を開けられない、不快なカピカピ地獄から遂に卒業できる。
イケるかな?と思って代用していた、塩素の香り漂う水道水。やはり中国の水は、貴方の代わりにはならなかったんだ。
そしてさらに、ココナッツと苺の冷たいアイス。どうやらドミトリーの隣に、人気のアイス屋さんを発見したらしい。
こちらも一口パクリと食べると、脳まで響く衝撃の甘さ。寝ぼけた体が一気に目覚め、糖分を補給した脳がフル回転で働き始める。
しかしその味は、まさに極上。働きアリも仕事そっちのけで食べ始める、素晴らしい美味しさだ。
さらには一個一元の、謎のお漬物。これは単純に、もちこの大好物である。
しかし固形物だから、今日の私は食べられないなぁ。そう申し訳なさそうに相方にそう告げると、これ私のだよ?と、ひょいと奪われる。
どうやらこのお漬物は、ただの自慢だったらしい。しかし一個一元のお漬物とは、中々に素晴らしいコスパじゃない。
・ポカリスエット 4.5元(約77円)
・コンタクト保存液 22元(約374円)
・イチゴ&ココナッツアイス 12元(約204円)
・おつまみザーサイ 1.2元(約20円)
・白米 5元(約85円)
さらにもちこは不思議なおかずも買ってきたらしく、白米と一緒にモリモリ食べ始める。あまり嗅いだことのない薫りを漂わせ、白米のCMが来そうな食べっぷりだ。
それを見て私もお腹が減ったため、何か食べたい!とダメ元で訴える。しかしもちこの食べているご飯は、私のにはまだ難易度が高すぎる。
そういえば先ほど、受付カウンターに何かあったような…。パスタとかハンバーガーとか、なんか色々書いてあったね。
晩御飯がてら、ちょっと覗いてみようかな。もしかしたら、食べられるものがあるかもしれないしね。
世界対応されたドミトリーの素敵な食事
受付に降りると、何やら香ばしい小麦の香りが漂ってくる。さらに二人の女性が、厨房らしき所からパンを運んでいる。
あぁ、思ったとおりだ。先輩バックパッカー達も、もりもり食べてるじゃない。
良く考えるとこの旅で、初めてパンと対面するかもしれない。実は朝はパン!と叫びたいほどのパン中毒者のため、50元でも買っちゃいたいんだ。
サンドイッチやパスタなど、もう久しぶりのご飯ばかり。中華三昧だった我々には、ここはまさに食の休息地だ。
早速綺麗な受付女性からメニューを貰い、ずらりと並ぶご飯をガン見する。すると価格は想像の範囲に収まり、余裕で手が出せる範囲。
確かに平遥古城の12元刀削麺と比較すると、少し高めの料金設定かも。それでもなおイタリアンという付加価値があるのだから、全く持って問題ない。
さらに夜はカクテルやショットなども用意され、どんちゃん騒ぎも可能なようだ。しかしお酒の欄をじっと眺めていると、どこ見てんねんともちこに怒られる。
加えて私の胃腸は、まださすがに固形物はイケそうにない。ここは温かくホッとする飲み物で、明日以降に備えよう。
それぞれが注文を済ませ、ふかふかのソファーに腰を下ろす。するとソファーの後ろには猫砂があり、どうやら主は大変ネコ好きのようだ。
さらに坐っている時も、足元をにゃんこが優雅に散歩している。毛並みの整った綺麗な白黒、きっとこの子の名前はオセロかな。
ただ残念ながらもちこは猫アレルギーのため、隣で完全にフリーズしている。じっと硬直し、猫が立ち去るまで目がテンだ。
なかなか立ち去らないオセロを眺めていると、受付女性が飲み物を運んでくれる。これぞ弱った胃腸に鉄板の、蜂蜜柚子ティーだ。
