中国旅行記9 想像以上に美しい陽朔のジブリ的ご飯
楽しいイベントが押し寄せる、中国横断。新たに到着した陽朔は、想像以上に美しい街だった。
胃腸もほぼ回復した今、この街全てを食べ尽くしたい。そんな意気込みで船から降りると、そこにはTHE・観光地が広がっていた。
- 心奪われる陽朔土産と高レビュードミトリー
- 口コミ通りの素晴らしい海派客桟(HIGH PARK)
- 中心地までの送迎バスと圧巻の山々
- カラフルな街の色合いと不安な観光地プライス
- 安くて旨いB級ご飯とジブリ飯的フードコート
心奪われる陽朔土産と高レビュードミトリー
下船した観光客に話しかける、沢山の現地商人たち。観光客の数にも負けない彼らは、皆がご自慢の商品をお勧めしてくる。
その距離は非常に近く、まるで痴漢。近い近いwと思わず笑ってしまう、無法な接近戦だ。
ただそんな商人達の呼びかけの内容が気になり、もちこに訳してもらう。すると彼らは、どうも嬉しいことを言ってくれているらしい。
カッコいいね!お兄さん!これなんて、絶対似合うと思うよ!
…なんだなんだ。そんな褒めても、1個しか買わないぞ。
その訳してもらった内容にニヤニヤしていると、もちこにサラッと釘を刺される。さっき、あっちのおじさんにも言ってたけどねと。
何という狡猾な呼び止め方。危うく全く欲しくない鴨のキーホルダーを買うところだ。
新宿舞伎町のような勧誘に挟まれながら、大きな通りを進んでいく。どうやら船着場から陽朔の町までは、一本のお土産ロードで繋がっているみたいだ。
鳥居の様な中国様式の門をくぐり、下ってきた川を眼下に望む。どうやらこの陽朔は、この美しい川沿いを囲む町らしい。
京都の紅葉をイメージさせるような、何度も繰り返される鳥居の道。これだけで一つの観光名所になりそうな、目を奪われる光景。
さらに空気も涼しく湿気も少ない、何とも観光に適した立地条件。どうやら本日も、足が棒になるまでとことん遊べそうだ。
そしてふと、竹の刺さった機械を発見する。どこかで見たことあるな?と感じていると、もちこがお店の方に声を掛ける。
すると豪快なメキメキ音と共に、竹が機械に飲み込まれていく。さらに草むらでこけたような香りが周囲に広がり、透明な汁が溢れ出る。
サトウキビジュース。
これはジュース好きのもちこが好んで飲む、純度100%の天然物。目の前で作られたのだから、いわゆる生仕立てというやつだ。
まるで薄いスイカジュースの様な、さっぱりとした甘さと喉ごし。昔バリで飲んだことを思い出しながら、乾いた体が潤される。
あぁ、さっぱりして美味しい。胃腸が弱っている時は、水分も不足しがちだよね。
良く考えたら桂林の大自然に興奮しっぱなしで、何も飲んでない。もちこが他の屋台に気を取られてるうちに、もっと飲んどこ。(ゴクゴク)
さらに見慣れぬお土産店が沢山並び、足を何度も止める。中でもこの地方の芸術品は、多数の観光客が覗き込む。
桂林の水墨画。
写真でも肉眼でも絵の具でもない、中国感溢れる独特の画風。たった今川下りを終えた観光客にとって、これはずるい。
まるでディズニーランドの出口で、ミッキーが写真撮影で待ち構えているようなもの。旅の記念に一枚!と話しかける叔父さんも、なかなかの商売人だ。
さらに描き手の叔父さんは、この絵の素晴らしさを力説する。どうやら世界で初めて指で描いた!と、その独自性をアピールしているらしい。
確かにあの桂林の絶景を、墨と指で表現するとは絶技巧である。証拠として叔父さんの右手の側面は、漢字ドリルを終えた小学生の様に真っ黒だ。
しかし同時に、本当に世界初なのかという疑惑も湧く。確か小学校の頃、図工の授業で後藤君も指で描いていたけど…。
そんな野暮なことを考えつつ、思わず記念に一枚欲しくなる。さらにもちこも欲しい!と一声、せっかくなので一枚いただいておこう。