あぁ、なんて優しそうな香りなんだろう。飲み物に母性を感じるなんて、初めての経験だ。
教科書通りの美味しさに、ホッとする蜂蜜の甘み。なんて美味しさ。
胃腸が一気に温まり、今ならトンカツくらい食べられそう。カップの底の柚子も綺麗に平らげ、明日の朝も飲みたい!などと会話も弾みまくりである。
さらに硬直するもちこにも、スパゲティが無事到着。こちらは久しぶりのイタリアンの香りを、メロメロになる芳しさが最高だ。
パスタの麺もしっかりと茹でられ、中華独特の脂っぽさもない。加えてさっぱりとしたソースが、中華に染まった胃腸を誘惑してくる。
もちこは一口食べると、すんごい旨い!と大変ご満悦だ。確かに炭水化物の時点で旨いのだから、この状況ならまさにパーフェクトである。
私も一本お裾分けを頂戴し、20回噛みながらじっくりと味わう。おおこれぞ、レシピ通りのイタリアンスパだ。
確かに味は、恐らく日本の冷凍食品の中の下の上くらい。しかしそれでも久しぶりのイタリアンは、最高に美味しい。
・蜂蜜柚子ティー 15元(約255円)
・イタリアンスパゲティ 22元(約374円)
さらにロビーには食事中のバックパッカー達が沢山集い、皆一様に挨拶を交わす。パンを食べるもの、ビールを飲むもの、その楽しみ方は多種多様だ。
私もバックパッカー仲間のふりをして、彼らと軽い挨拶を交わす。ただ昨晩一泊8,000円のホテルに泊まったと知られたら、きっとチョップでも食らうだろう。
さらにこれまでの旅の話を交換すれば、我々が偽バックパッカーであることは即バレだ。きっと巨大リュックを背負った白人に、あっという間に取り囲まれちゃうに違いない。
そして全然関係ないお話で、大変恐縮だけれども…。
なぜ白人とは、あれほど標準装備でイケてるのだろう。私がGUCCIを着て、彼らがシマムラを着ても、その勝敗は明らかだ。
白人、良いなぁ…。隠しきれない憧れを抱きながら、柚子ティーをゴクリと飲み干した。
AMAZONでダウンロードしたアニメをもちこと見ていると、夜も次第に更けていく。お酒を飲み始める人々も増え、ビリヤード場は大変な活気だ。
周囲の笑い声はより多くなり、このドミトリーも夜更かしモードに変わるのだろう。 目の前で啤酒が飛ぶように売れ、国籍関係なしの交流が始まるのだ。
어디에서 왔는가?
アニメのセリフだと思っていると、ふと一人のパッカーに話しかけられる。それは恐らく韓国語だと思われる、全く未知の言語だった。
私が (;´・ω・)?という顔を見せると、次は中国語・英語と、様々な言語で話しかける。しかし私たちを韓国人だと思っている彼は、基本韓国語をぶっこんでくる。
誤解を解こうと日本人だよ!と告げると、おお~!と不思議なリアクションをくれる。日本…いいよね…!と、絶対今頑張って褒めるとこを探してくれた感じだ。
聞くところによると、どうやら彼も中国をグルグル周回しているらしい。そしてこの桂林で、気ままなバックパッキングを楽しまれているようだ。
そんな彼は、まさに驚異の社交性の持ち主。イヤホンをしている人、食事中のイギリス人、誰彼構わずガシガシ話をふる。
さらにオセロにまで何かを語り、もう国境も生物の壁も関係ない。恐らくこういう方こそが、バックパッカーとして最高の経験ができるのだ。
思うに友人が多いだろう彼は、明日は一体どこに行くのだろう。きっとそこでも、沢山の想い出ができるに違いない。
そんな事を考えながらアニメを見ていると、なんだか次第に眠くなる。そしてペルソナ第5話を見終えたところで、明日に備えて眠ることに。
値段の異なる、二種類の桂林川下りツアー
10月17日早朝。
念願の桂林川下り当日。前日は雨予報だった天候も、何とか踏ん張ってくれたようだ。
ちゃきちゃきと支度を済ませ、コンタクト保存液の有難みを噛み締める。そして受付に降り、昨晩申し込んだツアーパンフレットを眺める。
それは、なんとも悩ましい選択だった。その悩みに悩んだ川下りの種類は、全二種類だ。
まずは1人420元(約7,140円)の観光船コース。こちらは約4時間もの長時間、豪華な客船から桂林を眺める、大変バブリーなコースである。
ただその最大の弱点は、言わずともがなその金額。2人で840元も吹き飛ぶ、かなりの散財ツアーである。
そしてもう一方は1人約180元(約3.060円)の、小さな個人ボートコース。こちらは約二時間と半分の時間で、小さなボートに揺られて観光する。
しかしその懸念材料は、正体が分からないこと。いったいどれほど個人なのか、完全に予想がつかないのである。
写真を見る限りはある程度サイズはあるらしいが、どうやらその情報も確定ではない。そのためサイズによっては、快適な川下りができない恐れもある。
価格が倍以上離れている、この二つのコース。前者はこれからの旅を考えても、決してお安くない料金だ。
しかし約2時間にも及ぶ、小さなボートでの川下り。こちらは果たして、色々と大丈夫なのだろうか。
まず途中でトイレに行きたくなったら、一体どうするのだろう。今の私の胃腸具合を加味すると、川下り中に私自身が下る可能性も非常に高い。
もしそうなった場合、果たして個人ボートにお手洗いはあるのか。まさか川に受け止めていただくなど、そんな罰当たりな方法だったりしないのか。
さらに雨が降ったり川が氾濫したら、流されちゃったりしないだろうか。パンフレットを見る限り、おじさんが竹ボートにニコッと乗っているだけである。
ただ観光客船の場合、正直言って値段がやばい。さらにバックパッカー感は皆無であり、本当にこれでいいの?的な気持ちもある。
しかし4時間もの長時間、優雅な川下りができるのは最高に魅力的。さらにガイドやご飯も付いており、加えてドミトリーからの送迎まで完備されている。
もしここでケチり、悲しい記憶になっても最悪だ。さらによく考えれば高額といえど、新宿で一回飲む程度じゃないか。ちょっと背伸びしたお店だけど。
熟考した末、840元をお財布から出して受付女性に申し込む。そしてここまでが昨日寝る前の、ハイライトである。
そして今、私たちは迎えのお車を待っている。まだ朝の7時半、この旅では少し遅めのお目覚めだ。
さらに今夜は川下りの終着点で一泊する。つまりこのドミトリーに戻ってくるのは、明日のお昼になるのだ。
もちろん川下り後にココ(桂林中心地)に戻る選択肢もある。ただ川下りの終着点も、大変魅惑の街らしい。
それは陽朔と呼ばれる、屋台や優麗な山々に囲まれた素敵な街。できれば半日でも散策したい、人気観光スポットなのだ。
いわゆる本日の私たちは、お出かけだ。ちょっと別のドミトリーに泊まってくるね!といった感じの、川下りを兼ねたちょっとした外泊である。
そのためまずは受付でロッカーを借り、大きな荷物を全て入れる。さらに明日戻って来るね!と挨拶をして飛び出すと、受付女性もにっこり送り出してくれる。
ドミトリーの外に出ると、桂林の街はもう完全に目覚めていた。道路にはびゅんびゅんバイクが走り、歩道も車道もすごい活力だ。
こんな早朝から、みんな急いでどこに行くんだろ。もしかして早く仕事して早く終わらせよ!という、巧みなお仕事戦略なのかな。