お値段もさほど高くなく、手描きなら尚更お安い。手書き叔父さんもシェイシェイ!と、大変ご満悦だ。
プラスチックの額縁に入れて貰い、ニヤニヤする。また一つ旅の思い出が増えたけど、リュックに入れられるお土産スペースも少なくなってきたなぁ。
・サトウキビジュース 5元(約85円)
・指で描かれた水墨画 60元(約1.020円)
さらに目移りを誘発する、道端の美術・技術品。やはり中国の方々の色彩センスは、すごく煌びやかだ。
もちこにお婆ちゃんへのお土産に最高じゃない?と言いそうになり、ふと口を塞ぐ。じゃあ買ったら持ってね!と言われる可能性が、とても高かったから。
しかしこれほど美しいなら、いつか日本に持ち帰りたい。また年を重ねてから再訪し、スカスカのリュックに詰めて帰ろう。
口コミ通りの素晴らしい海派客桟(HIGH PARK)
お土産屋さんを一通り眺めたら、次はドミトリーだ。まずは本日のお宿を探し、そこから本格的な散策を始めようかな。
するとここで、もちこがニヤリと笑う。本日の宿もええとこやで!と、大変自信たっぷりなご様子だ。
どうやら今回の宿泊地に関しては、かなりネットで散策したらしい。そしてその中でも、口コミぶっちぎりのお宿を予約できたとのこと。
なんと!口コミぶっちぎりとな。これはウォシュレット対応!並にテンションの上がる、最高のパワーワードじゃない。
そして口コミで特に目立ったのが、女性のオーナー様のお人柄らしい。そして沢山の旅人たちが、彼女への感謝の意を口コミに残しているらしいのだ。
全宿泊先で優しく対応してもらっている、今回の中国旅行。たださらにそれを上回る、猛烈にお優しいオーナー様なのか。
大丈夫かな…。ハードル、ちょっと上げすぎちゃってないかな…。
ネットを駆使し、ドミトリーの方向に歩き出す。すると川下りの船着場から、わずか数分の近場にその場所はあるとのこと。
さらに川下りで眺めた山々も近づき、何だかずっしり重い圧迫感だ。ワンダと巨像をプレイした時みたいで、なんかにじり寄る怖さがあるな。
そして歩くこと、約5分。私たちは本日お世話になる、海派客桟(HIGH PARK)に到着する。
門構えは中国と言うより、少し西洋風なお洒落な佇まい。雰囲気はどことなくイタリアンな、とても綺麗なドミトリーだ。
さらに周囲の山々も景観豊か、栄えた街もすぐ近く。加えて立地も最高とくれば、これは既にベストチョイスであることは間違いない。
そしてさらに奥に入ると、一人の女性が笑顔で迎えてくれる。どうやら彼女が、口コミで絶賛されていた女性オーナー様だ。
私たちはパスポートを渡し、部屋の鍵を預かる。するとその手続きは迅速、さらに旅の疲れをねぎらう言葉のチョイスも巧みである。
さらにふと思い出し、ちょっと一つ尋ねてみる。それはi-Phoneの充電ケーブルについてだった。
実は朝のバス車内でケーブルを破壊してしまい、それ以来全く充電できていない。さらに残りの残量も〖I 〗くらいになり、大変焦っていた所だった。
桂林の川下りでも写真を撮る度に電源を落とし、極力電池を使わずに過ごしていた。ただ日本に帰国してから、その方法が逆効果だと教えてもらったけど。
しかし中国の方々はあまりi-phoneを使わず、誰に尋ねてもお持ちでない。つまり私たちは、かれこれ約5時間ほどケーブル難民になっていたのだ。
この種類のケーブルって、どこで買えますか?
そう尋ねると、彼女はにっこりと笑う。そして1本のケーブルを、引き出しから取り出してくれる。
さらに使わないからあげるよ!と、いきなり贈呈してくれる。彼女の手元には最新のi-phoneがちらりと輝き、どうやら彼女はまさかのi-phoneユーザーだったのだ。
え!?くれるの!?レンタルじゃなくて!?