さらに道端にいるだけでタクシーが近寄り、駅まで行かない?と勧誘される。まさかタクシー側から誘われるとは、何ともレアな経験だ。
街路樹の隣に座り、送迎の車を待ちわびる。しかし15分、いくら待ってもそれらしい車は現れない。
場所間違えたかな?と考えながら、周囲をぐるりと見渡す。すると道路の向かいで誰かを探す、白バンの運転手と目が合う。
慌てて駆け寄ると、お兄さんは何かのリストを見せてくれる。するとそこにはMOCHIKO(※実際は本名)と書かれた、未チェックの氏名欄が。
そしてこれ私達!と指差すと、お兄さんはガタガタのバンの扉を開けてくれる。ウキウキしながら飛び乗ると、そこには既に先客達がギッシリだ。
借金の出稼ぎ軍団みたいだね…。
車内の雰囲気を見て、ふと呟いてしまう。でも大丈夫、車内で日本語が分かるのは私達だけだ。(きっと)
そして前の席には中国人夫婦、彼らも川下りにワクワクしているのが伝わってくる。そして私たちが日本語で話していると、るーべん?(日本人?)と話しかけてくれる。
さらに日本大好きだよ!と中国語で言われ、なんだか気分もルンルンだ。自分の国を褒められると、まるで自分が褒められるような誇らしい気分だなぁ。
そして出発したバンはすぐに止まり、運転手がタバコを吸いに外に出る。すると彼はタバコに火をつけながら、他の参加者を待つからね!と教えてくれる。
そして近くには沢山のバンが集合し、同じように各運転手がタバコ休憩中。どうやら様々なドミトリーから、申込者がこの場所にピックアップされているようだ。
ふむふむ、ということは。ここにいる方々は、あの二択に迷った仲間だな?あの二択、すごい悩んだよね?というかあの小型ボート、結構ヤバそうだったよね?
車内で撮り貯めた写真を眺めていると、運転手さんが呼びに来てくれる。聞くとどうやら、ここから大きなバスで移動するらしい。
先ほど仲良くなった中国人夫婦も荷物を抱え、皆がバスに大移動。このバスでは約30人近くの団体が、まとめて移動するらしい。
さらにそこに女性ガイドさんも同伴し、英語も中国語も堪能でいらっしゃる。流石は一人420元、散財川くだりの特権だ。
あっという間にバスは一杯になり、あらゆる国籍の言語が飛び交う。英語・韓国語・中国語にフランス語、そして日本語は私達だけ。
さらにバスツアー恒例の、ガイドさんの挨拶が開始される。皆さん元気ですかー!と猪木のような掛け声で、バスは大きく動き始める。
きっと日本人なら少し恥ずかしがるだろう、この手の雰囲気。しかし彼らは何の躊躇もなく、お姉さんの挨拶に全力で呼応している。
ゲンキデスヨー!!
あぁこんな温まった空気なら、きっとガイドさんもやり易いだろう。斜に構えて誰も挨拶しなかったら、結構きついよね。
尊敬すべきは、この中国人たちの素直さだ。大人も子供も一様に、オハヨウゴザイマース!と連呼する。
さらに女性ガイドさんから、川下りシールを貼るよう指示される。これはツアー参加者だと一目で判別するための、いわば目印だ。
まずはこのシールが、女性ガイドさんから最前席の方に渡される。そしてそれが前から後ろへ、授業中のプリントのように手渡しで送られてくる。
まるで小学生の遠足のような、ほっこりと心温まる光景。しかしそのシールが前から送られてくると、思わず本音が飛び出してしまう。
ださい。
あまりそんなことは申し上げるべきではないが、かなりださい。グ〇コのおまけのようなデザインで、しかもめちゃくちゃに巨大だ。
出来るだけ目立つ所に貼ってね!