そう確認すると、いいよあげるよ!と笑顔を見せてくれる。それはいきなり口コミを体現するような、抜群の優しさだ。
さらには街までの行き方、明日の帰り方、バスのブッキング。様々なアドバイスと共に、各種の手続きも真摯に対応してくれる。
明日の帰りのバスも予約でき、やるべきことがすべて終わってしまった。これが口コミ最強☆陽朔女性オーナーたる所以なのか。
優しい…。優しいを超えて、やざずい。
最高に気分の良い対応に迎えられ、疲れも一気に吹っ飛んだ。確かにこんなオーナー様なら、予約満タンなのも納得だ。
・海派客桟(HIGH PARK) 一泊二人160元(約2.720円)
中心地までの送迎バスと圧巻の山々
じゃあこれから深夜まで、この陽朔を散策しよう。胃腸の不良もほぼ回復したし、もはや悩み事など一つもないんだ。
私たちは部屋の場所を伺い、荷物を抱えて移動する。その部屋は六階建ての二階にある、非常に日当たりの良い場所だ。
こざっぱりした部屋に差し込む、緑の森の光。ふわりとした雰囲気で心地良く、朝の光はきっと眩しいだろう。
ベットのふかふか感を確かめ、今夜の寝心地も確認する。なかなかな柔軟性で、今宵のナイスドリームも間違いなしだ。
さらに部屋に置かれた珈琲を入れ、少しベランダでほっこりする。同時にオーナーに貰った充電ケーブルを使って、空腹だったi-phoneも満腹に。
あぁ、珈琲久しぶりだな。こんな心地良いベランダで飲めるなんて、思ってもいなかった。
さらに繁った緑を眺めていると、突如外からギャー!と声が上がる。何事か!とベランダから乗り出すと、眼下には見慣れた光景が。
乗車戦争だ。
送迎バスを取り囲む、人々の群れ。ベランダの下には街への送迎バスが来ており、多数の観光客が押し寄せていたのだ。
そしてそれに群がる、多数の中国人観光客。四方八方から小さなバスに乗車しようとお押し寄せ、現場が大騒ぎになっている。
あまり並ぶ習慣のないこの国では、バスの乗車はまさに修羅場。我先に!とバスに乗り込み、ひるんでいてはまず乗れない。
私も台湾の九份に訪れた際、この乗車戦争に巻き込まれたことがある。そこではマジでグーなんじゃないかと思うほど、背中を目いっぱい叩かれた記憶がある。
この国で遠慮してたら、何も乗れないよ。
珈琲を飲みながら、もちこが呟く。なんか渋い。
そして眼下の乗車戦争に触発され、私たちも街に繰り出すことに。どうやらあのバスに乗れば、中心街までツツーと連れて行ってくれそうだ。
そう考えて、ドミトリーの目の前に貼られた街の地図を眺める。ただかなりざっくりとした描き方のため、全然ピンと来ない。
現在地も良く分からず、とりあえず市内行きのバスに乗ることに。まずはさっき通ったオレンジの売店で、バスチケットを先に買っちゃおう。
そしてバスチケットの価格は、一人15元(約255円)。これは桂林で乗った市内タクシーの、約2倍だ。
高い。もしかして、既に観光地プライスが発動しているのかな。
もしここが観光地プライスなら、この街では多大な出費を覚悟しなければならない。さらに今晩は久しぶりにお酒も飲むため、巨大な損失は避けられないだろう。
ただご飯に関しては、B級グルメが沢山あるに違いない。観光地=B級グルメ=安くて美味しいという鉄の掟が、きっとこの街にもあるよね。
そんなことを考えつつ、二名分のバスチケットを購入する。30元を差し出すと、受付女性は無言でチケットを手渡してくれた。
・中心街の送迎バス2人分 30元(約510円)
そしてチケットを握りしめ、ドミトリーの下に来たバスに乗り込む。すると一番前の席だったため、出発まで運転手の女性に色々尋ねてみた。
中心街まで何分?