女性ガイドさんに見透かされ、思わず裾に隠して貼ったシールを肩に張り直す。確かにここで照れ隠しに目立たない場所に貼ると、困るのはガイドさんだ。
そして周囲の白人仲間達も、しぶしぶ目立つところに貼り直す。中にはi-Phoneのケースに貼る、シャイボーイも複数散見される。
しかし。
ここで違うのが、中国人だ。彼らはそういう点では、非常に良い意味で無頓着なんだ。
まず彼らがシールを貼る場所は、大半が帽子の正面。もしくは胸元にデデンと貼り、10m以上離れていても一目でわかる。
きっとその考え方にダサいという発想はなく、最も合理的な場所に貼っているだけ。確かにビジュアルを気にしなければ、帽子の正面にデデンと貼るのが最良だ。
あぁ、何と素直なのだろう。小学校の高学年ですら、10人に1人は手首に貼るだろうに。
にもかかわらず、ここではコワモテのオジサンも帽子にシールが輝く。さらにはメガネの上にシールを貼り、前が見えない!とギャグを披露する猛者までいらっしゃる。
私は心底反省し、シールを肩にデデンと貼る。これでやっと、私も正式にこのツアーの仲間だね。
人数に圧倒される川下り集合場所
バスはどんどん山々を超え、約2時間で集合場所へと到着。そしてそこには、既に沢山の観光客が溢れかえっている。
その数、およそ数百人。今回私たちは、彼らと一緒に川を流されちゃうのだ。
しかし日本人の声は聞こえず、どうやら私たちは日本代表。ここは礼儀正しく、ナイスなカメラワークを披露しよう。
そして出発地点の川沿いには観光船がずらりと並び、圧巻の光景だ。さらに客船は三階建てで、川沿いから見てもゴージャス極まりない。
流石は420元、そんじょそこらのツアーとは、一味違う。既に50元くらい元を取った気分で、大変にワクワクさんだ。
そして直ぐに乗船も開始、私たちもガイドさんの後を小鴨の様に付いていく。すると前から後ろから、喚声に似た喜びの声が上がる。
ふあー!ふぇー!!(何言ってるか分かんない)
どうやら中国のおばちゃん達のテンションが、爆上げの様子である。もう列が詰まりまくるほど、バシャバシャ撮影撮影を開始する。
すると前の白人カップルも、じゃ僕らも!とパシャパシャ撮影を始める。そして私たちも、負けじとパシャパシャする。
最高にハイテンションな川下りクイズ
船内では各自に席が用意され、私たちも指定された席に着席する。さらに席には暖かなお茶も用意されており、やはり待遇はSクラスだ。
そして皆が席に着くとすぐ、船長的な方が挨拶を始める。ただ挨拶は中国語のため、恐らく元気ですか!的な内容かな。
そして直ぐに船専属のガイドさんに交代し、中国語→英語で挨拶してくれる。さらにその挨拶が終了すると、この川下りの簡単な行程の発表だ。
これから私たちは、どんな場所を巡るのか。
そしてその場所には、どのような言い伝えがあるのか。
川沿いの美しい岸壁には、一体どんな物語が刻まれているのか。
そしてそれは、どんな動物に見えることで有名なのか。
約5分程度の簡単な英語で流れる挨拶に、ガイドさんの歴史を感じる。流石はプロの川下リスト、その説明は脳内再生余裕である。
さらに説明が進むと、何やら一つの写真が紹介された。どうやらこの川下りのメインスポットの写真らしい。
そして写真の説明が始まると、すぐに周囲の中国人が身を乗り出す。最初は中国語の説明のため意味は分からないが、雰囲気的にどうやらクイズの様だ。
コチラヲゴランクダサーイ!(多分こう言ってる)
この綺麗な、一枚の岸壁写真。ガイドさんいわく。この岩肌に7頭の馬が描写されているらしい。
そしてそれを皆さんで探しましょう!と。分かったら手を挙げてね!と、私たちの酸化を促してくれているのだ。
ふむふむ。どうやらこれはツアー者の参加型クイズだ。先ほどのバス車内といい、この川下りツアーは飽きさせない工夫がすごいな。
ただ、全然分からない。もはや7頭どころか、1頭も見つかるビジョンが浮かばない。
どこ…。お馬さんどこ…!?