そう尋ねると彼女は、3分くらいじゃない?と答えてくれる。全然歩ける距離なのに!と、すごく快活に笑いながら。
え?3分ですって…?
そんなに近いの!?それなら先ほどのチケット売り場の女性は、何故教えてくれなかったのだ。
どうやら他の観光客は、さらに先の街まで向かうらしい。つまり市内までの短距離でバスを使っているのは、私達くらい。
バスの女性運転手も、ちょっと苦笑い。教えてくれてもいいのにね?と、我々の不運を嘆いてくれる。
たった3分の距離に、30元も…。
もちこを横目で見ると、チケットを見ながら猛烈に凹んでいる。三浪して大学落ちたくらい凹んでいる。
するとめちゃめちゃに凹むもちこを見て、運転手さんがアドバイスをくれる。じゃあ良い感じの所でおろしてあげるよ!と、機転を利かせてくれたのだ。
聞くところによると、どうやらこの街には沢山の観光スポットがあるらしい。そして見どころは中心街だけでなく、川下りで見た優美な山々も必見だ言う。
そのため運転手さんがオススメする場所で、いい感じにおろしてくれるとのこと。まるで店長お勧めランチを提案された気分で、何だが期待が膨らんでくる。
じゃあそれでお願い!と告げると、バスも丁度動き始める。沢山の観光客を乗せ、いざ運転手さんの腕の見せ所だ。
ブーン。ガタガタ…。
バスは土の道路を突き進み、街並みもバンバン雰囲気を変える。あまり見たこともない看板も目に入り、その度にもちこに訳してもらう。
あれなに?ねぇ、あれは?
あまりにしつこく質問していると、ちょっと嫌がられる。小学校ですっ!と強めに言われ、今度は私が凹む。
さらに時折食べ物の香りも漂い、ここでおろしてくれないかなぁと考えてしまう。その移り変わる光景は、まるで中国のスライドショーみたいだ。
次第に街も栄え始め、都心部のような賑やかさに。さらに大きなショッピングモールも登場し、この陽朔も大都会なのだと知らされる。
私の実家より、全然都会だ。やはり世界遺産に囲まれているから、人気も高いんだなぁ。
この街の人々は、何て素晴らしい景観に包まれているのだろ。もしここで生を受けたら、富士山をそれほど大きく感じなかっただろうなぁ。
そんなことを考えていると、運転手さんがくるりと振り返る。そしてここから街を下ると凄く良いよ!と、降りる場所を教えてくれた。
私たちは彼女にお礼を伝え、荷物を背負ってバスを降りる。すると街には涼しい山風が流れ、ひんやりと非常に心地良かった。
カラフルな街の色合いと不安な観光地プライス
陽朔中心地。
バスから降りて歩道橋から眺めると、絶好の写真スポットが待ち受ける。それは自然を中心とした、自然が中心の街だった。
街の中に山があるのではなく、山の中に街を作ってしまおう。そんな発想から生まれたのだろう、あまり見ない構造の街だ。
斜めにカーブした建物も、きっと山々を避けて作られたのだろう。完成した時、お餅投げとかしたのかな。
煌びやかな赤色に、歴史と暖かさを感じる石畳。さらにRPGの街の様な、色彩豊かなカラフルな街並みが続く。
なぜこんなに美しい街を、想像して作れるんだろう。こういう街並みこそ、まさに中国に期待していた街並みだ。
きっと映画の撮影地になったのも、一回や二回じゃないよね。これほど綺麗な街だったら、イケメン・美女も映えそうだもの。
さすが大都市、みんな大好きKFCやスタバも完全配備だ。もはや日本と同じ利便性に、良い意味で旅行感も薄れてくる。
確かに旅も中盤、こういったご飯にも触手が動いてしまうなぁ。ただしここでKFCを食べると、きっと後悔するよね。
なぜならこの街は、屋台が魅惑的だから。胃袋一つでは立ち向かえぬほどの、屋台が沢山ある場所らしいのだ。
謎のオブジェ。
街を歩くと飛び込んでくる、用途の全く分からないこの物体。これほど真っ赤に興奮した指先の先には、一体何があるんだろう。
もちろん、ここは同じポーズで記念撮影しとこ。こんな恰好のSNSスポットを目の前にして、素通りなど愚の骨頂だ。
すると四人の中国人おばちゃん達が、後ろで何やら叫ぶ。もちこいわく、どうやら撮りたいからどけて!とアピールしているらしい。
あぁ、ごめんごめん。ちょっとお邪魔だったね。
確かにこんなベストスポットだ、皆も撮影したいに違いない。私が申し訳なさそうに場所を開けると、おばちゃん達も同じポーズで写真撮影する。
しかしその姿はオブジェと全然違い、まるでラオウの昇天。指ささなきゃだめじゃん!ってつっこみたいけど、やめとこ。
和やかな光景を眺めながら、街をもっともっと散策する。するとさすがは世界的観光地、様々な食事処が飛び込んでくる。
磯丸水産の様な、啤酒魚と書かれた巨大飲み屋。まだ時間が早いためか人は少ないが、夜には大混雑になるだろう雰囲気だ。
しかし看板に掲げられた啤酒魚(ビール魚)とは、一体何だろう。このお店だけでなくて、さっきも別のお店でみたような…。
どうやらもちこの事前調査によると、これは桂林の名物料理とのこと。一度揚げた川魚をビールで煮込み、川魚独特の臭みを消した料理らしい。
さらには多数の香辛料でしっかり煮込み、辛めに攻め込む。それはピリ辛と旨みを堪能できる、まさに中国らしい独特な料理らしいのだ。
しかし情報の提供者であるもちこの表情は、あまり芳しくない。川魚をビールで煮てるんだ…と呟く顔は、ピーマンを凝視する幼稚園児そっくり。
何故なら彼女は、魚が苦手だから。いや正しくは、骨が沢山あるお魚を綺麗に食べるのが苦手なのだ。
昔もちこの祖父が魚の骨を綺麗に取り、幼少期のもちこに食べさせたらしい。そしてお骨ないからね!と言う祖父を信じ、パクリと一口でいったらしい。
しかしその川魚には大きな骨が残っており、喉にぷっすり刺さったとのこと。そしてそのトラウマが、現在の川魚苦手ガールを生み出した。
個人的には食べてみたかったが、どうやら啤酒魚がメインになりそうだ。さらに辛めの味つけのため、病み上がりの胃腸には少し早いかも。
啤酒魚はまたの機会にして、本日は別のご飯をモリモリ食べようかな。そう心に決めて、再度綺麗な街並みを散策する。
モグモグ食べるでぇ!
そんな意気込みを言葉に出し、広い街並みをもう散策する。どうやらこの陽朔には小さな川が流れており、それを囲うように街が生まれたようだ。
そしてその川沿いは、多数のご飯屋さんが乱立している。さらにそのレストラン達が、大変綺麗でグッとくる。
街中には緑も綺麗に融合され、連想するのはラピュタの庭園。好きな音楽を聴きながら、こんな街並みを毎日散歩する老後も最高だなぁ。
水のせせらぐ音を聴きながら、ゆっくりと川沿いを探索する。しかし意識の8割は、美味しい食の捜索で大忙しだ。
するとふと、ソフトクリーム屋を発見する。これ舐めながら散策したいなぁ!と、小走りで駆け寄る。
しかしその瞬間、掲げられたお値段に違和感を覚える。何故ならその価格は、今までの都市とは少し違ったから。
1個17元。(約289円)
もちろんこれは、日本では高い部類ではない。ただビール6元(約117円)の世界で生きてきた今、その価格に( ˘•ω•˘ )?と感じてしまう。
何故ならこれは、観光地プライスである証明だから。つまりこのアイスだけでなく、この街全てが高額である可能性が浮上したのだ。
私たちは慌てて、近くのご飯屋を確認する。お酒で祝杯する予定の本日、私たちは一体どれくらいの被害を覚悟しておけばいいのだ。
じっと値段を確認する、相方もちこ。その背中越しからは、あかん…と不慣れな関西弁が聴こえてくる。