いくら眺めても、一ミクロンも馬感がない。難しいとかのレベルではなく、答えがあるのかすら疑ってしまう。
もし私が子供だったら、きっと分からなくて泣いている。もう周囲の白人達に至っては、i-Phoneでグーグル先生に尋ねてるし。
ただ、彼らは違う。
素直さNO1の中国人達は、身を乗り出して写真を指差す。ここが馬だぁ!!とお爺ちゃんもお婆ちゃんも、超興奮だ。
さらにいやそこじゃないよ!と、隣のおじさんが反論する。中には僕はもう全部見つけちゃった!と、答えを出し渋る意地悪さんまで現れる。
そのテンションは、まさに圧巻。なぜこれほどに熱くなれるのか、心の底から驚いてしまう。
もしや正解者には、高額商品でも用意されているのか。そんな疑いをもってしまうほど、馬はここだ!議論が加速する。
さらにガイドさんから答えが告げられる度、周囲から歓声が沸き起こる。するとほら言った通りだろ!と、どや顔が乱れ飛ぶ。
あぁ、何て素直なんだ。この素直さがあれば、きっとどんな世界でも明るく生きられるに違いない。
変に斜に構えることもなく、思った感情を口に出す。この国の人々は、生まれながらに快活なのだ。
彼らに楽しさのお裾分けを貰い、ガイドさんの話に耳を傾ける。その約20分間の一体感は、最高に楽しい時間だった。
風光明媚な絶景に震える、桂林川下り
しばらくすると、朝のバンで知り合った夫婦方が、何やらそわそわし始める。どうやら窓の外に、広大な光景が現れ始めたようだ。
さらにガイドさんも説明を終え、上に行きましょう!とアナウンスをする。これはまさか、本格的な桂林川下のスタートか。
私たちもカメラを持ち、客船の屋上に猛進する。周囲のワクワク感も、言語の壁を貫く様に伝わってくる。
そして船の屋上に辿り着くと、突如広大な景色が現れる。それは想像を軽く跨ぐ、驚異の大自然だった。
美しい…。
何という幽遠な、そして静かな美しさなのだろう。そこにはi-phoneは到底表現できぬ、息を飲む光景が広がっている。
あぁ、これが世界遺産の桂林か。こんなにも広大で人の手が加わっていない場所が、世界に残っていたのか。
まるで巨大な岸壁に囲まれ、その隙間を神に許可され進む感覚。もし自分がいきなりここで消えても、微動だにしない自然の怖さが満ちている。
さらに客船の屋上は風も心地良く、川に流れる水の香りがふわりと広がる。あぁ、桂林川下りとは、これほど心地良いものだったのか。
川沿いの大地には尖った山々が連なり、一つ一つが巨大生物の様に重なり合う。それは異様な圧迫感で、目がおかしくなった様な感覚だ。
まるで高尾山の親玉が会議をしているような、圧倒的な山々の数。全観光客のシャッター音も鳴りやまず、屋上は興奮のるつぼに包まれる。
体に悪いジュースのような、川底の見えない濃厚な緑色。自然界に生まれた巨大な洞穴、さらには沢山の鍾乳洞も姿を現す。
ここは人の手が加えられておらず、何万年も変わらぬ光景なのだろう。もし許されるなら、全ての山を散策したい。
さらに川沿いには水牛やカピバラ(?)も姿を現し、皆が長閑に暮らしている。普段は動物園の主役たちも、ここでは随所で見ることができるのだ。
さらに船はどんどん進み、多くの観光客船とすれ違う。その度に波が緩やかに立ち、岸辺にささーと流れ込む。
まるで海に来ているような、爽快な心地良さ。これほど大自然と対峙できる時間は、生まれて今までなかったなぁ。
あぁ、洗われる…。この風にそよがれると、色々と忘れてしまいそうだ。