どうしたどうした。お父さんに話してごらん…。
一品88元。
がま口を静かに刈り取る、完全なる観光地プライス。まさかの二桁後半価格に、一瞬背筋が凍る。
さすがは世界遺産・桂林市にある、大都市陽朔。12元の刀削麺を頬張った、世界遺産・平遥古城とはえらい違いだ。
高い。修学旅行生なら泣いてるくらい、高い。
この街は今晩、私たちの財布を殺しにかかってくる。きっと1000元近いお札たちが、この街に走り出していくだろう。
そうと分かれば、買い食いは節約一択。もし今から散財すれば、きっとこの先の旅は、カップラーメンが主役になるだろう。
そして夜にはお財布を大開放し、がま口を徹底的に痛めつけよう。このメリハリこそが、この陽朔の攻略法に違いない。
安くて旨いB級ご飯とジブリ飯的フードコート
そう意気込んだ矢先。
ふと嗅ぎ慣れた香りが、通りに漂っていた。それは揚げ物と甘辛いソース、そして独特の臭みに包まれた、あの香りである。
これはもしや…とお店に走り寄ると、素晴らしい光景が目の前に広がる。既にもちこは店内を凝視し、ポケットからお札を取り出している。
存在感の凄まじい、台湾で嗅いだあの香り。屋台で多くの人の足を止める、あのお豆腐料理。
私たちのオーダーと同時に、大きなタッパに漬けられたお豆腐が取り出される。そしてジュワワ…と油で揚る音が響き、期待感が高まっていく。
独特の甘辛ソースがかけられ、沢山の薬味が投入される。もう子供のようにその工程を凝視し、店員さんもやり辛そうだ。
早く早く!とせかして良いなら、きっと迷わずそうしただろう。そして遂に、観光客の心を揺さぶる、あの料理が完成する。
大好き臭豆腐。
狂おしいほどに大好物な、好き嫌いがハッキリ分かれるこの料理。まさかこの観光地で、この最強料理に出会えるとは。
当然臭いことで有名な、この料理。しかし実は、その調理工程で臭さに大きな差が生まれる。
正直個人的には、臭ければ臭い方が美味しいと思う。しかし初めて食べられる方は、以下の順序でお試しいただくと良いかもしれない。
【激くさ】 煮込み > 揚げ&煮込み > 揚げ&ソース 【ちょい臭】
まず最も臭いのが、煮込んだだけの臭豆腐タイプ。これは夜市で周囲の観光客を悩ませる、地獄の香りを演出する。
時にその臭さは人外であり、もはや口に入れられないケース少なくない。なぜこれほど臭くするのか、その店のポリシーを確認したくなるレベルである。
これは正直、初めての臭豆腐としてはお勧めしない。もし店頭でおじさんが煮込んでいるだけならば、高確率で玄人向けだ。
そのため初めての方には、遥かに食べやすい揚げ&ソースタイプをお勧めしたい。これは臭豆腐の美味しさを保ちつつ、揚げで香りを緩和してくれる調理法だ。
私も最初は揚げ&ソースタイプにチャレンジし、この臭豆腐の道で開眼した。ただもちこレベルになると、煮込みだけの玄人臭豆腐も大好物である。
しかしこの旅の前半でもちこが食べた、とある煮込み臭豆腐はヤバかったらしい。まさに馬〇ンと呼ぶにふさわしい、超絶嗅覚破壊スメルだったとのご報告である。
しかしこのお店は、初心者に優しい揚げ&ソースタイプ。正直少し香りが物足りないが、それでも久しぶりの香りは格別だ。
カリッと揚げられた表面に、香る甘辛ソース。発酵物独特のコクと旨みが溢れだし、もう最高に美味しい。
付け合わせの漬物をポリポリ食べつつ、臭豆腐を再度パクリ。この黄金ループを体験すると、もはやbである。
完全固形物を久しぶりにモグモグ食べ、もはや調子も最高潮。あっという間に平らげて、店長にお礼を告げる。
しかし空腹感も少ししか埋まらず、更なる食欲スイッチが押し倒される。旨かったなぁ~♪と呟くもちこの視線も、既に次のお店に釘づけだ。