さらにひと際大きく連なる、二つの岩山。そしてその時、周囲の観光客たちがゴソゴソ財布を取り出し始める。
何してるんだろ?と眺めていると、もちこがガイドさんを通訳してくれる。どうやらこの場所は、桂林川下りでは有数の人気スポットらしい。
中国20元札。
この旅で何度もお世話になり、これからも頼りにしている20元札。そのデザインこそ、桂林のこの美しい場所がモチーフだ。
確かにこれは、完全一致だ。ということは昔この河を、手漕ぎの木船が緩やかに流れていたのか。
そう考えると当時の情景が、より一層濃厚に脳裏をよぎる。同時にこの大自然が世界遺産に選考された、その理由を深く理解する。
あぁ、涙が出そうだ。こんなに素晴らしい場所に、来られたことを感謝したい。
指がつりそうになるほどパシャパシャ撮影し、目でもその光景を焼き付ける。この夢中な時間を、ひたすら楽しみながら。
そんな没頭した時間を過ごしていると、ふと観光客からアナウンスが鳴り響く。どうやらご飯にしましょう!と、お昼ご飯のお誘いのようだ。
腹ペコの私たちも屋上を後にし、一階の席に舞い戻る。すると各座席には、合宿のお弁当のようなご飯がズラリと揃っている。
ずっしり。
思わず開けたくなる重厚さに、香り立つ中華の香り。パッケージには桂林が描かれ、この船オリジナルなのだろうか。
思ったより美味しそうな香りに、期待もすごい。もしかしてこれは、絶品系中華系なんじゃないか。
そして私の胃腸も、体感的に4割ほどには回復してる。ここはもちこの許可を貰って、チョイチョイ摘まませていただいちゃおう。
渋い。
何とも男気溢れる、メンズ系ご飯。品川クイーンズ伊勢丹で売られる、一食1000円のおしゃ弁(お洒落弁当)とは、どえらい違いだ。
そしてこのベジタブルミックス、絶対冷凍だ。それをお玉でガサッと入れる、パートのおばちゃんの笑顔が瞼に映る。
しかし一口食べると、これが意外とすごく美味しい。THE・お弁当といった、王道中華の美味しさだ。
事前に調べた情報では、マジで美味しくないとの評判だった。しかし約36時間ぶりの固形食だからか、もう堪らなく美味しく感じるのだ。
思わず一口だけの誓いを破り、モリモリお肉を噛みしめる。そしてちらりと相方もちこのお弁当を見ると、既に7割が食べ尽くされている。
さらに目の前のご夫婦もモリモリ召し上がっているため、やはり美味しいお弁当なんだ。特に中央の謎タレは、食欲を倍加させる成分が入ってるな。
しかしまだ胃腸が完全ではない私は、1/10だけ食べることに。まだ食べたい気持ちはあったが、グッとこらえて蓋をそっ閉じする。
しかし周囲からは、私の行動を不思議がる目線が。なぜこんなに美味しいのに食べないんだ?という、軽めの視線圧力だ。
いや、本当はすごく食べたいんだ…。でも胃腸の関係で、そっ閉じしたんだ…。
申し訳ねぇ…と心で謝り、お弁当を見えない場所にしまい込む。すると日本人には美味しくなかったのかな…と、少し寂しそうな表情をいただいてしまう。
ごめん…。マジごめん…。
そしてご飯を食べ終えると、急いで三階に駆け上がる。まるで給食終わりにグラウンドを取るように、良い場所を確保したかったから。
しかしそこには、既に沢山の観光客が。恐らくみんな、音速でお昼を食べ終えたのだろう。
さらに中には屋上でお弁当を食べる、頭脳派のお爺ちゃんも。さすがは人生の先輩、勉強になります。
出遅れたぁ!と少し焦るが、全方向どこを見ても美しい。何処を眺めても飽きることのない、相変わらずの絶景なのだ。
垂直に切り立つ崖に、僅かに見える野生の鹿。落ちたら絶対死ぬだろうこんな場所で、動物達が力強く生きているのか。
なぜそんな大変な道を歩くのか、単独インタビューしてみたい。ここ美味しい草あるんすよ♪なんて、答えてくれるかな。
個人ボートの衝撃の川下り風景
さらに桂林の景色を満喫していると、衝撃的な光景が飛び込む。思わずもちこを呼び、私たちは自分たちの選択を褒めちぎる。
個人ボートだ…。
ぎちぎちで詰められた、決められた席。そこに救命具を着て、お行儀よく座る観光客。
そしてその先頭には、手動で操舵する一人の船頭。全く優雅さを感じないその光景は、今でも脳裏にこびりついている。
パンパンパンパン…と乾いた騒音を響かせ、水辺を滑るように進む個人ボート。しかもその船は非常に不安定で、私たちの客船が作る波でバンバン揺れる。
……。
これぞ私たちが直前まで悩んでいた、もう一つの選択肢。見る限りトイレや食事もなく、楽しいガイドさんもお見受けできない。
きっと楽しいお馬さんどこでしょねクイズもなく、ひたすら2時間あそこで過ごすんだ。わずか半額にしただけで、これほどランクが急落するとは。
危なかった…。
少し高額だったが、この観光船にして本当に良かった。顔に付いた水しぶきをぬぐう個人ボートの船頭さんを眺めながら、ほっと胸をなでおろす。
さらにカヌーや手漕ぎボートなど、様々な川下り手段も目に入る。まさかその他の選択肢が、こんなガチ勢だとは思わなかった。
もちろん個人ボートにも、個人ゆえの魅力と良さはあるのだろう。しかしそれでもその落差には、驚きを禁じ得ない。
もしこれがご年配の方々なら、あの二時間は結構キツい。さらにトイレが近い方には、地獄の耐久レースになっちゃうよ。
皆様が桂林の川下りに向かわれる、この情報が参考になれば幸いだ。ただもし次回ここを訪れるなら、私は迷わず個人ボートを利用するだろう。面白そうだから。
旅の終わりと楽しさに溢れる陽朔
驚きを感じていると、あっという間に川下りも終盤に。30年分のマイナスイオンを全身で吸収し、残りの旅程を名残惜しむ。
山々も次第に少なくなり、茶色い大地が広がり始める。そして同時に本当に終わってしまうのかと、悲しさも湧き上がる。
後続の船も続々と集まり、船の速度が低下する。きっとこの先に、この旅の終わりが待ち受けているんだ。
寂しい。ミスチルの桜井さんなら、この気持ちにどんな歌詞をつけてくださるだろう。
船内にもアナウンスが流れ、終了の雰囲気が周囲に漂う。そして皆も大変名残惜しそうに、忘れ物の有無を確認する。
私たちを乗せた観光船は小さな波止場に向かい、そこには沢山の船が集う。どうやらここで、他の観光客とお別れだ。
静かに停車する観光船から降り、4時間ぶりの大地に着地。あぁ、最高に楽しかった。
そして多数の観光船が集う波止場には、様々な露店やお土産屋が。どうやらこの街も、中国の観光スポットの一つの様だ。
中国独特の眩しいほどの言葉の喧騒。周囲に漂う、記憶にない魅力的な香り。
あぁ、この陽朔も非常に楽しそうだ。至福の川下り終了で凹んでいたが、まだ時刻も15時だ。
胃腸の調子も回復し、まだまだガッツリ暴れられる。一体この国は、どれほど私たちを楽しませてくれるのだろう。
旅の支度を再度整え、人込みに突撃する。全く欲しくない鴨のキーホルダーを、買わされそうになりながら。
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