そして即座に喉が渇いた!と、ドリンクのお店を物色する。完全に食欲スイッチが入っったようで、まるで出せば出すほど食べる子犬である。
そして手に入れる、こちらのココナッツミルク。店頭にはヤシの実が置かれており、そのフレッシュ感が売りの様だ。
ただ一口ごくりと飲むと、(´・ω・`)?と不思議な表情を浮かべる。どうやら全くココナッツ感はなく、徹底して薄められているらしい。
私も一口貰うと、確かにココナッツ感はゼロ。どうやら店頭のココナッツはダミーで、ちょいちょい薄めちゃってるのかもしれない。
しかしこれほど薄いココナッツミルクも、逆に珍しい。目をつぶって飲めば、100人が100人超薄められたカルピスだと言うだろう。
そんなトラップも楽しくなり、さらなる間食を継続する。まだ本格的な晩御飯には少し早く、食欲を加速させるおやつが必要なんだ。
すると何やら、胃袋が引っ張られる香り。愛犬を連れていたら動かなくなるような、凄まじい香りの引力だ。
それは小学校の体育館くらいの、巨大フードコート。観光客が足を止めるその先には、まるでアニメの様なご飯が並んでいる。
まさにジブリ飯。
その場で手を伸ばしてしまいそうな、圧倒的なご馳走達。お正月の実家ですら、これほど豪奢な山盛りにはならないだろう。
近くの席には多数の観光客がおり、注文したご馳走を笑顔で頬張る。中には千と千尋のパパママを再現するような、圧巻の食事をされてる方もいらっしゃる。
あぁ、これは食のパラダイスだ。食べたいものがない!なんて、絶対に言えない環境じゃないか。
魅惑的な串焼きを眺めていると、店員に一本どう?と誘われる。そんな積極的に誘われたら、思わずコロリと落ちてしまうのに。
ただその串を選んでいると、もちこの姿が見当たらない。もしかして私を待ちくたびれ、近くのお店でも散策しているのかな。
いや、ガン見である。
大好物の羊串に焦点を合わせ、購入意欲もビンビン。どうやら私と同じく、このお店で一串いこうぜ!といった心境なのだろう。
早速羊串をオーダーし、たっぷりのクミンもお願いする。するとアルバイト君は慣れない手つきで、三本の串を炭であぶり始める。
ジュワワワワ…。パッパ…。
三本十元の串が直火に並び、じゅわりじゅわりと焼ける香り。台湾の夜市を思い出す芳しさに、思わず笑顔もこぼれだす。
そしてこんな時、ポケットの小銭を数える瞬間もまた最高。あといくら使えるのか、旅では毎日が修学旅行気分だ。
不意に100元札が見つかった時など、もはや絶頂。別に増えたわけではないのだが、自分のズボンが魔法のポッケに思えてしまう。
そしてもちこと残高を照らし合わせていると、アルバイト君に羊串を渡される。たっぷりクミンが振りかけられた、大降りで芳しい竹串だ。
うまい。(感謝)
思わず写真のピントがずれる、肉汁の一口。柔らかな羊が口全体に広がり、これだよね…と無意識に呟く。
羊独特の臭みを包み込む、力ず良いクミンの香り。ただ正直クミンの振りは甘く、アルバイト君の今後に期待しよう。
相方と1本:2本で分け合い、モリモリ柔らか肉を楽しむ。あぁ、この街にB級グルメがあって本当に良かった。
・臭豆腐 10元(約170円)
・ココナッツミルク 10元(約170円)
・羊串三本 10元(約170円)
あぁ、すごく美味しかった。しかし陽朔の夜は、まだまだこれから。
どうやら予報では、このパラパラ雨も綺麗に上がるらしい。桂林の山々に囲まれた、世界遺産の夜の始まりだ。
真っ暗な闇夜に照らし出される、巨大な山々。世界的な飲み屋街に変貌する、この街の完全な夕べが楽しみだ。
さぁお次は、ガッツリ飲み。リュックに入れた、ウコンのチカラをそっと確認しよう。
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